表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

15話:帰宅途中の胸中(早見さん視点)

(早見さん視点)


「ふんふんふ~ん♪」


 私は鼻歌を歌いながら自宅へと帰っている途中だった。


「ふんふんふ~ん……って、うん?」


 その途中に私は大きなショーウインドウを見つけたので一旦立ち止まってみた。


 そして私はそのショーウインドウを鏡の代わりにして髪の毛を触りながら自分の姿を確かめてみた。そこには綺麗な茶色のウェーブヘアになった私の姿が映し出されていた。


「ふふ、本当に凄いなぁ……それにこんなにも綺麗にセットもしてくれて……本当に名瀬君と綾子さんには感謝だよ」


 正直な話、私は今まで自分の髪型についてはそんなに大きなこだわりみたいなものは持っていなかった。だって子供の頃からずっと黒髪のセミロングで後ろに髪を束ねる“ポニーテール”か、左右に髪を束ねる“おさげ”スタイルの髪型しかやった事がなかったしね。


 そんな私がこんなにも綺麗な茶髪のウェーブヘアにヘアチェンジをするだなんてさ。ふふ、こんなの昔の私からしたら絶対に想像もつかない事だよね。


「すっごいなぁ……ふふ、ユウ君に見せたらどんな反応するんだろう……?」


 という事で私は幼馴染がどんな反応をしてくれるのかを想像して心を浮き立たせていた。彼は私の生まれ変わったこの姿を見たらどんな反応をしてくれるのだろうか?


―― へぇ、凄い似合ってるな! めっちゃ綺麗だよ!


 はは、もしかしたらそんな感じで私の事を褒めてくれるかもしれないよね。でもそんな嬉しい言葉を投げかけてきてくれたらさ、私は笑いながらこう言い返してやるんだ。


―― でしょー? ふふん、こんな良い女を振った事を後悔するなよー? あはは!


 と、ニコニコと笑いながらそう言ってやろうかなってさ。まぁでもユウ君って女心とか全然わかってないからそんな嬉しい言葉を投げかけてくれる可能性はかなり低そうだけどね。いや、というかもしかしたら……


―― えっ!? どうしたんだよその髪? んー、でも俺は前の黒髪の方が好きだったけどなー


 なんて感じで女心を全くわかってないような発言をしてくる可能性も十分ある……ってか何ならこっちの方が言ってくる可能性は高い気がする。


 だってユウ君って結構天然な所もあるから無自覚にデリカシーのない言葉をぶっ放してくる事も多々あるし。まぁでもそんなデリカシーのない事を言い放ってきたらこう言い返してやるさ。


―― えー、何よそれ? 黒髪の方が良いってそれどうせ彼女の篠原さんが黒髪だからでしょ? 全くノロケ話なんかしないでよー?? なんてね、あはは!


 と、ニヤニヤと笑いながらそんな感じの軽口でも叩こうかなぁ……なんてね。ふふ、まぁでも私にとっては別にユウ君の反応は正直どっちでも良いんだ。


「さてさて……ユウ君はどんな反応をしてくれるのかな?」


 だって別に私はユウ君に“似合ってるね”って言われたくて真っ先にユウ君に見せに行こうとしてるわけじゃないんだから。


 私が髪色と髪型を変えたのを真っ先にユウ君に見せに行く理由はただ一つ。それは私の初恋をちゃんと終わらせるためだ。


 ……いや、まぁつい先日にキッチリとユウ君には振られたんだけどさ。でもあの時はユウ君が帰って行った後に私は最後の最後に泣いてしまったから。


 そしてあんな悲しい気持ちを私の心の中に残したままでは……きっと私はユウ君との関係を今まで通りに戻す事なんて出来っこないんだ。


 だから私はもう一度、ユウ君とは幼馴染として……ユウ君とは恋人にはなれなかったけど、それでも仲の良かった友人として元に戻るためにも、私は彼と一緒に笑い合ってこの恋を終わらせなければならないんだ。


「それにちゃんと失恋をしないとさ……きっと私は前に進む事は出来ないと思うしね……」


 だから私はユウ君に新しいこの姿を見せて“似合ってるね”って褒められたとしても、“いや前の方が良かったのにな”って残念がられたとしても……私にとっては本当にどっちでも良かったんだ。


 だってどっちの反応をされたとしても、私はきっとあははと笑いながらユウ君と話せるはずだから。そしてそれがきっと……私にとって失恋を受け入れられた証となるはずなんだ。


「ふふ、楽しみだなー! 待ってろよー、お前の度肝を抜かしてやるからなー!」


 という事でショーウインドウで自分の姿を確認し終えた私は楽しい気持ちを抑えることが出来ずに鼻歌を歌いながら自宅へと帰って行った。


 そしてようやく……私は今日この後、10年近くも続けていたこの初恋をようやく終わらせる事が出来るんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