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Another 36.28  作者: 高田 勲武
5.導かれたもの
20/27

天を貫く女神像-事実

 魔素(まそ)。――それは発見され、認識されるようになってからまだ歴史は浅い。昔はなかったというのが定説で、ある日突然出現したと言われている。魔素を体内に取り込むことにより、生態を壊した動物がモンスターに姿を変え、人は魔法を扱えるようになる。


 魔法も体内の魔素と頭のイメージで具現化させるものなのだから、それはこの世界を語るに切っても切り離せないものと言って過言ではない。


 魔力とは魔素を取り込み、魔法を行使する精神力のこと。


 そして、その魔素が自然現象として収束したものが精霊。


 現在、知見あるものは八十八体にも及ぶが人の精神力の関係上、一人一体しか契約できず、精霊も意志があるのか……理由はわからないが、人一人としか契約しようとしない。司教(ビショップ)のように代々受け継ぎ、修行の一環としてその契約をする場合もあるが、実はそういった者は少なく、トレジャーハンターが割合として多いぐらいだ。


 実際、まだこの世界には未契約の精霊の方が多かった。――それが移動中にフォルティナから説明を受けた内容である。


 達也達四人は立ち止まり、それを見上げる。


「これの……どこが女神?」

 達也の口から、思わずこの言葉が漏れる。


 兵士(ソルジャー)達を含むヴァーモス一行……管理局を退かせた後も、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。


 体力の限界など、ここを住処とするモンスターにとっては言い訳にもならない。――だがその実、フォルティナがこの世界の常識を語ることができるだけの余裕があったのも事実。


 よって四人の誰も欠くことなくこの場所へ辿り着く。


 地面を踏み(しめ)めてみると砂ではない……柔らかく、足が沈むことはない。表面を蹴ってみると、下地の岩肌が姿を現す。


 ここら一帯は砂漠ではなく、固い岩盤の上であるようだ。


「私に聞くな」

 フォルティナはそれに目を奪われながらも、達也へ吐き捨てる。


 フォルティナ自身、天を(つらぬ)く女神像の現物は初めて見る。絵で知り、本で知識を得てはいたが、間違っても自分の正面にある物体ではなかった。


 異質で、自分の背丈程のほぼ球体のそれ……この形を女神だと言うのであれば、何か宗教染みたものさえ感じる。それとも、元々は立派な女神像が風化して丸くなってしまったのか。


 球体ということはそれだけふくよかな女神だったのか。


「何を勘違いしているの?」

 マリアはあらぬ疑いの視線を(かわ)すように、ちらちらと自分を見る達也とフォルティナへ言い放つ。


「これは女神像の一部。全体ともなると、こんなものではないわ」


 その言葉を聞いて少しほっとする。


「しかし、ひどい風化だな。これでは原型がわからない」

 そんな無意味な問答など興味なしとでも言うかのように、シュウマは正面にそびえ立つ球体を眺めて呟く。


「そう、自然の力ってすごいですね」

 マリアは声色を少し高くし、無防備なシュウマへ、今がチャンスとばかりに身を寄せて同意する。その後、甘えたように肩へ頭を乗せ……


 もううんざりとフォルティナは咳払いをする。


「何よ?」

 頭を起こし、邪魔をしたフォルティナを睨み付ける。


「それで、他の……女神はどこだ?」

 フォルティナは素知らぬ顔で問い掛け、辺りを見渡す。


 周りはいくら見ても少々うねった砂一面で、肝心の「女神」の部分が見当たらない。


「下よ」

 マリアは足元を指差す。


「天を(つらぬ)く女神像はキリスト文明後期、地殻変動で地面に埋もれたのよ」

 そして、付け加える。


 マリアを除く三人の視線は自然と下へと向けられる。


「それを破壊や風化から守るため、岩で(おお)って保護をした。それがこの遺跡」


 四人が足でその土を確認し始めた。


 四人が下を向き、地面を懸命に足で(こす)っている姿――(はた)から見ると、それはどんなに滑稽(こっけい)なことだろう。不意に達也はそう思ってしまい、口元の(ほころ)びを隠すことができない。


