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第四話

一万の硬貨を間違っていました。

誤………金貨

正………大銀貨。


10→石貨

100→銅貨

1,000→銀貨

10,000→大銀貨

100,000→金貨

1,000,000→白金貨

10,000,000→大白金貨

100,000,000→白金棒


大金貨は忘れてました。たぶんそんな大金を表記する機会があるようなないような……?

改訂いたしました。27.7.18

修正いたしました。28.10.22

 並んでいる受け付けへ。戻ってきたら奇異な目で見られたがそれを適当に流してクゼハルトは列が少ない窓口へ向かう。呼び掛けられなかったのだから並べばいいのだろう。本人はそんな感覚だ。


 しかし、待ち時間と言うのは億劫だと思う。クゼハルトも召喚前は普通にトュリュカとデートの一つや二つはやっていた。その中で遊園地に二人で行ったことがあるのだが……人気が高ければ高いほど待ち時間は長い。当たり前だが人気なのだから当然である。


 そんな時は二人で喋ったりして時間を過ごせたのだが……残念な事に、今は時間を簡単に過ごせる環境は揃っていない。時間を潰すと言えば頭に鎮座するデブ鳥を通して魔王に話しかけるだけだろう。そんな事は軽はずみでもしたくないと首を振るが。


 この魔王は気が抜ける話し方にたまに所望するお願いが酷すぎる。リーナリーナの試験だっていきなり耳を切り落とされたところが見たいと言われた時はなぜ、と思ったほどだ。


 まだ人を殺せと言われていないからいい。召喚された時も、人の命は教えられていない。しかし、クゼハルトは魔王の傀儡として契約してしまった。これから勇者も殺す。相手は“ 人 ”だ。躊躇いがないとは言い切れないだろうが、契約もあるしトゥリュカの事を考えれば殺せる。


 だがどうだろう。魔王は勇者だけを殺せと言うか?言うはずがない。殺し方も使う武器もほぼ使い手が餌食になるものばかりだ。先にこちらが死ぬ。魔王の呪いのせいもあり普通の魔導入した武器では死なないが……


 いつ無茶ぶりしてくるかが分からないのだ。それこそ魔王の気分。ここは大人しく待っていた方が懸命である。ほら、順番が来た。


「来やがりましたねっ!さあ!リーナリーナお姉さまがなぜ試験官をやらなければならなかったのか、白状してください!!」

「………………」

『どれだけ好きなんだろーねー。僕もクゼハルトの忠誠、もっとほしいーなー?この子でもいいけど~』

『お前――ロリコンか?』

『ロリコンって言うのは、どういう意味かな?なんだか聞き捨てならないや』


 頭上から不穏な空気が出てきたような気がするが、そこは気にしない。気にするのは目の前の存在だろう。


 偶然にも並んでたどり着いた場所が、あのクゼハルトをガスガスと叩いていた少女だった。ドワーフなので、実際は少女と当てはめていいのかは分からないが……くりくりとした大きな瞳はやはり、少しつり目に見上げている。


 見上げられて上目遣いに見えなくもない。一応、このギルド内で美少女、と彼女は呼ばれている部類だ。普通の冒険者ならこれでたじろいで平謝りなのだが……


「新規登録の発行が終わっていると思うのですが」


 クゼハルトには関係ない。彼にとってトゥリュカこそがすべてである。言葉遣いは念のためだ。意味は無さそうだが。


「な、なんで私の可愛いが効かないのですか!?貴方は男ですか!?」

『ははは!男を疑われてやんの!!ははははは!!』

「……手続きを」

「そんな事よりお姉さまの事です!貴方がお姉さまをたぶらかして」


 だん。バキ――


 さて、これはなんの音だろうと言えばクゼハルトが少し苛立ったのでカウンターを叩いてしまった音だ。あいにくと、左手で。おかげで寄りかかる部分がなくなってしまった。


 加減は今まで自分で注意していたのにも関わらず、叩き壊してしまったのはなぜか。――当然の事、我慢の限界である。


 リーナリーナの対戦はやり過ぎたとは思っていない。やらなければクゼハルトは確実にやられていた。あれは断言できる。まず、ただの新人試験に完全装備の魔弓を普通に出してくるか。出さないだろう。それこそ腕に自信があるのだろうから、潰された剣などで適当に受け流していればいい。しかし対戦して確信している。あれはマジだったと。煽ったのは自分かもしれないが、あれはない。


