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「人とは決められた死に向き合えるのだろうか?」
ある時人ならざるものは、唐突に疑問に思ったのだという。
「「「さあね?」」」
綺麗にハモッた3つの声。
「ねえ、調べてみようよ!」
3人のこども達は、あからさまに嫌な表情を浮かべていた。
「貴方が我々をお創りになられたのですから、そんなことは・・・」
「調べる意味なくねー?」
「同感。」
見た目はこどものままだが、
この3人とはかれこれ100年ちょっとの付き合いである。
「いやいや、人間って予測不能な動きをするから面白いじゃん!
見てて飽きないじゃん!
そうだなあ・・・例えばあそこの男とか!
『帰ったら結婚すんだ』って言ってるあいつ、いるじゃん?」
「あー、あのたった今フラグを建設した男ですか?」
「そうそう!
そういうフラグ建設士に『フラグが立ちました』って
教えに行くの。
その反応を見るの!」
「「面倒くさ。」」
顔のよく似た少女2人は、同時に言葉を吐き捨てる。
「ちょ、女子2人!
俺泣いちゃうよ!?
俺が泣いたら多分ゲリラ雷雨的なのが起きちゃうよ!?」
「じゃあ泣かないで下さい。」
残る少年にもぴしゃりと言われ、膝を抱えてうずくまる男。
これが『神様』だなんて、誰も信じないし信じたくもない。
「・・・おい縁、霧。」
「なあに?結くん。」
自分と同じ色の瞳が、同時に少年へ振り返る。
その目を見て少し安心した。
なんだかんだで妹達は自分と同じ事を考えているのだと。
「いい時期かも・・・暇だし。」
「まあそうだねー。
こうしていられるのも神様のおかげだもんね・・・暇だし。」
自分達は死んでから成仏できず、
魂が朽ち果てようとした時にこの男に拾われた。
慈悲の心か、ただ単に自分の創った『人間』という物を
傍に置いておきたかっただけなのか。
今となってはわからないのだが、
とにかく行き場のない自分達を手元に置いてくれたことに対して
恩義というものは感じているし、
それが今返すべきものであるということもわかっている。
「さっさと顔を上げて。」
未だにウジウジしている彼の肩に、ぽんと手を置く霧。
「でないと殴る。」
終始無表情なのでどこまで本気なのか分からないのが、
髪が短い下の妹の霧。
「霧ちゃん、俺、仮にも神様なんですけど・・・」
「神様なら尚更シャキッとしてよー。」
2人のもとにダイブしてニカっと笑う遠慮を知らない、長い癖毛の縁。
「どうせやるんならキッチリやりましょうよ。」
最終的なまとめ役、どうにもまとまらない癖毛の兄は結と言う。
「中途半端は嫌いです。
こういうことは最初が肝心なんです。
それに・・・暇ですし。」
ポカンとしていた神様だったが、
やがて笑顔になって嬉々として今後の展望を語り始めた。
「・・・これが大体1000年ちょいくらい前の話かな?
そんなこんなで改めてヨロシクね!」
自らを「ゆい」と名乗った少年は、
ニコニコ笑いながら私にそう言った。