「何を笑っているの?」

 それに気付いたマリアが、達也を強い口調で責める。


「真面目に探しなさい。砂に埋もれてしまって、わからなくなっているけど……」


 続くその言葉が最後まで語られることはなかった。


「うわっ!」

 上がる短い悲鳴。


 固いと思っていた地面の一角が異常に柔らかく、そこに踏み出したがために片足が膝の辺りまで沈み込んでしまったのだ。フォルティナは慌てて駆け寄り、その手を取るが……それ以上沈むこともなく、どうやらどこぞの昆虫系モンスターによる襲撃でもなさそうだ。


 達也は自力で砂に埋もれた片足を引き抜く。


「そこよ」

 マリアはその凹んだ地面を指し、シュウマと共に駆け寄る。


「そこが遺跡の入口よ」

 達也の近くまで来ると同時にマリアは言い、この場に集まる三人が見合わせる。


「何をしているの?」

 一つ間を置いて言われる問い掛け。


 達也は首を傾げる。――いや他の三人も、きっと同じ仕草をしていたに違いない。


「早く掘って、砂を()き出しなさい」


「そんなことを言っても……」

 達也は弱々しくも反論する。


 土を掘り起こすような……スコップやシャベルといった道具を持ち合わせていない。


 確かに遺跡に行くことは既知のことであるし、原点の欠片ピース・オブ・オリジンを捜すことが目的である。ならば、少なからずそういった道具は準備すべきものなのだろうが……


 まさか発掘作業となるとは、予想さえしていなかった。


「ここに立派なものがあるでしょ?」

 マリアは察し、その背中に納まる大剣の持ち手を(つか)んで揺らしながら言った。


「こ、これを使って掘れって……」

 達也はあからさまに、げんなりとした表情で呟く。


「そうよ。文句ある?」

 皮肉とか苦情、陰口、文句といった(たぐい)は、どんな小さな声でも本人に意外と耳へ届くもの。――マリアは苛立ちをめい一杯その表情に浮かべて言った。


 達也はぐうの音も出せなくなり、背中の大剣を取ると、無言で柔らかい地面へと突き刺す。そして、てこの原理で持ち上げ、剣の腹に積もった砂を投げ捨てる。


 効率が悪い。


「ほら、貴方達も手伝って」

 マリアは見かねて、手を叩きながらフォルティナとシュウマへ(うなが)す。


「え?私達も……か?」

 フォルティナは顔をしかめる。


「そうよ。貴方達も武器を持っているでしょ?」

 マリアは当然の如く言い放った。


「タツヤの手伝いをしないと、日が暮れるわよ?」


 フォルティナは渋々と腰の剣を抜く。


「お、俺もか?」

 シュウマは大鎌を持ち、恐る恐るマリアの(そば)に近寄る。


「ええ。悪いけど手伝って下さい」

 シュウマへ語る分、幾分かは口調が優しくなっているが……言っていることに違いはない。


「で、でも、俺のは……」

 シュウマは口ごもりながらも、手に持つ武器をマリアへ見せ……自分でもその武器を見つめながらその表情を(うかが)う。


 シュウマの武器は大鎌。つまり重量もあり、巨大武器ではあるのだが、それでも刃の部分だけを見ると達也の大剣程の大きさもなく、持ち手も長いのでフォルティナ程器用に動かすこともできない。


