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13話:イメージチェンジ

 それから数分後、俺達は綾子が働いている美容室に到着した。


 早速美容室に入ると綾子が笑顔で出迎えてくれた。


「いらっしゃい、二人とも」

「おう」

「あ、えぇっと……お、お邪魔し……ます?」


 早見さんは少し緊張しているようだった。 いや緊張する理由はわかるんだけどさ。 だってこの美容室って……


「え? あ、あの、えぇっと……こ、ここ、私には場違いじゃないですか?」


 だって綾子が働いているこの美容室は完全予約制で、料金設定も少しばかり高めの大人向けな美容室だったからだ。 高校生には敷居が若干高く感じるかもしれない。


「ううん、そんなことないよ。最近は学生さんも結構来てくれるしね」

「え? あ、そ、そうなんですか。 あ、ということは名瀬君も?」

「いやそれが太一は恥ずかしがって全然来てくれないのよ」

「高校生にもなって綾子の店に髪を切りに行くのは流石に恥ずかしいだろ……」


 そんなわけで俺はいつも家で鏡を見ながらテキトーに自分で切っていた。 まぁ切ってる途中で綾子に見つかってそのまま綾子に髪を切られる時も多々あるんだけど。


 ということで俺達は美容室の中に入ると、そのまま待合席の方に座らせて貰った。 そしてそこで今日のメニュー内容を一つずつ確認して行った。


 メニューを一通り確認し終えた後、早見さんがとある事を思い出してそれを綾子に向けて喋り出した。


「あ、そういえば綾子さんってこのお店の店長さんなんですよね? とても凄い方だったんですね!」

「あはは、そうでもないよ、私はただの雇われ店長だしね。 本当に凄いのはここを経営してるオーナーの方だよ」

「あ、オーナーさんが他にいるんですか?」

「うん、私の学生時代の先輩なんだけどね。 このお店以外にも色々とお店を経営してる敏腕な経営者なんだよ」

「へぇ、そうなんですか! そんな凄い先輩がいらっしゃるんですね」

「うん、本当に凄い先輩だよ、あははっ! 学生時代はずっとヤンチャしてた先輩なのに本当に凄いよね!」

「え!? あ、そ、そうなんですね、あはは……」

「ちなみにそのオーナー今でも見た目は120%でヤンチャしてるからな。 綾子なんて可愛く見えるレベルでかなりイカつい人だからな」

「え゛!?」


 俺も当然だけどそのオーナーとは面識はある。 俺が子供の頃に時々家に来てくれて一緒に遊んでくれた人で、性格は割と優しいけど怒るとドチャクソ怖いという大人のお姉さんだった。


「あーあ、太一が陰口言ってたって先輩に今度言っとくわ」

「い、いやそれは勘弁してくれ!」


 あのオーナーに怒られるの未だに怖いんだからそんな事をチクるの止めてくれ……


「あ、それで、太一はどうする? せっかくだから一緒に髪でも切ってく?」

「いやいいよ。 早見さんのが終わるまで俺はテキトーに外ぶらついてるから。 終わりそうになったら連絡くれ」

「そう? わかった」

「じゃあ、またあとで早見さん」

「あ、う、うん。 そうだよね、名瀬君を待たせないといけないこと忘れてたわ……」


 本当にうっかりしていた、というような顔を早見さんはしながら申し訳なさそうに俺に言ってきた。


「いや別に気にしないでいいから。 早見さんがどうなるのか楽しみにしてるよ」

「あ、う、うん。 ありがとう」


 そう言って俺は一旦美容室から出て行った。 まぁ都心だし時間を潰す方法なんて幾らでもある。 俺はそう思いながら駅前の方へと戻った。


◇◇◇◇


 美容室から数時間が経過した。 綾子からもうそろそろ終わると連絡が来たので、俺は美容室へと戻った。 そしてそのまま待合席に座っていると綾子と早見さんの声が聞こえてきた。


「はい、完成! 良い感じじゃない?」

「うわぁ……! 凄いですね!」


 どうやらちょうど終わったようだ。 それから数分後に待合席の方に向かってくる音が聞こえてきた。 もちろんそれは綾子と早見さんの足音だった。


「お、帰ってきてたね。 ちょうど終わったよ」

「え? あ、お、おかえりなさい……」


 俺は早見さんの姿を見た。 要望通り少し暗めの茶色いヘアに変わっていた。 それだけではなく、ヘアスタイルにもアレンジが加えられていた。


 ここに来る前の早見さんはストレートヘアだったけど、今の早見さんは毛先をアイロンで巻いてあげてゆるふわのウェーブヘアになっていた。


 先ほどの黒髪ストレートヘアから一転して、茶髪のウェーブヘアになった事で印象も変わって見えた。 先ほどよりも少し大人っぽい雰囲気が出ている気がするんだけど、でもその雰囲気が意外にも早見さんに似合ってるなと俺は思った。


「どう? 太一も感想言ってあげなよ」

「……え? あ、あぁ、えぇっとその、うん、とても似合ってるよ」

「あ、ほ、本当?」


 俺は少しどもりながらそう答えた。 そんな俺のあたふたした姿を見ながら綾子は笑っていた。


「あはは、ほら、言った通りだったでしょ? 沙紀ちゃんはどんな髪色でも似合うってさ」

「は、はい」

「あとはこのヘアアレンジだけど家でも簡単に出来ると思うから、良かったらやってみてね。 家にヘアアイロンはあるよね?」

「あ、はい、あります」

「うん、じゃあ後でわかりやすいやり方の動画を沙紀ちゃんのLIMEに送ってあげるよ」

「え? いいんですか!」

「いいよいいよ。 って言ってもyo〇tubeにあがってる動画だけどね」

「はい! あ、じゃあ、他にも気になる事とかあったら質問とか送っても大丈夫ですか?」

「うんうんいいよ! 沙紀ちゃんならいつでも大歓迎だよー」

「ありがとうございます!」


 早見さんと綾子はいつの間にかLIME交換をしていたようだ。 たったの数日でこの二人の仲はとても良くなっていた。

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