 あちらから進んであちらが勝手にはしゃいで負けたのだ。この受付嬢に何かとやかく言われる筋合いはないだろう。例え、彼女とリーナリーナが身内であっても。


「誰か別の担当に変われ」

「俺が引き受けよう。ベル、引っ込め」

「っ――ギルド、長」

「仕事を放棄して冒険者にまだなってもいない一般市民になに牙を立てている。仕事の邪魔だ。引っ込め」

「っ――失礼、します」


 威厳ある口調、態度で小さな受付嬢、ベルを下がらせたのは――腕を組んで仁王立ちしているギルド長、らしい。


 いかにも冒険者、と言うような荒っぽい服装。刈り上げた群青の頭はとても短く、細く鋭い青い目でベルの背中を見送った。どうやら交代らしい。その使われた椅子に、ギルド長と呼ばれた男が自ら座った。


 この人は先ほどクゼハルトやメリリアに指示を出した人だ。それが分かるとクゼハルトも苛立っていた気持ちを少し抑える。この人は話がわかるとさっきのやり取りと態度で分かるからだ。


「我がギルドの受付が申し訳ない。許してくれ」

「あんたがギルド長、か。許すも何も、ちゃんと仕事をしてくれれば問題ない。俺が対戦したリーナリーナは自分から新人が天狗にならないためにと言って全力でやれと言った。そして彼女は潰すとも。俺は正当防衛で動いたぞ」

「そんな説明は初めてだ。後でリーナリーナにきつく言っておく。俺がお前の対戦に彼女を推したんだ。悪く思うな」

「壊した分、解体の素材に色、安全な宿屋の紹介で帳消しだ」

「ああ、わかった。助かる」

『なに、このやり取り。むさ苦しい』

『だから黙れよ』


 これで終わり、と言う意味を込めてギルド長――グロルドと軽く握手を交わした。これでこの件は帳消しだ。


 と、そのまま手続きは続けられるらしい。ギルド長自らとはなんの悪ふざけだと思ったが、うるさい受付嬢たちには任せられないらしい。出来るのなら別にいいが、明らかに回りがざわついている。おかげでクゼハルトの後ろには誰もいない。


 それでも進められるのがまたなんとも。進んでしまうのだからしょうがないのだろう。雑な説明だが、元々は冒険者だったらしいグロルドの説明は実に分かりやすかった。


 まず、冒険者にはギルドカード(またの名を冒険者カード)が配布される。これさえあれば身分証として使えるのでどの国にでも行けると。身分証明書は貴族が一番使うものらしい。冒険者が今後に身分証明書を使う機会と言えば、他のギルドである商業ギルドと魔法ギルドに入会する時に使うか、家を買う時だと言う。


 因みになぜほぼ身分証明書とギルドカードは一緒なのに入会などに使えないのかを聞くと、ギルドカードにはランクがあり、そのランクで物を言わす馬鹿が存在したため使えなくなったらしい。詳しくはその時にギルドで聞けとグロルドは投げた。


 ではそのギルドランクについて。ギルドランクとはその個人の強さを大体で表しているランクで、上からSSS,SS,S,AA,A,B,C,D,E,Fとなり、Fが最弱。依頼をたくさんこなせば勝手にあがると笑いながら言う。本当なら二十回、四十回、八十回と倍の数をこなしてランクが上がると説明が入るのだが……グロルドは実に己の感覚で説明していった。因みに……採取や街中ばかりの依頼をやっても、Dで止まってしまうので半分は討伐をやらなければ昇格は出来ない、と。


 S~SSSは魔族の討伐数と、魔族にもランクがあるらしい。でもグロルドの説明ではその魔族のランクは知らないと言う。倒した後に判断するんだとか。魔王が言うには


『人間が勝手に付けるから僕は知らないよ。それにー、倒されるのってしょぼい魔族。強い魔族が倒されるのは五百は生きている壮年の魔族かなー?』


 だそうだ。まあ、その道のりも遠いし、クゼハルトの位置も人間でありながら魔王の下で傀儡人形となっている。敵対するのかしないのか……そこは逢ってみなくてはわからない。


「後は……パーティーを組んだ場合はその仲の一番低い奴のランクになるので注意しろよ」

「パーティーは今のところ組む気はないな」

「そんなの最初だけだ。そして、別れた後だ」

『人間って落ち込むと自分が世界で一番不幸だと思うから嫌になっちゃうよ。この人は絶対に仲間が死んだんだろうねー。ところでもうおっさんを見てもつまらないから出てくれない?』

