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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

朝食で出てきた肉塊について

作者: 宗 由布
掲載日:2026/07/29

 朝食で足が出てきた。

 如希(ゆき)は上半身だけになっていた。


「召し上がれ」


 弱アルカリ性の臭いが強い朝八時のダイニング。

 雑に包帯を巻いた足からは、まだ血が滴り落ちている。

 どこかにノスタルジーを感じる臭いに、思わず何かを吐き出すように口を開けた。


「お前……何を……」


 ん、足を切っただけだよ。

 如希(ゆき)はそう言い、体を傾けて微笑んだ。


 如希(ゆき)はわざわざ車椅子を用意していた。

 車椅子に乗ったあとに自分で足を切ったのだろうか。

 それとも俺が寝ている間に足を切ってステーキにしていたのだろうか。

 もしかしたら誰かに切ってもらったのかもしれない。

 そもそも、痛みはどうなる?


 現実にありえないことを目にすると、人は妄想に襲われるらしい。


「私の足なら食べられるよね?」


 如希(ゆき)の目は至って真剣だった。

 悪夢にも程度というものがあるだろう。

 意味をなさない言葉を叫んで自分の頬を殴っても、やはり目覚めなかった。


 これは現実だ。

 如希(ゆき)の足は切れているし、如希(ゆき)は足を失った。

 そして、その足を俺に食えと要求してくる。


「人間が人間を食べるのって危ないんだよ」


 俺は冷静平静を装って答えた。

 普段の口調より幾段と優しく、震えた声で答えた。

 如希(ゆき)はこちらを淀みない目で見つめ、再度口を開く。


「私は足を切ったんだよ? 食べてくれたっていいじゃない」


 如希(ゆき)は車椅子の肘掛けから手を外し、車輪部分に手を置いた。

 キッチンに向かおうとした如希(ゆき)を、ちょっと待ってくれ、と引き留める。

 如希(ゆき)が何をしようとしているかは明らかだった。


「わかった、食べるよ」


 俺は如希(ゆき)に押されてばかりいる。

 如希(ゆき)のそばは俺以外の誰であっても許せないし、俺は灯篭に篭められた燃え続ける炎のような愛を注いでいる。

 だからこそ、如希(ゆき)を食べないわけにはいかなかった。


「やったね」


 如希(ゆき)は白く魔法をかけるように微笑んで、窓から空を見て言った。

 如希(ゆき)はそのまま、聴覚を失ったかのように俯いて、小さく口を開いた。


「これで私たち、ずっと一緒だね」

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