日記を見つけた
私は引越しの準備をするために、今荷造りをしている。二人分はあるんじゃないかと思うほど広い部屋には物が山積みで埃っぽい。こんなことなら普段から片づけとけば良かったなぁと、しみじみ思う。どこから手をつけようか迷うところだが、まずは机の上かなあ。本を床に下ろして積み上げる。机の中のものもすべて出して選別しないと。紙の束を数個出したところで、中のものが奥に抜けて落ちてしまった。ありがちで最悪のパターンがきた。仕方がないから取ろうと手を伸ばしたところで、懐かしいものを発見した。小さい頃の日記だ。こんなの持ってたかな。日記は記憶になかったが、中に書いてある内容は覚えのあるものばかりだった。そういえばこんな日記持ってた気がするなー。と思えてきた時、最後の方のページがずるっと落ちた。壊れたかと思ったが、前に切り離した後がある。何故だかわからなかったが、どきどきしてきたので、一ページ目を開いた。
三月三十日
きょうは、ひっこしをします。おともだちとはなれるのはさびしいけど、おわかれかいは、たのしかったし、あたらしいところはたのしみです。
幼い字で書いてあるのは普通の内容。しかし、引越しなんて今回以外にしたっけな。親族の誰かのやつのおさがりかも。
三月三十一日
あたらしいおうちにつきました。まだおおきいはこが、いっぱいあるけど、もうすぐなくなるんだって。
四月一日
わたしのへやにあたらしいふとんがきました。あったかくていいにおいです。
その後も引越しの後片付けが進んでいく様子が書かれている。同じようなことばかりだったので数ページとばしたが、あるページで手を止めた。
四月二十一日
わたしにいもうとがきました。わたしがショウガクセイになるときにうまれるんだって。たのしみだな。
さらにページをとばす。書いている人の妹がくる時まで。
二月二十五日
いもうとがうまれたそうです。写真でみたけど、ちっちゃくてびっくりしました。
四月十日
きょうはにゅうがくしきです。あかちゃんのいもうとをおかあさんがだっこして、いっしょにしゃしんをとりました。
あれ?日にちがとんでる。まぁ書くのをサボっただけだろう。えーと次は、
四月十一日
はじめてのじゅぎょうです。ひらがながじょうずだって、せんせいにほめられました。嬉しかったです。
ここでもあれ、と思った。嬉しかった、のところだけが大人の字で書いてあったからだ。なんだかもやっとしたが、続きを読むのはご飯を食べてからにした。