「はあ……あのさ、あと何を聞かなきゃならないんだ?」

「つれねーな。ギルドカードがどこにあんのかわかんねーから焦って話を繋げてんだろうが」

「……出来ないならやるなよ」

「あのままだと無理だろ?」


 確かにあのベルと言う小さい受付嬢ならもっと時間がかかっていただろう。そこはありがたいと思うが……慣れない事をしているためか、言ってしまえば大袈裟なぐらい探し始める。ないな、と呟きながらこの男の説明はまだ続けられた。


 そうは言っても、あとは簡単なギルド内部の紹介や職員の紹介。物の場所の在処やなぜかグロルドのお薦めのお店まで紹介される。


 別にそんな事はどうでもいいと思うクゼハルトなのだが――まだ出てこない。まずここにあるのかを確かめて欲しいものだ。あとはギルドカードの説明だけなのだが……


「あの、ギルド長……踏んでます」

「あ」

「おい」

『ぶっはははははははは!!!!』


 また新たな顔の受付嬢が申し訳なさそうに進言してくれたおかげでギルドカードはグロルドの足元から救出された。当たり前だが、これからクゼハルトの物になる物を踏まれたので本人の顔はすでに冷めきった顔だ。絶対零度のように無表情に鋭い眼光を取り付けてグロルドを睨み付けている。


 逆にグロルドは軽いもので……頭をかきながら短く謝るだけ。ほらよ、と渡されても受けとる気はなくなる。受けとるしかないのだが。


 ギルドカードには名前と職業。それにギルドランクが記されている。他の項目は限られたギルド職員しか見れないし、ギルドカードの細部まで見たいのならまた手続きが必要だと言われた。それには血と銅貨五枚(五百)が必要らしい。クゼハルトには手元にお金がないのでこれは保留とした。


「じゃ、次は解体だな。ついてこい」


 そして豪快にカウンターを飛び越える。ここのギルドは面倒臭がりが多いのだろうかと疑問に思うが、やるのは少し身体能力が高い職員だけだ。けっこうやる人が多いのだが、それはよくここで喧嘩が始まるからである。先ほどの酔っ払いのように。それを止めに行くのはだいたいギルド職員の役目。そうなれば自ずとカウンターなど飛び越えた方が早いと職員の中で短縮ルートが出来上がった次第だ。


 それは置いておいて、ドカドカと進むグロルドの後ろにまた訓練所でも通った通路に通される。今度は真っ直ぐではなく、すぐに右手へ曲がったが――


『くっさ!』

『このデブ鳥って嗅覚まで備わってんのか?凝ってんな』

『ちょっ!?デブ鳥ってなに!?この子のこと!?』

『どの子だ。知らんぞ』

『この子と言えばエリザベスローズマリーヴィリアンヌマチルダアリアマリアフィリーナの事だよ!!』

「知るかっ!」

「ぅおお!?なんだ!?どうした!」

「あ、悪い……躓きそうになった」

「そうか?まあ、気を付けろ」

『ぷ』


 無言でデブ鳥=魔王だと思い、クゼハルトが殴ったのは言うまでもない。衝撃を吸収したのか、殴った気がしなかったとここで言っておく。


 少し歩いて一室に案内された。そこには巨大なテーブル、大中小さまざまな大きさの解体用の刃。ピックの用なものまで揃えており、部屋の両脇には水場が備え付けられていた。そして一人の男も。


 少しガリッとした体にやはりげそっとした頬。彼は解体、鑑定担当のコヴェンと言う。解体の腕はこのギルド内一の腕を持ち、手数料は取られるがその分綺麗に剥ぎ取ってくれるので状態がいいものを彼に渡せば逆に手数料を上回る素材になり、買い取り額があがるかもしれないと噂されているらしい。


 噂と言うのは、綺麗に外傷なしで狩ってくる冒険者があまりいないからだ。今では誰が解体手数料を上回れるか競う形で少しでも娯楽にしている。もちろん、自ら解体したものを持ってきてもいい。そこで精算されてその分のお金がもらえるだけだ。腕に自信があるならそうすればいい。


 では早速――と、クゼハルトも解体をお願いする。自分でする気はないので、すべて任せる気だ。手数料が、とグロルドに問われるがここまで来る道のりで狩ってきた量を考えれば大したことはないと判断している。魔王からすでにボロ儲けとはしゃいでいたからだ。


「一体につき人間までの小型が銅貨七枚。二メートルンから七メートルンまでが中型の銀貨三枚。そっから先が大型で金貨二枚だ。特大はさすがに要相談だな。人数がいるだろうからその時に決める」