「全くないより、少しは手助けになります」

 しかしその反発は、マリアにとって意味をなさないようだ。


「だ、だったらマリアも……」

 シュウマは言い掛けて……その言葉を消した。


 ――一瞬、マリアの表情が怒りの形相を現したから。


「私は道具を持っていません」

 すぐに穏やかになり、次に言い聞かせるその声は既に穏やか。


「だからシュウマは、私の分まで頑張って下さい」

 ものは言いようとは、まさにこのこと。


 マリアはその肩に手を添え、シュウマを達也とフォルティナが作業する中へと送り出す。当の本人は相変わらず動揺を隠しきれていないが――それでも頷き、大鎌を構える。


「何だか……今から尻に敷かれているみたい」

 達也が呟く。その後、思わず口走ってしまったことを隠すように慌ててその口を(ふさ)ぐ。


「そうだな」

 だが、それは当然、隣で同作業をするフォルティナの耳にも届く。


「良い夫婦になりそうだ」

 と、フォルティナは達也の耳元に添えると、声を押し殺して笑う。


「何か言ったか?」

 睨みを利かせ、シュウマが二人に言った。


 達也とフォルティナは何もないとばかりに口を(つぐ)む。


 剣や大剣……特に大鎌は本来、土を掘る道具ではない。勿論のこと、砂を取り除くにはそれなりの時間を有し……


「早くしないと、本当に日が暮れるわよ」


 急かされ、何とか邪魔をしていた砂を全て掘り出すことに成功する。――手ぶらの両手を見せ、何一つマリアが手伝うことなく。


 不本意な使い方をしたと幻滅し、表情を暗くしたシュウマはその労力を(ねぎら)い、大事に大鎌を納める。


 砂を掘り起し、そこに姿を表したのは穴の入口。そこには階段が存在し、さらに地底へと(いざな)う。


 達也は大剣を定位置に(くく)り付け直すと腰を下ろし、それに触れた。


 砂で(おお)われ、直射日光を避けていたせいか、特に影となる奥の部分はひんやりと冷たい。単純に岩だと聞いていたが、それで思い描くものとは程遠く、もっと石灰質的な白さと、整然とした形状は明らかに人工物であると告げていた。


 この手触り……身に覚えがある。――妙な胸騒ぎを感じる。


「どうした?」

 縦穴と階段を触れたまま深く考え込んでいる達也へ、フォルティナは剣を鞘へ納めながら覗き込むと、心配の声を掛ける。


「い、いや、別に何も」

 慌てて言うと顔を上げ、達也は立ち上がる。


 他三人はその態度に首を傾げるが、本人が何でもないと言っているのだから、これ以上言及することもできず……


「さぁ、行きましょう」

 先に進むこと以外、選択することはできない。


 中へ二、三歩進むと既に暗闇。


 一寸先も見えず、階段であったことから、その先もこの段差は続くと予想され……闇の中、未知の階段を進むなど危険極まる行為を続けることはできようもなく――達也は立ち尽くしてしまった。


 もう自分の正面がどこだったのかも認識できない。


「マリア」

 思いの外、近くで声が聞こえて来る。


「え?火属性の貴方の方が明かりには向いていると……」

 答えるもう一つの声。


 口調によりマリアであると推測できる。流れからすると、最初に聞こえたのはフォルティナのものか。


「今日は何もしていないだろ?」

 フォルティナの冷めた言葉が飛ぶ。


 マリアはこの環境下にも関わらず、それでもわかる溜め息を吐く。そこを指摘されると耳が痛い。


「わかったわよ」

 マリアは諦めたかのように言い……


 急に辺りが明るくなった。


 明暗の差に一瞬目が(くら)むが――それも本当に(まばた)きする程の間。実際に点いた明かり自体が薄暗いことものであり、それだけ目が慣れるのに時間を必要としなかったのだ。


 達也はもう一度、自分の立ち位置を確認する。


 すぐ横にはフォルティナが立っていた。視界の悪さのために足元を滑らせ、落ちてしまうことを危惧(きぐ)してのことなのだろうか。本意を聞く勇気もなく……


 少し離れてシュウマ。さらにその後にマリアが立ち、壁に四角で区分された部分の内側へ(てのひら)を置いている。


「基本、名のある遺跡は一度、人が入ったことのあるもの」

 (そば)に立つフォルティナが語る。


「遺跡に入った際に、その痕跡(こんせき)を残すのがトレジャーハンターのマナーなんだ」

 シュウマは言うと、階段を降り始める。


「明かり……ライトなどは、その際たるもの」

 そうしながらも補足する。


「ライトなんて機器は、人が使える全属性に対応しているけど……」

 マリアは不服そうに言うと触れていた壁から手を離し、シュウマの後を追う。


 ――何だか皆、急に優しくなったのか……まるでこぞって達也へ説明しているかのようだ。正直、突然変わったその態度に、気味悪くさえ感じたが……気遣(きづか)いに助かっているのは本当のところ。


