始まり
最近はどこに行こうにも便利で文明の利器というのは本当に素晴らしいと思う。
今、こうして電車に乗って移動しているのも、先人の人たちの努力の賜物だと思うととてもありがたく感じる。
俺は今日、ついにDPが溜まったので新しいダンジョンを別の場所に作りに行こうということで今度は渋谷に作ってみようと思っていて、今日はその下見という感じである。ちなみにピースも誘おうとしたんだけど今日は用事があるという風に言われてやんわりと断られてしまった。ため今日は一人で寂しく行こうということでジーパンに白Tという地味なのか地味じゃないのかわからない微妙なラインの服を着て今渋谷に向かっている。はたから見ればきっとオタク君が頑張って渋谷でカードか何かを買いに来ているんじゃないかという風に思われているだろう。
俺が電車の中で電車の揺れに合わせてゆらゆら揺らいぎながら、少し暇だなと感じ、広告を見ながら時間を潰していると一枚の白い手紙が物置のところに置いてあるのが見えた。普段置かれるはずがない白い紙が置かれていて、俺は思わず手に取ってしまった。
そこに書かれていたのは
『神に仕える救世主ここにあり』
とだけ書かれていた。
俺は少し疑問に思いつつ、手紙をもとの場所に戻そうとすると爆発音が響き、そして電車が急ブレーキしたかのようにいきなり止まった。
俺は慣性の法則で倒れそうになっていたが何とかつり革を掴んでいたので転げる事が無く済んだが周りを見渡すと倒れている人たちもょこちょこと見かけられていた。
俺がどうすることもできず、何もすることができないままでいると前の方から人が雪崩のように押し寄せてきた。
「爆弾だ!早く外に出ろ!」
と叫んでいる声と共に叫び声が聞こえてきた。
俺はその叫び声を聞き、目を覚ますかのように座席の下のやつを引いて、ドアを開けて、いち早く外に出て、前方の方を確認しに行った。
すると電車の線路が爆破されていてそこから脱線をしたようだった。
俺は車掌さんの安否を確認しに行くと電車の脱線を見守るかのように立っている男を見つけた。
男はフードをかぶっていて、明らかに敵のような雰囲気をかもしだしていた。
こいつっ!絶対に敵じゃねえか!どうしてわざわざそんな見た目で外に出ようと思ったんだよ。そんな、目立つ格好をするくらいなら一般人に紛れ込んで爆破した方がよかっただろ。しかも日本でテロのようなものが行われるとは今までに聞いたことがなかった事例だ。
このままでは俺にも危害が及ぶ可能性が出るし、今のうちに敵の素性ぐらいは探っといた方がいいだろう。
俺はそう思い、フードをかぶった謎の男に話しかけに行った。
「すいませーん」
俺が大声で話しかけると火の玉のようなものを俺の方へ向けて飛ばしてきた。
俺は間一髪のところで体を倒して避ける事ができたがそのまま突っ立てでもいたら俺は今頃丸焦げになっていた。
俺が男の方を見ると男は走って踏切の方へ逃げていった。
「おい!待てよ!」
俺は男を追いかけたが既にある程度の距離があり、すぐに都市の中へ姿を消していこうとしていた。
俺はこのまま追いかけても無駄だと思い、せめてでもと思い、あいつに鑑定をした。
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[名前]東雲桃李
[年齢]20
[身長]179
[ユニークスキル]
[スキル]火魔法
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男はスキルを持っていた。
これがどういうことを意味するのか、それはダンジョンの危険性が問われるということである。
もしこのことが公になったとしたらダンジョンが一般人の方々に利用されず、DPの貯まる時間が短くなっていく、そうするとスキルが獲得できなくなる。それは俺にとって最も重要な問題である。
つまり、こいつは今この瞬間俺らの敵になったということだ。
「絶対にお前らの目的だけは阻止してやるからな。」
「あの~お話伺ってもよろしいですか?」
後ろから声が聞こえてきた。
俺が振り返るとそこには警察がいた。
「あっ、はい。大丈夫ですよ。」
「この爆破の時どこにいらしたんでしょうか?」
「あっ、私は電車に乗っていましたね。それで爆破が起きて、急いで外に避難して、車掌さんの安否を確認しに行こうと思ったら黒いフードのやつがいたのが見えたので追いかけようとしていました。」
「黒いフードの方ですか。その方が犯人であるという確証はあるんですか?」
「あっ、いやとくにはないんですけど、いきなり逃げ出したので」
「そうなんですね。持ち物検査させて頂いても?」
「あっどうぞ、確認してください。」
俺は荷物を警察の方々に差し出した。
多分、これ俺犯人だと疑われている感じだ。
「もしかして私が犯人だと疑われていたりしたりしますか?」
「いや、特に持ち物も危ないものはなさそうだし、犯人だと疑われることはないと思います。じゃあ、他の警察の誘導に従って避難してください。」
「わかりました。あっ、そうだ。そういえば電車の中に白い手紙のようなものが置かれていました。」
「白い手紙、どこら辺にありました?」
「多分、4、5号車の後ろの方の物置の上に置いてありました。」
そういうと俺は他の警察の方に誘導されて、一個隣の駅まで歩いていった。
結局その日は渋谷まで行くことができず、ただただ駅で4、5時間足止めされて、家に帰る頃にはもう日が暮れていた。俺が帰った時にはニュースであの爆破事件が報道されていた。
