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プロローグ

※不定期更新です。記憶の片隅にでも置いておいて下さい。

 

 創造の前に破壊があるように、人類(わたしたち)の希望は絶望の後に与えられた。

 莫大な力を持つそれは、確かに希望の輝きだった。それが、限りあるものだと知るまでは。

 皮肉にもその輝きは、世界を更なる絶望へと導くことになった。

 きっと、神様は思ったのだろう、



 『まだ、破壊が足りない』と――――――



  ◆  ◆  ◆



「――――皆様、当機は新ベルリン・テゲル空港に着陸いたしました。ただ今の現地時刻は5月5日午後6時06分。天候は晴れ、気温は17度でございます。機体が完全に停止し、座席ベルト着用サインが――――」

 機内アナウンスに起こされて、ようやく寝ていたことに気が付いた。着陸の揺れで起きなかったのだから、よっぽど疲れていたのだろう。今回は一人ということもあって盗難防止のためにと気を張っていたのだが、それが違いだったようだ。


「ん~んっ、いたたたっ」

 同じ体勢をとり続けた私の体は凝り固まっていて、背伸びをしようとすると痛みがひびのように体を巡った。CMなんかで見かける、ひび割れながら動き出す石像の気持ちが分かった気がする。以前はこんなことはなかったのに。

「こ、これはシートが悪いのよ。こんな旧式のシートに座れば誰だって体を痛めるわ……」

 そう言って、これは年のせいではないことを自分に言い聞かせた。まだ慌てるような年齢じゃない。

 実際、この座席が古いのは事実だ。座り心地は悪いし、背もたれは手動で調節しなくてはならない。座席に限ったことじゃない。収納棚には自力で手荷物を入れなければならないし、機長がこの機体を操縦している。機内全体が、今となっては懐かしい雰囲気に包まれていた。


 ポーン


 ようやく体が動かせるようになった頃、心地の良い電子音と同時にシートベルト着用サインが消えた。それを合図に前方の乗客が一斉に動き出す。殆どがスーツや白衣を着ている。きっとこれからすぐに仕事なのだろう。

 中には携帯を頬と肩で挟みながらせわしなく手荷物を下ろす人もいた。長旅の疲れが残っているだろうに。

 私はというと、シックな黒のジャケット、グレーのパンツ、防寒用に用意したベージュのトレンチコート。色合いこそ地味だが、一応は私服。それに、荷物も搭乗前に預けているので焦って準備することもない。私も同じく仕事だが、始まるのは明日からだ。この差にちょっとだけ優越感を感じる。


 私は意味も無く見せ付けるように、ゆっくりと座席に腰掛けて、通路が空くまで窓から見える景色を眺めることにした。

 オレンジ色に染まりつつあるターミナル、空と滑走路を忙しく行き来する旅客機。ここから見える眺めは、旅行で訪れた12年前の景色と変わりなかった。懐かしい思い出がよみがえってくる。

 父と昼食を食べたあのカフェはまだ営業しているだろうか、妹がジュースをこぼした時に、キャンディーをくれたあのおじさんは元気にしているだろうか。そういえば、旅行前に母が来れないと知った私は一晩中泣いていた気がする。

 楽しかった日々。まだ、『国』が世界を動かしていた頃の思い出。


「そろそろかしら」

 通路を見るとさっきまでの騒がしさは消え、前方の搭乗口にひそひそとした話し声を残すだけとなっていた。私も席を立ち、乗客の作る列の最後尾に加わる。並んでいる間、少しだけ仕事を忘れて再び思い出にふけった。

 仕事が終わったら、思い出の場所をたどってみよう。




 ……そんな想いは、僅か5メートル先で打ち砕かれた。 

 

 初心者なので至らぬ点が多々あると思いますが、これからよろしくお願いします。

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