 素直に受け入れようとまで思っていた。


 達也は灯されたばかりの光に目を向ける。


 壁に埋め込まれており、間隔も(まだら)で発する光も弱い。それらを(つな)ぐコードのようなものも剥き出しのまま――この機械自体が古く、突貫(とっかん)工事であることが伺える。


「明かりは本来、火属性が向いているのに」

 まだ言っている。


 マリアがフォルティナの(そば)まで辿り着いたのを見定めると、一行は足並みを(そろ)えて先へ進む。


 フォルティナが手に入れた手掛かりとなる紙切れの中身は天を(つらぬ)く女神像の(たもと)で待ち合わせをしようというものであった。


 文書体からも親しい人間に送られた手紙――ラブレターと捉えるのが一番的を射ているようだ。


 その待ち合わせに使われた目印が原点の欠片ピース・オブ・オリジンに極めて可能性が高いとのことで像の(たもと)……それは下層に行ければ行ける程、そこである可能性も高くなる。


 移動を続ける他三人へ、前知識としてマリアがそう説明する。


 地下へと、どこまでも続くのではないかと錯覚してしまうこの階段。どんどんと歩を進める内、それ自体が大きく螺旋を描いていることに気が付く。


 取って付けた光はその外側の壁へ付けられた機械より発せられ、中心となる内側には何もない。それは空洞のようにも見受けられたが……時折、比較的強い光が発せられている所に差し掛かると、そこに何やら物体のようなものが見えた。


 反射光より、材質は周りのものとは異なっているようにも感じたが……おそらく達也には馴染(なじみ)ある物質。――どうもこの胸騒ぎが納まらない。


 目視できる階段の途中――そこよりもまだ先は続いている。


 (おど)り場だろうか。だが、そう位置付けるには広過ぎる空間。


 垣間(かいま)見える内側に存在するそれ。断続的にしか見られないのも一つの要因だが、視点が近いためにその全体像を見ることができない。――達也はついにその衝動(しょうどう)に負け、この階段を駆け下りた。


 もっと広い場所で、広い視野を確保しなければ……


「タツヤ!ちょ、ちょっと待て!」

 フォルティナは声を上げ、慌てて達也の後を追いかける。


 勝手に一人、先走りするなど素人にとっては……


「いくら前に人が入ったことのある遺跡でも、先に何があるかわからないんだ!」


 ――危険である。しかし、何かに取り()かれた達也の耳には届かない。


 達也が無防備にその広い(おど)り場へ足を踏み入れる。


 フォルティナは悲鳴を上げるが――心配を他所に、その身には何も起こらない。何事もなく、達也はこの空間の(すみ)へ向かって走り……追いかける速度も緩まる。


 広い空間の壁もまた白色の壁ではあったが、(ひど)く痛み……一部欠け、ひび割れも多い。――隙間からは自然の岩のようなものも見えた。


 達也はそこに辿り着いて屈み込むと、大きく乱した息を整える。階段の側壁にも付いていたのと同じもの……それの間隔も短く、その効果によるものか明るく感じる。


 達也は背筋を伸ばし、思い切って振り向いた。


 その瞳に映るのは……それを中心に少し距離を置き、螺旋(らせん)状に連なる階段と自分を追う他三人の姿。――語弊(ごへい)があるだろうが、そんなことはどうでも良い。


 問題は中心のそれ。


 それは右腕を天高くまで上げ……先は天井を|貫《つらぬ]いているために見えないが、女神像と言うには相応しい女性の像。左手で板のようなものを脇に抱え――ここからでは像の腰辺りまでしか見えていない。下へ向かう階段で、足元へ行くことができるのだろう。


