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ファンタジーからは逃げられない  作者: 極上トマト
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第二話 目覚め

 俺はゆっくりと目を開け、永い眠りから離れた。

 見慣れない天井だ。


 俺が突然の出来事で困惑していると横に母と父の姿があることに気が付いた。


「母さん?今、俺達はどこにいるんだ?」


「廉ちゃん、目が覚めたのね。ほんとよかったわ。ここは病院の中よ」


「廉、お前は本当に運がいいな。」


 お母さんの言葉によって俺はここが病院だということに初めて気が付いた。

 あたりを見回すために体を起こそうとしたその時


痛ってー!


体に激痛が走った。


なんだこの痛み尋常じゃないぞ。体を起こそうとしたらそのたびに闘牛に突進されているかのような感じがする。


「廉ちゃん、そんな無茶しないで」


「母さん、父さん、一体何が起こったんだ?」


「廉、お前、本当に覚えていないのか?」


いや、覚えていないわけではないけど、一度死んで変なところ飛ばされているから確証が持てないだけなんだけど・・・まぁ、言っても信じてくれるわけないよな。


「なんか、全く記憶にないんだ。」


「そうか、廉、お前はトラックにひかれたんだ。」


あ~、やっぱりか。トラックにひかれたところまでは現実なのね。はいはい。何となくわかってきた。

ということはフィエロ様が俺が死んでいないという感じに世界を改変したという認識で正しい気がするな。


「廉、お前、あまり驚ないんだな。」


「え、あっ、うん、何となくそんな気はしてたから。ところで俺がどこ怪我したかわかる?」


「え~っと、確か腰椎圧迫骨折と足の骨が折れただろ。あと確か肋骨も折れていた気がするな。当分はここから動くこともできないと思うぞ。」


どうやら、フィエロ様は怪我までは改変してくれる余裕はなかったみたいだな。もしかしたらわざとかもしれないが、まあこの際生きていたことに感謝しよう。時間も結構遅くなっているみたいだし。二人には帰ってもらうか。


「わかった。二人とも時間も時間だからそろそろ家に帰りな。俺は大丈夫だから。」


「そうね。もう結構時間がたつし、帰るとするわ。」


「また来るからな。」


「わかった。入院代わざわざありがとう。」


「何を言っているんだ?いずれ返してもらうにきまっているだろう。」


二人が立ち上がり部屋から出ていった。


まずい、余計なことを言ってしまったかもしれない。まあ、親に負担をかけさせるのも良くないからな。いずれは返せるようになりたい。とりあえず、今は怪我を治すことだけ考えよう。と言いたいところだけどそんなすぐに治るはずもないんだから、神様からもらった能力をチェックするとしようか!


「ステータス」


俺がそういうと目の前にA4サイズほどの大きさの板?のようなものが現れた。


フィエロ様とロイド様に会ったときに見たことはあったけど、改めて見て見ると現実に存在しているとは思えない。正直フィエロ様達と会ったのは夢の話だったらと心配していたがそんな心配はいらないかったみたいだな。


俺は落ち着いている風を装っているが胸の高鳴りを抑えることができなかった。

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[名前]小林 廉

[年齢]23

[身長]158

[レベル]1

[力]10

[知力]20

[速さ]8

[防御]5

[魔力]0

[ユニークスキル] ダンジョンマスター  

[スキル]鑑定

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このスキルってのはどうやったら発動することができるんだ?ただ名前を言えばいいとか?それとも頭の中で念じたりすればできるのか?

ちょうどいいし、そこにある机を()()

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[名前]病院の机

[説明]四つの支柱によって支えられている机

   花瓶などを置くときによく使われている

--------------------------------

なるほど鑑定は心の中で念じればいいという感じか。もう一つのダンジョンマスターっていうのはなんだ?

そういえば、神様が俺に授けるって言ってたのはステータスだったよな。ということはそれ以上かそれ以下のスキル。まあそんなことは発動してみればわかるはなし。


「ダンジョンマスター」


『スキルの使用を確認しました。ユニークスキルダンジョンマスターを起動します。』


うおっ!これが俗にいう天の声というやつか?なんというか本当に感情のこもっていない声をするんだな。


『現使用者の小林 廉をダンジョンマスターに指定します。』


はいはい、皆さん、私は今、ダンジョンマスターとして天の声に認められました。これほど素晴らしい日は未来永劫訪れることがあるんでしょうか?いやある。

まあこんなことは置いといて、毎回毎回天の声というのも疲れるから名前を付けたほうがいいよな?


『はい、その方が効率がいいように見受けられます。』


そうか、とりあえず今は名前を付けることが最優先だな。そうだなじゃあさくらとかはどうだ?