「狩れたら頼む」

「いいのか?大抵の冒険者じゃあ少しでも手取りを取ろうと自分でやるぞ?」

「問題ない。覚える気はないし、暇がない(まず、魔王がうるさい)」

『ねぇ、なんか僕に対して思った事はないかな?何か聞こえたんだけどー?』

「まあ、いいけどな。で?俺には手ぶらにしか見えないが道具箱(ボックス)持ちか?」

「そうだな。この上に出せばいいのか?」

「お願いします」


 お願いと言われたのでこちらも魔王に願う。空間道具箱(マジックボックス)のどれを出すのか決められるのは魔王だ。所持権を認証させられたが、権限はほぼない。


 いっくよー、とまたお気楽な掛け声と出てくるのはこれまで来るのに倒した魔物が全部。大体が魔王の要求で首をすっぱり落としている魔物。


 森蜘蛛(ウッドスパイダー)×三。木と擬態するのがうまい。クゼハルトより三倍は近い大きさの蜘蛛。足が太くてそれが木の枝にしか見えず、跨いだり踏んだりすると襲ってくる。一体は不意打ちでうっかり左手で切り裂いたため、首と蜘蛛の右足一本も斬り裂いてしまっている。残り二体は綺麗に首だけがない。中型。


 次に出てきたのは大熊(ベアベア)×四。肉食系で人を見つけたらすぐに襲ってくる。単独行動しかせず、ある程度を自立したらすぐに単独行動をとる。これは人の二倍の大きさで落とす時はジャンプするか下から突き刺して倒してから首をはねたもの。中型。


 緑蟷螂(グリーンマンティス)×七。森にしか生息しない魔物。よくやるのが両手の大きな鎌から一閃が翔んでくること。それさえ注意していれば負けない魔物だ。クゼハルトぐらいの大きさで小型。


 ウェアウルフ×三。初心者向けの狼。黒のような茶色の毛並みで、繁殖がゴブリン並み。小型。これははすべてデブ鳥がいたからこそ運べた。出すさい口からペロンと出てくるのだからまた異様な光景だ。


 まとめると小型が六体×銅貨七枚。中型が十一体×銀貨三枚。銅貨は日本円とすると百。銀貨は千。大銀貨は一万。金貨は十万。因みにその上の白金貨は百万。大白金貨は一千万。白金棒は一億となる。十円は石貨だ。


 ざっと日本円で計算すると43,400円。この世界に直すと銅貨四枚。銀貨三枚。大銀貨四枚の手数料が取られる。しかし、現段階でクゼハルトにはお金がない。綺麗に解体してもらってなお、見返りはあるのか聞かなければならないだろう。


「ああ、言い忘れていたが素材をここで売るとこちらに二割、代わりにこちらで解体させてくれるならその二割は貰わない。手数料で金を取られるか、自分で裂いてギルドに二割で取られるかのどちらかだ。覚えておいてくれ。――なあ、これ一人でか?拾ったんだよな?」

「んなわけあるか。一人で狩ったぞ。コヴェンだったっけ?解体はちょっと待ってくれ」

「え?何でだ?」

「今の俺に金はない。だから解体手数料を払えない。これをギルドに素材として売ったらその手数料を引いても大丈夫なのか分からない」

「……お前、マジで言ってのか?」

『世間知らずでごめんね~。トットス村の周辺ってなかなか強いのにクゼハルトったら簡単に首を跳ねちゃったんだ!あそこの魔物ってC~Bなのにね!とくにウッドスパイダーなんてBランク。木と擬態がうまくて素材の足を踏んだりしちゃうから綺麗な物が取れないけどうまく倒して綺麗な足を売れば結構な価格になるんだけどねー?あれを加工するとすっごい固い棒になって重宝するんだよー。杖とか?』

「あ?」

「こんなウッドスパイダーの綺麗な足なんて見たことねぇぞ。しかも二三本の足全部に損傷が見当たらない。状態がいいから一本で低くても大銀貨三枚は出すぞ」

「ん?もう一回いってくれ」


 ちょっと間を置いて――聞き返すのは当然だろう。単純計算ですでに69の数字が飛び出し、それに万をつけたらちょっと大金になる。ここから先程の43,400円をざっくり引いても65万は残る。これは儲かっていると言えるだろう。他の魔物もどれくらいになるか分からないが、数字の誤差はあまりないと言える。


