表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

日記と押し入れ

 私は、押し入れに恐る恐る手をかけた。あの日記を初めて開く時と同じような感覚でどきどきする。押し入れの戸を開けた。そこには、

 何もなかった。ただ、鉄が錆びたような臭いを乗せた風がふいた。その風に吹かれ、挟まっていた紙切れがふわりと舞う。中身を見ると、手紙だった。

 

 みのりちゃんへ、

 おしいれに入ったらだめだよ。出れなくなる。お家からも出て。みのりちゃんの事をお母さんはすごく好きだから、わたしみたいにはならないと思うけど、秘密を知ったら私と同じになるかも。この手紙も見つからないようにね。

 お姉ちゃんより


わたしみたいにならない。わたしみたいにって、一体どうなるの。嫌な予感がして、周りを見渡す。お母さんの階段を登る音がやけに大きく聞こえた。…階段を登る音っ。私は急いで手紙をポケットに突っ込んで、押し入れをしめて、部屋の鍵をかけた。お母さんはドアを叩く。優しい声が狂って聞こえる。震えが止まらない。

「みのり〜?出てきなさーい?何か見たの〜?」

何かあったの?ではなく、何か見たの?という言葉選びが余計に恐怖心を煽る。

「なっ何もないよっ」

必死の思いでした返事の声はうわずっていた。私の動揺に気づかれたかも。その瞬間、凄い勢いで鍵がガタガタ動き出した。壊そうとしている。私も負けじとドアを抑える。

「何か見たの?」

「見てないっ!」

「何か見たの?」

「知らないよっ」

「何か見たの?」

「見てないってっ」

「なにかみたの?」

「見てないよっ」

「なにかみたの?」

「なんにも知らないよ!」

「なにかみたの?」

「見てないっ」

ひたすら何か見たの?、と繰り返してくる。全く同じトーンで。同じ声色で。見てないって言ってるのに、何か見たの。

それだけを繰り返してくる。もうバレてるんだ。押し入れを開けた事。でもなんで。あの時お母さんはいなかった。その時、鍵がとうとう壊れてドアに隙間が生まれた。慌てて隙間を閉じる。物を積み上げて抑えつけた。その間も積み上げた物達が揺れる音の中にお母さんの声が混じっている。ここが開いたらやばい。私のお姉ちゃんであろう子が書いていた意味がわかった気がする。そしてあの子がどうなってしまったのかも。わたしと同じになるかも、という手紙の言葉が脳内をぐるぐる回っている。そんなこと、怖すぎる。押し入れに何もなかった。これは押し入れを見たあの子の末路だろう。

とにかく、逃げ道を探さなければ。

 その時、ふと思いついた。何故押し入れの中から風が?

逃げ道は入ったらいけない押し入れかもしれない。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