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My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
魔門
9/39

激動

#another side


〈カッカッカッ〉


軽快な蹄の音を鳴らしながら

ベイカーはミザリー、レオから離れ周囲の探索を開始した


ルベリオから聞いた話によると、悪魔の集団と共に目撃されている人物


ローブを被っているとの情報以外は全くの謎だが、万が一悪魔の集団との関係があるとすれば事である


この悪魔の出没が人為的に行われている可能性も含め何か手がかりを掴まなければ、事態は公国へどんな被害をもたらすか


そんな責任を感じながらベイカーは周囲に目を走らせる


「あの2人なら大丈夫だろうけど…良く考えたら謎の人物自体は危険じゃないのか?…まぁ、逃げるなり時間稼ぐなりぐらいはできる…いや、やって見せる!」


なんとも頼りない決意を胸にベイカーは

森林帯へと踏み込む


念の為にと、馬から降り目立たない所に手綱を括りつけた


蹄の音で逃げられる恐れもある


探索と言ってもベイカーには多少なりとも推測できるものがあった


「(謎の人物が目撃されているってことは、少なくとも悪魔の集団から遠い距離にはいない。悪魔がその人物の作為的な出現だと仮定すれば、悪魔と公国の兵士との戦闘の様子を見て取れる位置にいると見て間違いない。場所的に周囲一帯が平坦な場所であるから高所からでない、尚且つ目立たない場所としたらこの森林だ。)」