「今さらだが冒険者登録に入会金とかないのか?」

「ああ?本当に今さらだな。リーナリーナは何も言ってないのか?最初に銀一枚は取るぞ。と言うかギルドでこれを売ってくれるよな?変わりに手数料なしだ」

「そっからギルドカードの詳細金額を差し引いてくれ」

「わかった。それもタダにしてやる。コヴェン、ざっと見積もってどうだ?」

「……………………色を付けるんですよね?どれも状態がいいので白金貨はいきます」

「おいおい。初っぱなからえらい大金持ちになったな、新人。不備がないように書類は起こしておけよ」

「はい」


 ぱぱっと指示を出して解体部屋から部屋に出るとまたカウンターまで戻り……戻るわけではなく、受付嬢に声をかけてカウンターを通り抜けてギルド職員用の別室に案内された。一度は踏みとどまったものの、来い、と言われれば行くしかない。


 魔王から『面倒事、ご案内~』などと呑気な声が聞こえてくるがそこもスルーする。通された一室は整理されているが山積みの紙束がテーブルを占領して使えなくなっている。セットで組まれているソファーがなんだか物置のように服や道具が置かれていた。


「適当に座ってくれ」

『汚い……』

「汚い」

「俺が整頓できる玉に見えるか?」

『見えないね!』

「見えない」

「だろ?とりあえず――よっ、と。もうそろそろ準備できるから待っててくれ」


 ただ紙束の山を一角ほど開けただけ。なんとか座れるソファーに座って、この狭い空間でやり取りをするらしい。実に大雑把だ。


 それからしばらくしてお茶と魔法具を持ってきた見知らぬ受付嬢が二人ほど入ってきて……ギルド長とクゼハルトは追い出された。あまりにも杜撰な部屋で話し合いもあったもんではない、と。普段は笑顔で荒れた冒険者をいなしている彼女たちであっても、この時ばかりはギルド長も言われるがままに追い出されていた。


 そんな騒動もありつつ、別室で執り行う事は簡単な事だ。まず、冒険者カードの詳細を見れるようにする事。クゼハルトも中身の確認はしたいと思っていた。


 名前、ギルドランク、職業は偽造されても困ることから隠せない。中身が見れるようになると称号や備考欄。魔物討伐数と受注依頼の表示、それと特殊能力が見えるように。


 プレスするような魔法具に先ほどもらった手のひらに収まる冒険者カードとカードの一面が染まるようにクゼハルトの血を垂らし、その魔法具を使えば出来上がり。この魔法具のおかげで細かい詳細の確認は本人とギルド長のみ。他人が見えるのは普段見える場所だけだ。もちろんギルド長も特別な場合のみしか見れない。任意で見せられるが、クゼハルトがそんな事をするわけがない。


 そのやり取りか終われば精算が終わったとの報告。金が入った袋とともに書類を渡された。確認したらサインしてグロルドに渡す。まとめられた書類は実に詳しくかかれていた。


 ウッドスパイダーの足(上等)×二二……大銀貨七七枚。一つ大銀貨三枚と銀貨五枚相当。

 ウッドスパイダーの足(不良)×一……銀貨ニ枚。傷があったため。

 ウッドスパイダーの足(粗悪)×一……銅三枚。一部破損。紛失。


 ベアベアの牙(普通)×八……銀貨四枚と銅貨八枚。一つ銅貨六枚相当。

 ベアベアの肉。480キログラムン……大銀貨九枚と銀貨六枚。1キログラムン銅貨ニ枚相当。


 グリーンマンティスの鎌(普通)×十ニ……銀貨六枚。一つ銅貨五枚相当。

 グリーンマンティスの鎌(粗悪)×ニ……銅貨四枚。一つ銅貨ニ枚相当。

 グリーンマンティスの羽(上等)×十四……大銀貨一枚と銀貨四枚。一つ銀貨一枚相当。


 ウェアウルフの毛皮(上等)×三……銅貨九百枚。一枚銅貨三枚相当。


 合計……大銀貨八九枚と銀貨四枚と銅貨四枚(894,400円)

 色を二割加算。合計白金貨一枚。大銀貨七枚。銀貨三枚。銅貨二枚。石貨八枚(1,073,280円)也。


 そこから冒険者カード分、入会費用の銀貨一枚1,000円を差し引いても1,072,280円は手元に残るので……まったく痛くもない。当然のようにデブ鳥に保管して、ようやく宿探しができるようになった。


「まあ、なんだ。これからよろしくな」

「――よろしく」

『僕によろしくはないわけ?』

『だから、黙れって』




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