 材質は目測通り岩や、白色の人工物ではない。黒ずんだ所もあるが、基本は緑色の金属製であるようだ。


 達也は力なく膝を地面へと落とした。


 ちょうどその時、フォルティナ、シュウマ、マリアの順で三人が到着する。瞳孔(どうこう)を開き、それを見つめる尋常(じんじょう)ない達也の姿に、声をかけようと口を開き……


「自由の女神」

 先に達也が呟く。


 ――間違いない。頭の冠にある七つの突起物は何本かが折れてしまっていたが、それは誰もが……少なくとも写真、映像などで一度は見たことのある自由の女神像。


 地表面で見たほぼ球体の物体は、おそらく囲った石灰質の天井が何かの拍子で崩れたために、そこを突き抜けた自由の女神像が持つトーチの一部。その天井を天と例えるならば、確かに天を手に持つ何かで(つらぬ)く――天を(つらぬ)く女神像とは良く言ったものだ。


「何故、タツヤが……その呼び名を知っているの?」

 達也からは一番遠くに位置するマリアが言った。


「|世界を照らす自由の女神《リバティー・インライティング・ザ・ワールド》。俗称自由の女神像。キリスト文明時、この像はそう呼ばれていたと言われているわ」


 そう、ここはキリスト文明の遺跡。既に滅んで時間も経つ。


 物欲主義で科学力の退化も確認でき、滅んだ原因も不明の文明……文明――深くその言葉を解き明かすと、意味を本当に理解し、使用しているのかは疑問が残るが――遠い昔を示す言葉であるのは明確である。


 達也は頭を抱え、その場に(ふさ)ぎ込んだ。


 それは自分が住んでいた世界が、この世界の遠い過去である証拠。――頭を()(むし)る。


 暗く長いトンネルの先で辿り着いた世界。それは遠い未来の世界。思い起こせばここに住む人は自らの星を「地球」と呼んでいた。


 当たり前である。同じ「地球」なのだから。


「ああああああ――――!」

 上半身を起こし、天を仰いで叫んだ。力の限り叫んだ。


 気が狂いそうだ。


 これ以上、自分を保つことができない。――もう止まらない。


「タツヤ……?」

 あまりの迫力にマリアは(ひる)み、後退りをする。


「タツヤ、落ち着け。どうした?」

 フォルティナは手を差し伸べるがそれを払い除け、達也はなおも執拗(しつよう)に叫び声を上げている。シュウマを見ると呆気に取られ、身動き一つできていない。


 ――いや、こういう時こそ自分の出番。


 フォルティナは今にも暴れ出しそうな達也へ飛び付くと、その顔を自分の胸へきつく押し付ける。


「落ち着け!タツヤ、どうしたと言うんだ!」

 そして、達也の耳元で大声を上げる。


 ようやく達也の悲痛の叫びが止まった。だが、体は小刻みに震え、助けを求めるかのように体をすり寄せて来ているのがわかる。


 もう何も聞くまい。


「マリア、シュウマ」

 フォルティナは顔を上げ、二人の名前を呼ぶ。


 呼ばれた二人はただ振り向く。


「ここは私に任せて、二人は原点の欠片ピース・オブ・オリジンを捜しに先へ進んでくれないか」

 二人の視線を受け、フォルティナは言った。


「あ、ああ」

「わかったわ」


 シュウマとマリアは各々に肯定の言葉を口にすると、達也に顔を合わさぬまま足取りを合わせ、地下に続く階段へと歩き出す。


「後で私達も向かうから、その時合流しよう」

 フォルティナはその背中へ向けて声をかける。


 二人の姿が見えなくなると、フォルティナは一つの息を吐く。そしてこれ以上何も言うことなく、全身を震わせる達也を包み込むかのように、ぎゅっと抱き締めた。

参考までに「事実」と「真実」の言葉の意味は厳密には異なるのであしからず。

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