エピローグ
翌年、帝都では雪解けを待って、アルベリオスとメルティナの婚姻を祝う大規模な式典が催された。
春の訪れを告げる陽光の下、街路には人々の歓声が満ち、祝福の花びらが舞う。
祝いの席には、ツァラやティルファも招かれ、かつては涙で別れた聖女との再会を喜んだ。
「メルン」
皇帝がメルティナに呼びかける。妹分としてそばにいたツァラたちも、耳馴染みのない呼び名だ。
しかしメルティナは、一際嬉しそうに目を細め、「はい」と応えたという。
その晴れやかな微笑みを、彼女たちは目に焼き付け、母国への土産話に持って帰った。
同じ年、ザンドリスでは大きな変革が起こった。
兄王子たちと結託し、リオネッタがマルケスの政権を打倒したのだ。
その後、兄の即位を見届けたリオネッタは、グランフィルド王室へ迎えられると、国内外を問わず女性の地位向上を訴える活動に力を注いだ。
人々は彼女の志と行動力を称え、「革命の小獅子」と呼んだ。
小獅子の躍進は、タルヴァニアにも届き、アルベリオスはその活動を陰ながら支えたという。
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若き皇帝、晩年は賢帝――などと称えられたタルヴァニアの君主は、在位五十年余りで、惜しまれながらその生涯に幕を下ろした。
大妖ベルネルを祓った血統を守るため、多くの世継ぎを望む家臣らの声を押しのけ、彼はその生涯において妃をただ一人しか迎えなかった。
子をもうけてからは、慣習に囚われず、夫婦で子育てに携わり、深い愛情で四人の子を育て上げた。
皇帝が愛したただ一人の妃は、帝国の守り神である聖獣に仕えた女神の一柱であった――と囁かれることもあるが、正確な記録は残されていない。
夫と違い、魔法の才には恵まれなかった妃が、手先の器用さを活かして、工芸の発展に尽力した。
師であるマホロが引退した後は、窯の火を受け継ぎ、数々の名品を世に送り出した。
彼女が得意とした美しい流線形は、メルシャンスタイルと呼ばれ、蒐集家の間で現在も人気を博している。
妃がこの世を去ると、一年も待たずして、皇帝もまた、眠るように息を引き取った。
二つの魂は、空の彼方で再び出会い、連なる星になったと伝えられている。
仲睦まじく寄り添って、かつて暮らした世界と、我が子たちを見守っているそうだ。
そして、こんな話もある。
月のない夜に空を見上げると、二つの星のそばを回るように駆ける、白銀の彗星が現れるそうだ。
耳をすますと時に、くるる……と。我が子に語りかけるような、母に甘えるような、彗星の声が聴こえるという――。
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これにて
「死に戻り聖女は本当の愛をまだ知らない」及び
「死に戻り合った両片思いの二人が、本当の夫婦になるまで遠回りする話」完結です
ナィナが猫に化けてタルヴァニアに遊びに来ていたり、ヴァルが黒曜宮の聖女と意気投合して嫁に迎えたり、ルーヴェントが修道士たちの慰みものになっていたり、死に戻り人生の一角でアズが超子沢山の夜の皇帝だった話を聞いてメルティナが嫉妬してしまったり……だとか。
彼らは物語の中で変わらず息を続けていますが、一旦ここで区切りをつけさせていただきます。
お読みくださり、ありがとうございました!
2026/01/07




