日記の中身
ご飯を食べに一階に行く。机にはもう食べ物が並べられていて、美味しそうな匂いが漂ってきている。
「いただきます」
少し硬めのおにぎりを口に放り込んだところで、お母さんが話しかけてきた。
「ねぇ、片づけは進んだ?やっぱり、あの部屋汚すぎるから、お母さんが手伝おうか?」
「平気だよ。私、来年には高校生になるんだし」
「そうねぇ、でも押し入れはお母さんが片づけるよ」
「平気だってば」
「でも、あんたこの家の押し入れ使った事ないでしょ」
「あ、そっかー…。やっぱ頼んでいいですか?」
「じゃあお母さんが片づけるね、中覗いちゃダメだよ」
「はいはい」
私のお母さんは世話好きだ。わざわざあんな部屋の片付けを申し出るんだから。まぁ、子供の頃から見たことのない押し入れを、私が下手に片づけたら余計酷くなるってことがわかってるのもあると思うけど。
「ごちそうさま」
そうこうしている内におにぎりを食べ終わったので私は部屋に戻った。しかし片づけをするつもりはなく、日記の続きを読みに行った。前のページを探して開く。あった。
四月十二日
きのうのしゅくだいを、ぜんぶせいかいだったのは、わたしだけでした。みんなのまえでほめられたので、ちょっとはずかしかったです。おかあさんとおとうさんに、はなしたら、うれしそうにしてました。
ここの、うれしそうに、の部分は幼い字だった。この子の親が書き直したわけでも無さそうだ。後から書き足したのか?
四月十三日
きょうはじゅぎょうで、にっきをかきました。いもうとのことをかいたら、あたらしくできたおともだちも、せんせいもみんな、やさしくしてあげてねっていってました。優しいお姉さんになりたいです。
まただ。優しいお姉さんになりたいです、という所。大人の字だった。なんでわざわざ書くんだろう。
四月十四日
きょうは、はじめてのテストがありました。さいごのもんだいを、まちがえてしまいました。クラスで100てんじゃなかったのはわたしだけだったそうです。おとうさんもおかあさんもおこらなかったけど、いもうとは、いえにいるのに、あえませんでした。ざんねんになっておこったのかな。
四月十五日
きょうは、がっこうで、はっぴょうがうまくできました。きのう、あえなかったいもうとは、きょうはあえました。
何故同じ家に居たのにこの子は妹に会えなかったのだろう。どこかに預けられていたのだろうか。不穏な空気が日記からしてきたが、手を止められなかった。