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貴石奇譚  作者: 貴様 二太郎
番外編7
179/200

海の底の独り言 ★

※あとがきにイラストがあります。挿絵が苦手な方は挿絵OFFで対応お願いします。

 青い青い海の底。珊瑚や深海魚が華やかに彩る、ここは人魚たちが暮らす国マルガリートゥム……の、はずれの海藻の森。

 ワタシが生まれて、捨てられた場所。


「こんばんは、コル」


 そして、あなた(エスコルチア)が眠る場所。

 とはいっても、この宝石珊瑚(非造礁性サンゴ)たちに囲まれた冷たい岩の下で眠っているのは、あなたの名残(人魚石)だけどね。


「ねえ、ちょっと聞いてくれる? 今日はね、すっごく大変だったの。あなたのお姉さんのガルデニアのひ孫――あ、ウェリタスって言うんだけど、この子がまたよりにもよってね……」


 返事なんて返ってこない。そんなのわかってる。だって、あなたはもうここにはいないから。


「もー! なんでみんな、あんなにまっすぐ突っ走っちゃうのかしら。コルも、リリィも、ウェリタスちゃんも。血筋ってやつなの?」


 今はもう、抜け殻だものね。

 去年の秋、あなたは息子(レフィ)の半身を守った後、輪廻の輪へと還ったんですってね。パエオーニアちゃんから聞いたわ。


「ワタシにも。あのとき、あなた達みたいな突進力が少しでもあったのなら……もしかしたら……」


 コルたちのこと、助けられていたかもしれない。

 秋津洲(異国)で見つけたあの暗い部屋の中の翡翠も、もしかしたら……


「ワタシに、もう少し踏み込む勇気があったなら」


 浮かんでは弾ける、泡沫(うたかた)の過去のかけら。もうどうすることもできない、選べなかった「もしかしたら」。


「だから。次はもう、ためらわない」


 この手で掬ったのなら、今度こそ零さない。大切なものから、最後まで手を離さない。


「見ていてね、コル」


 予感がするの。近いうちに何かが起きるって。止まっていた時間が動き出す、そんな予感が。


「だから、今度こそワタシは……」

挿絵(By みてみん)


イラスト:雨音AKIRAさま

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― 新着の感想 ―
[良い点] パーウォー様~(涙)。 [一言] イラストも素敵です!
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