「今回の犯行は救世主というテロ組織が起こしたものであると考えられており、現在も調査がされています。またテロが行われた電車の車内には犯行文と言われるものが発見されています。」
かなりの大事になっているけれど、あれだけの大きなテロだったけれど死人が現れなかっただけよかったよな。
「すごい大変な事態になっていますね。」
俺と一緒に見ていた奏が話しかけてきた。
「ああ、しかもこのテロ組織、ダンジョンの中に入って能力手に入れていると思う。」
「本当ですか?もし、そうだったら大事どころの騒ぎじゃないですよ!死人が出ますよ。」
「あら~奏ちゃんどうしたの?いきなり大声なんか出して」
「いや、あの」
「音楽の話をしてたら思った以上に盛り上がってカブトムシsは良くないって言ったらいきなり怒り出してきたんだ。」
「何?そのビートル?あたしも昔よく聞いていたわよ。いいわよね。」
「いいですよね。」
「盛り上がるのはいいけど、ほどほどにしてね。あたし、もうすぐ寝るから」
「ごめん、お母さん」
お母さんが部屋に戻るとインターホンが鳴った。
こんな夜中に誰だよと思いつつも俺はドアを開けた。そこにはスーツを着込んだ男性がいた。
「夜分遅くに申し訳ありません。警察の橋田と申します。先日の事件について事情聴取をさせて頂きたいと思っているのですがよろしいですか?」
なんとスーツを着込んだ男は警察であった。まあさすがに予想できていた。
今まで普通に暮らしていた男の元へいきなりスーツを着込んだ男が来たらそれはもう連帯保証人の借金取りか警察である。
俺は友達という友達はいたにはいたが大学入学後からは一切連絡を取っていない、ましてや大学生活でも仲の良い友人は作ることができなかった。つまりこの時点で借金取りは消えた。そして警察という結論に至る。
「はい、大丈夫ですが?」
「では、ここで事情聴取というのは難しいので署までご同行お願いします。」
署!?
さすがに警察署までご同行されることは想像していなかった。が俺が今否定したとしてもさっき了承されていましたよね。言質は取れています。とか言われて無理やり連れていかれるんだろう。ならばもうここはおとなしく警察のお世話になりましょう。
警察の方はまるで俺に仕えている執事のように車のドアを開けてドアの取っ手を支えてくれていた。
これが高級車だったらさぞ気分が良かったと思うが残念ながら今から乗せられる車はパトカーなのである。はたから見ればこれから堂々と気分よく捕まりに行く馬鹿野郎という風に思われるだろう。と思いながら警察に会釈をしてパトカーに乗った。
俺は数分間パトカーの中で他の車が道を開けていく姿を見ながら心の中で優越感に浸っていた。
普通なら20分間かかるであろう道がものの数分間で警察署までついてしまった。
警察の人に一つの犯罪者が事情聴取されるような部屋に案内された。
きっとこの壁のどこかがマジックミラー号みたいになっているんだろうな。
と壁をまじまじと見ているとガチャという音とひとりのしょぼっちいおっさんが入ってきた。
「おう、坊主、席に座れ。事情聴取するぞ。」
俺はおじさんに言われるがままに席に座った。
「よし、まず正直に答えてくれ。お前が電車を爆破した犯人なのか?」
「違います。」
「わかった。じゃあまずお互いに自己紹介しようじゃないか。俺の名前は滝藤 正義。まあ名前からしてわかるが根っからの正義の警察だ。次はそっちだ」
「あっ、小林 廉と言います。たまたま電車に乗っていて、たまたま一番早くに外にでて、気づいたら犯人にされていました。」
「なるほど、それはかわいそうだ。まあお前を犯人だとははなから思っていない。普通に簡単な質問からしていくぞ。」
そこからなぜあの電車に乗ったのかなど基本的なことを聞いてきた。
「なるほど。別に怪しい部分はないな。」
滝藤さんは壁に向かって合図を送った。
「よし、じゃあここからはこの世で俺とお前と壁の向こうにいる奴だけしか知らない情報となる。つまり俺が暴力を振ったとしても証拠にならない。」
俺は滝藤さんの話に聞いて唾をのんだ。
「・・・まあそんなことはしない。本当の質問だ。あの時電車に降りたとき何を見たのかを教えてくれ。「俺は何も」ここの電柱に何かが燃えた跡があった。そしてこれは前日にはなかった。つまりこれはあの爆破が起こった日に何かが起こってこの跡がついたということだ。さあ、ここまでをふまえて坊主に聞こう。あの時何が起こった。」
ここまで証拠が残っていたら言わない方が怪しまれるかもしれない。
「僕はこのことを言うと逆に怪しまれると思い、今まで言っていませんでした。あの時、電車に降りたとき一つの人影を見ました。私はそいつが犯人だと思い、そいつの後を追って線路を走りました。そしてその後あいつがこっちに振り返って火の玉のような物をこっちに向かって飛ばしてきたんです。僕はこのことが起こってパニックになっていると人影が消えていたんです。」
「よし、情報提供ありがとう。今日はこれでおしまいだ。これでお前が犯人であるということはなくなった。他の警察に家まで送ってもらえ」
そう言って滝藤さんは部屋を出ていき、入れ替わりでで俺を連れてきてくれた方が入ってきた。
「では、私が家まで送らせて頂きます。」
俺は行きと同じようにパトカーのサイレンに包まれて家へ帰っていった。
今日は本当に多忙な一日だった。時計を見ると針はもう十二時を過ぎていた。




