夜の足音
夜、近くのスーパー銭湯に行くために薄暗い道を歩いていた。すると後方から足音が聞こえた。振り返って見たが誰も居なかったので、空耳かと思いそのまま銭湯に向かった。サウナに入っていると背後からまた足音が聞こえた。隣に座っていた人に「後ろから足音が聞こえませんでしたか。」と尋ねたところ「いや、何も聞こえないよ。」と答えた。私は不思議に思ったが空耳だと考えそのままサウナに入っていた。
私は銭湯で買った牛乳を飲みながら帰った。すると背後から「牛乳をくれ。」と叫ぶ声が聞こえた。振り返って見ると、サウナで一緒だった人が「喉が渇いた。牛乳をくれ。」と言って倒れた。私は直ぐに牛乳を飲ませて、救急車を呼んだ。その人は一命を取り留めた。後日、その人が御礼を言いに私のアパートに訪ねてきた。なぜ、急に喉が渇いたのですかと尋ねたところ。サウナから出た後に水を飲んだが飲んでも、飲んでも喉が乾き、2リットルのジュースを買って帰路についたが途中で飲み干してしまい脱水症状を起こしたとのことだった。その原因は未だに分からないとのことである。
3日後、私は再び夜にスーパー銭湯へ行った。するとまた足音が聞こえた。私は持っていた牛乳をそこに置いた。すると足音が止まり、牛乳はなくなっていた。脱水症状を起こした人は、2リットルのジュースを買って飲み干したと言っていたが、実は自分では飲んでおらず、この足音の正体にすべて飲まれていたのだ。この足音が何なのかは未だに分からないが、それ以来、スーパー銭湯に行く時は、必ず牛乳を持って行くことにした。(おわり)