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逃亡

短め?です。小説書くの大好きパワーが欲しいです。

 錆びついた車輪が悲鳴をあげ遠ざかっていく。耳障りな金属音が雷雨にかき消されるまで、場は静まりかえっていた。


「…そう気を落すことはないよ。当代はちょっと変な人だから。あのさ……」


 さきほど迎えを手配してくれた少年が困った笑顔で慰めてくれた。他の人々は講義ともつかぬ視線をそれぞれに交差させる。


 気が遠くなるような感覚が意識を襲う。「……げましょう」

「えっ?ユウ様?」


 青ざめた唇が何かを囁く。蚊の鳴くような、その訴えに馬場は目を瞬かせた。



「…逃げましょうっ!」


 玄関のドアノブを捻り大荒れの嵐へと身をなじる。突風で荒れ狂う木々の轟とシルエットが一寸先で待ちかまえている。ユウは自然の凶暴さに一瞬恐怖で怯んでしまった。


「ゅ、ユウさま…おやめください!いくらなんでも…」

「私は町に帰るっ!パパとママに会いたい…!もうイヤっ!」雨で濡れたタイルを踏みしめ走りだす。気の触れた孫に付き人は焦燥したものの、渋々跡をついていった。


 ぬかるみ進みにくい庭先を抜け、宛てのない逃避行へ―「だめだよっしんじゃうよ」

 いきなり体に巻きついた生ぬるい感触に悲鳴を上げた。ついに殺人鬼にやられてしまうのだ!


「―ゆうりんっわたしだよ、あいだよ。あぶないわ、こんな日に外に出たら」


 稲光に照らし出されたのは不安げな表情をした愛であった。じたばた抵抗していたユウも観念したのか息を荒げたまま泣き崩れた。


「…明日まで…明日まで待ちましょう…それで…なんとか、説得しましょう…?僕も一緒に、当代に…」


 明日まで。少女は憎悪と絶望に染まった瞳で馬場を見つめ返した。涙さえ雨粒に埋もれ、なだれ、滴る。


「なによ……ふざけて―」

 上空で唸る突風が森を逆なでた。闇のなかで葉が打ち付けられ、薮がこねくり回される。うるさいほどのざわめきは本能的な恐怖を刺激する。体の強ばりがとけたその瞬間を目ざとく、付き人は彼女を立たせた。


「さあ。行きましょう。」


 腕を掴まれ、元来た道へ引き戻される。「はなして!」


 暴れるユウを二人がかりで客間へ連れ戻すのは至難の業であった。

「へくしゅっ」サスペンダーを緩めながら、馬場は体をこれ以上冷やさないよう工夫する。すきま風でも薄ら寒く感じた。


 強風でがたがたとたてつけの悪い窓枠が音を立てる。それでも雨ざらしよりはいく分マシであった。客間は水漏れしたかのようなありさまで、ぽたぽたと水を吸った衣服が肌に張り付いて不快だ。


 ユウをソファに座せにつかせ、こうして宥めすかすのも遠い昔の出来事みたいである。彼女は未だに反旗を翻そうと伺っているのだから。


「少し擦りむいてる、消毒液も頼めばよかったわ。」


 草が付着した足を念入りに調べ、靴を脱がす。雨水を含んだ革靴が絨毯にシミを広げた。

 元の「地獄」へ連れ戻され乱れた衣服や髪を整えられ、びしょぬれになった当人はいけ好かなそうに俯いて、ギッと二人をねめつけた。


「……一生怨んでやる。」

「風邪ひいちゃう。ほら、これ愛の寝間着。コマが代えの服をとってきてくれるから。」

「コマさんは…だいぶ錯乱していたようですが…」


 勝代がパニックを起こし故人を揺さぶったように彼女も同様の行動を起したのだろう。エプロンに血がついていた。死に直面した人の脆さを嫌でも見せつけられたユウにとって、家政婦が今頃洗濯へ躍起になっている姿は容易に想像できた。


「…風邪を引こうがなんだろうが、私はもう、疲れた…。死体を見て気絶でもすればよかった…。自分を呪うわ。」


 気だるげにソファへ身を任せストレスを二人にぶつけた。二人はどうしようもないと、傍観するばかりで苛立ちがさらに募る。慰めるでも拒絶するでもなんでもすればいいのだ。

 彼女らは哀れみの視線でこの塔婆ユウを見つめている。イライラする。「真っ先に逃げようと提案したのは馬場、あんただったじゃない。なのにどうして今更明日まで待とうなんて言い出したわけ?」


「それは…もしあのまま正気を失い…森を彷徨ったとしても…」

「はっとんだ心変わりね!」

「心変わりなどしておりません…逃げるんだったら、もう少し転機を待ちましょう。コマさんに秘密で雨具をかりるなり…状況を整えるのです…。」


 愛もうんうんと頷いた。

「私もできることだったら手伝う。…けど、さみしいなぁ。とうばさんがいなくなっちゃうのは。」

「さびしくなんかない…!そうやって口裏合わせするのはやめて!あんたらの考えてることは分かるわ!つまり最低!このクズ野郎!」

「ひどい言われようだなぁ。ばばさん、こういう時はどうすればいいかな?」

「えっ…うーん……なにか心を落ち着かせる、なにか…」

「コマから静穏剤貰ってこようか?」

「ああもう!分かった落ち着く!はあ、どう?落ち着いたかしら?!」


 肺からめいいっぱい空気を吐いて二人を悪鬼の如く睨みつける。すると彼らは気圧されぎこちなく頷いた。

こんな所にいられるかーっと登場人物が逃げようとするシーンはドキドキしますよね~。映画だとなにか出てくるんじゃないかって勘ぐってしまうんですよ。

ありきたりなシーンほどハラハラドキドキしちゃうんですよ私。

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