そう推測したベイカーはミザリーらの戦闘域から一直線にではなく、迂回してこの森林帯へとやってきた


少しずつ、集団へと目を配り音にも注意しつつ前進を始める


幸いというか、多少の足音や雑音は

ミザリーらのいる戦闘域から聞こえる銃声や悪魔の断末魔が届くおかげでかき消されていそうだ


十数分も前進していると視界の先に

黒いものが、人影のようなものが見えた


「(っ!いた!)」


立ち止まり注視すると

それは黒いローブをまとった人物だと分かった


ベイカーの予想通り

木々に身を潜めながらミザリーらの戦闘域へと顔を向けている


「(男性かな…にしてはちょっと細身、女性っぽいかな?…身長は僕と同じぐらい…170とかかな。ローブのせいではっきりとは分からないけど)」


1度静止し、とりあえずその距離からその人物の様子を伺う


向こうはベイカーに気づいている様子はない

ひたすらに戦闘域に視線を注いでいるようだ


「(周りに…馬はいないかな?少し離れたとこに繋いでるとかかもしんないけど。何にしても戦闘が終わるまでこうしてるつもりなら、こっちとしては好都合だな)」


というのも、ミザリーやレオならば戦闘は問題なく終えることができるというのは想像に易い


いかにこの人物が素早く逃げようが

ベイカーが指笛で所在を知らせれば2人は馬に飛び乗り駆けてくるだろう


位置を2人が把握するまでベイカーが追いかけていれば2人との連携で捕縛は難しくはないと思われた


「(もう少し…近づいておくか。戦闘が終わった2人に合図を送って…ん?)」


今まで、ミザリーらのいる戦闘域を注視していたローブの人物


視線を動かしこそしないが不意に懐へと手を伸ばした


懐を探り、そして何かを取り出した


草陰で何かは見えないそれを

ローブの人物はゆっくりと持ち上げるように胸の高さまで掲げた


ベイカーからの視線を妨げていた草陰を

越えるように掲げたそれをベイカーが認識した


それは


「(あれって!…まさか!)」


木陰の中、ほの暗い程度の中では

紛れることもできぬ


黒より暗い、闇より深い


漆黒の箱だった



_________________


# misery,s side


『ふっ…とべってね!』


〈メギィッ!!〉


ミザリーの蹴りがもろに入った悪魔が言葉通り吹っ飛ぶ


そして、その先には


〈ギィンンンッ!〉


両断されたように

レオが剣撃でもって待ち構えていた


数十いた悪魔も先程ので最後の一体


特に際立った個体がいた訳でもない

2人が苦することもなく、十数分でかたがついた


「ベイカーは大丈夫かしら?今どこに…」


息切れひとつも無くレオが辺りを見回す


『んーー?なにかあったら指笛でも鳴ると思うんだけど…便りが無いのは無事の知らせって奴かしら』


ミザリーも次いで右手で目の上に日除けをつくりながら

同じく辺りを見渡すと


『ん…?』


見えた、訳ではない

だがミザリーとレオの耳に入ってきた音がある


それは木々の枝が手折られるような音


ということは森林帯のほうかと辺りをつけ、2人が揃ってそちらに視線を移す


『あっちか…』


「みたいね」


徐々に大きくなる木々の折れる音


やがて


〈バキャッ!!〉


と開けた場所へ転がるように飛び出したきた人影


それは


『…ビー?』


「…ベイカーね」


慌ただしくこちらに駆けてくるベイカー

口をパクパクさせているがどうにも言葉にできていない


『ビー!見っけたの?』


ミザリーが声をかける


ピクリと気づいたのはレオ


ベイカーは森林帯を抜けた

だがまだ耳に木々の折れる音が聞こえてくる

それも、どんどん大きく


「い、いたよ!でも…なんかヤバいのも出てきちゃったっ!」


『はん?』



〈バキャァッッ!!〉



ベイカーの背後から木をへし折りながら

道を開きながら現れたのは


上半身だけの巨大な人型の悪魔

強固そうな外殻を随所に纏い、やはり巨大な両腕で這うように迫っている



「ベイカー!こいつは?」


レオの問に、必死に息を整えながら

ベイカーが答える


「い、いたんだ。ローブ被った奴が、で、そいつが黒い箱を取り出したと思ったらこいつが出てきた…ローブの奴もまだ森の中にいるはず」


「そのローブの人物が関係してるのは間違いなさそうね。問題はその人物がどこの誰なのか」


と、冷静に状況の整理も許さないように


巨人の悪魔が拳を振り上げる


上半身だけとはいえ10m超はありそうな体躯


拳1つとっても2mはある


それを振り下ろされるだけで


〈ズゴォンンッッ!!〉


地面が揺れるほどの威力を見せつけた


土埃でむせながらもなんとか躱すベイカー


「まだ観戦してるならいいけど、こいつで時間稼ぎしてる間に逃げる算段ならまずいよ」


『リディ、追って!』


「…任せていいのね?」


『ええ、丁度いいわ。必殺技考えてんの』


「それも気になるところではあるけど、分かったわ。」


レオが砂埃をかきわけ森林帯に向かって駆け出す

行動の速さはやはりと言うべきか


「ミザッッ!なんだよ、必殺技って?」


気づけばベイカーはミザリーの横で再び息を整えている


『ビーには分かんないかも知んないけど、女はいつだって必殺技を考えてるもんなのよ』


「逆逆、男だよそりゃぁ」


『立ちはだかる困難を己の拳で切り開きたいと思ってるもんなのよ、女は』


「それも男男ぉ、少年の心持ってんのかいキミ」


『ま、見ときなさいよ。ああいうデカブツ相手なら丁度いいわ、持ってて。』


と言いながら上着を脱ぐとベイカーの方へ投げる


ミザリーは上着を脱ぐと袖のない赤いトップスである


普段隠れてはいるが両腕は肩から剥き出しの機械の腕


陽の光の下においても鈍い光を放つ


〈キィンキィンッッ〉


親指で中指を弾き、指を鳴らす

それを2度


「ん?」


ベイカーが気づいた


ミザリーは自身の中にあるフェンリル

その力を引き出す合図として指を鳴らす


だが、それを2度鳴らしているのを見るのは初めてだ


『合図よ、フェンリルと…母さんにね』


〈バチ…バチバチバチッッ!〉


ミザリーの身体が帯電を始める

それは身体から溢れるほどの大量の雷



〈ゥゥグゥオッッ!!〉


様子を伺っていた巨人の悪魔が唸り出す

威嚇のようで、萎縮のような呻き


『一発でかいのかましてやるわ!』


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