勝代死す
「ユウさま!!」
我に返り、目を開くと部屋には誰もいなかった。先程のぐにゃりと不自然な体勢になった三善も、縄を握りしめた三兄妹も。
「わ、私、いま、いま!人が死んでいるのを見たのよっ!本当よ!!」
「落ち着いてくださいっ。疲れているんです…!しっかりなさってください!」
「だ、だって、」
もう一度見ても静まり返った部屋が構えているだけで、むしろ内装は長年手付かずのような有様であった。
「身体を温めて。ひとまず寝ましょう…重度の低体温症になってしまいます」
「じゃあ、じゃあ!私を殴って気絶でもさせてっ!」
「ええっ?!」
その時であった。為成の断末魔のような、呻きが館に響いた。
「な、な」
「為成さんに何かが?!」
「勝代…そんな…」
為成が崩れ落ち、涙を流していた。駆けつけた時には既に遅く、いや、もう手の施しようがなくなっていた。
勝代の衣服を着た体が床に横たわり、放られている。首は焦げ、残りの皮膚もただれていた。焼かれたのか、それとも雷でも食らったのか…。
残されたのは彼のみだ。
「ひどい…くびちょんぱだあよ…」
幼子のヒイロが泣いている。まあ、子供にはショッキングな状態だろう。
その様子を見て、脂汗が滲み出た。脳裏に子供たちのあの姿が、幻覚がこびり付き心臓が早鐘を打つ。
心労の末にあのような妄想を見たとしても、この空間で平生ではいられなかった。
(逃げ出したい。ママ…家に帰りたい…もう無理よ…助けて…)
必死に涙をこらえ、思考を回転させる。
「ま、まだ暖かいわ。血の凝固からして1時間以内かしら。み、見立てよ?そ、れに──」
「ユウさま。顔が真っ青です…遺体から離れましょう」
「うるさい!伽藍の孫が死体ごときで乱れるなんてみっともないわ!!」
「ですが…」
「おだまり!…焦げてはいるけるど切断面がやけにきっちりしているわね。のこぎりやナイフではなさそう。この屋敷には、大型の切断機器はある?」
「ちぇ、んそー…なら…ありますわ。」家政婦もあんまりな死に体に嗚咽を堪えている有様だ。
「チェンソーなら可能ね。けれど、それらしき異音はしなかったし」
「あたいら野見山さんの推理解きをしてたもの。一族の大半はアリバイができちゃうよ」と愛が口を挟む。
「目立って席を外したのは勝代さんと三善ね」
「あれ、三善は?」
異変に気づいた京連が彼女を探した。
「そういえばいない…」きょとんとして愛は辺りを見回す。二人の様子に羅漢が声を上げた。
「まさか、三善がやったのか?!」
「確かに…悪意は彼女たちにあったし、でも、」
否定はできない。あんなに犬猿の仲を晒していたのだ。
「ちょっとおかしなとこあったもん。三善姉さん」
「ゆ、ユウさま…ここにもガジェットがっ!」
馬場が慌てふためきながら絨毯を指差した。
「爪?…象牙?」
ほんの一欠けら。黄ばんだなんらかの角か、爪かはたまた牙か──痕跡が落ちていた。
「争った折に飛び散ったのかしら?」