『私には性別が無いのでどちらか一方の性別に偏った名前を付けるのはよろしくないように見受けられます。』


そうか、そういうのは名前を考える前に行ってほしかったんだが・・・

俺は1から天の声の名前を再度考えた。

そして

長い熟考の末


「よし、決めたぞ、天の声の名前はゆずだ。」


『ゆずですか・・・素晴らしい名前ですね。マスター、ありがたく頂戴いたします。』


名前も付けることができた。他に何かできることはあるかなと思ったけれど、今の状態じゃ鍛えることもできなさそうだし・・・そうだ!ゆず、今の俺ってなにした方がいいと思う?


『そうですね。現状は身体の損傷が治るのを待ちましょう。今の普通の体の状態ではできることもできないので、今のうちに筋肉をつける事そして可動域を広げられるようにしていきましょう。今、ダンジョンを作ったところで意味がありません。』


俺はしぶしぶ首を縦に振った。

せっかく、能力を手にしたっていうのに使わしてくれないのもどうかと思うがゆずの言うことは正論そのものなのでぐうの音も出ない。

あ~、やることないし、寝るか!

俺はベッドに横になった。外も暗くなっていたこともあり、俺はすぐに眠ることができた。


それから三か月俺は入院生活をそれなりに充実に過ごした。

まず、松葉づえ生活になるまで一ヶ月かかった。それまでの間はゲームしたり、本を読んだり、自分の思いつく限りのことをして暇をつぶした。それと幸い、話し相手のゆずもいた。ゆずに聞くと知らないことをなんでも教えてくれる。ritaの超上位互換みたいな感じだった。

そんなこんなで何とか一ヶ月を乗り越え、松葉づえ生活が始まった。そこから俺の筋トレ、リハビリ地獄が始まった。もちろん専属トレーナーのゆずという方の厳しい指導が始まった。


『まずは腕の筋肉をつけましょう。まずは腕立て伏せを100回、これをまずは一週間です。他に鍛えられるの部位は存在しないので今は腕立て伏せだけにしましょう。右足だけのスクワットだとバランスが崩れてしまうかのせいもあるので今のところはそれだけにしましょう。』


専属トレーナーからのありがたいメニューを頂き俺は腕立て伏せを開始する。もし少しでも自分を甘やかすようなことをすると・・・


『腕の曲がりが浅いです。ギリギリまで腕を曲げてください。そうして1とカウントできます。あと残り78回です。このままだと陽が沈んでしまいますよ。』


とこのようにお叱りの声が聞こえてくる。例え耳栓をしてても防ぐことはできない。脳内へ直接話しかけてくる、防御不能な音波攻撃が俺の頭の中を響いてくる。


それにしても、この筋トレメニューきつすぎるだろ。


結局、筋トレメニューが終わるまで約二時間程かかった。

体からあふれんばかりの汗が俺の体を垂れていくのが肌で感じられていた。

陸上で1500m走った時以上に疲れた気がする。それにしてもここからリハビリか・・・!

俺はあることに気づき、自分の体の匂い、体臭を確認する。

なんか、ちょっと臭い気がする。大丈夫か?もしかしたら看護婦さんに陰で「なんか、廉さん臭くないですか?」とか言われたりするかも!?でも風呂に入るのも時間がないし、しょうがない臭男というあだ名をもらいに行くか。俺は松葉づえで体を支え、病院のリハビリ室へと亀みたいにとことこと歩いていった。

二、三ヶ月の間ほぼこんな地獄の生活が続いた。そのかいあって身長こそは伸びはしなかったけれど体重は増加し、筋肉もわりかしついた。

そして、今日は俺の退院日だ。と言ってもちょくちょく家に帰っていたから、実際に言えば退院ではなく、完治だけどな。そこらへんは、まあ大した違いではない。


「看護婦の皆さん、今までありがとうございました。」


リハビリに付き合ってもらって、申し訳なかったし、菓子折りを届けに来たんだ。


「いえ、それよりも廉さん、三か月前に比べて随分かっこよくなりましたね。」


確かにかっこよくなったがイケメンにはなっていない。顔もそこまで変わったわけではないが雰囲気が変わったんだと思う。恥ずかしい話だが自分自身でもそう思う。俗にいう雰囲気イケメンだ。どうにかして顔を良くなってくれないかな。まあレベルアップ特典に期待だな。



俺は逃げるようにして病院の外へ出た。

それにしてもこの三か月は今までで最も濃い三か月だったかもしれない。

俺は病院の方を向いた。

なんだかこの病院にはもう一度お世話になるような気がした。


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