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My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
Hug the Ghost
38/39

epilogue~帰還~

misery,s side


数時間前まで、ナベリウスと呼ばれる悪魔

そしてその悪意を見込まれ贄から実体の依代となったハンブルク・ドライセン


この復讐の根源たる存在との戦闘を終えたばかりのルースルーへと


夜明けを合図とするようにドライセン護国首都 ジャンベルタンから多数の兵士たちが調査に赴いて来はじめていた


元凶となったハンブルク・ドライセンはナベリウスもろともこの世を去り


この騒動の首謀者を誰かと問われればそれは


「私よ…私がルースルーで謀反を起こし、ハンブルク・ドライセンを殺害した」


ガゼルリア・テンパラントがそれに該当するのは明らかではある


ルースルーを訪れた軍人達にそれを告げ、王都へと連行されいくガゼルリアをミザリー達は何とか弁明しようとしたが


ガゼルリアは首を横に振った


そしてクロジアも頑として、自身も一端を担ったと主張したが悪魔の力を見せる訳にも行かず、証明が困難ではあったが聴取の為と共に連れていかれてしまった


ミザリーらはガゼルリアやクロジアが現場に居合わせただけの旅人だと証言し、更には王都へとルグリッド公国からの伝書が届き公国からの使いと証明されたこともあり


一先ずは客人として護国王都へと迎えを待つためにと案内された


なにせ、ミザリーは再びの満身創痍状態で動くことすらできない


魔力は十二分に満たされており、修理さえ行えば心配するような事はなさそうだが


やはり


『まーた、車椅子のお世話になんの?』


王都に着くなり軍の人からベイカーが車椅子を借りて来たのを見てミザリーはげんなりしていた


「仕方ないだろ?宿まで担いで行くのもひと苦労なんだから、ほら肩貸して」


今回は、大きな怪我なく事を終えたベイカーがいそいそとミザリーを車椅子に乗せるため手を貸す


『まぁあんたが怪我してないのが何よりね』


「なんだい、珍しく殊勝なこと言うじゃないか」


『また修理できるまでに怪我直んの待つのがたるいだけよ』


身体の自由こそないが顔は雄弁に動けないことの不自由さを語っている


「よっと…ここだ」


そんなミザリーをあしらいつつ、ベイカーは宿屋の受付に挨拶をした


客人として話が通っているらしく、用意してくれていた二人の着替えを受け取ると1階の少し広めな部屋へと案内される


車椅子でもなんなく入れたため、そのままミザリーを窓際に落ち着かせるとベイカーは鞄の中身を広げ工具を選び始めた


『…あの二人、どうなると思う?』


「事情があるのは分かってる、それでも…言いたくないけど罪は罪だ…」


『そうだけど…私、ラビに頼んでみようかな。事情を話せば…』


「ミザ、気持ちは分かるよ。でもラビを困らせるだけだ」


ベイカーが諭すようにミザリーを見つめる


『そっか…そうよね、ごめん』


「…でもあの二人の未来はここでは終わらないって、なんかそんな気がするんだ」


『…なんで?』


「クロジアさんやガゼルリアさんがその気なら逃げることだってできていたんだ、それがわざわざ軍の人がくるのを待ってまで此処に連れて来られたのは何か意味があるんじゃないかってね」


『ふん?まぁ…そうかもしれないけど。ま、とりあえず直してよ』


「はいはい、お任せあれってね」


ベイカーは工具を握るとミザリーの肩周りから、修理、調整に取り掛かった



_______________



その数時間後


護国 王城内


その地下にある牢屋でガゼルリアとクロジアは投獄されていた


朝から続いた聴取も一先ずの終わりを迎え居心地は悪いが二人は多少の落ち着きを得た


しかし二人の胸中とは反対に王城は混乱を極めていた


軍務大臣にあたるガゼルリアの謀反

国王ハンブルク・ドライセンの逝去


そして、ガゼルリアの口から語られた16年前のハンブルク・ドライセンの悪行


にわかには信じ難いガゼルリアの供述であったが、同刻 王城へと書面を持った一団が現れたことにより事態は急変した


その一団はガゼルリア同様に

16年前の儀式にて家族や親しい間柄の者たちを奪われた者の集まり


持ち込んだ書面はその儀式の核心たる悪行の証拠の数々だった


ガゼルリアと同じ志を、ハンブルク・ドライセンへの復讐を目的として集まった彼らはそれら全ての情報をかき集めるべく


二種類の役割に別れていた


一つは日陰に、闇に紛れ生き、情報を、証拠を集める者たち


そしてもう一つはその集めた証拠に力を持たせるべく


人として、国の内部や商業、貿易業などで自身に地位を付け


言わば国にとって無視できない立場の人間になるべく尽力した者たち


その両者の目的は言わずもがな

愛する者を無慈悲に奪った護国王への復讐の為


苦渋の日々を生きてきた


昨夜、ルースルーにて儀式の際に、準備や国王並びに関係者を捕縛、連行するため暗躍したのも彼らであった


そして、全てが終わった後にそれを公開し明るみに出すことで悲しき過去を払拭する



想定通りに、国はそれを到底無視できないものと判断し様々な処遇に追われていた


「全部終わったね、ガゼル…」


クロジアの声がポツリ響いた


隣同士の牢獄であることはお互いに分かっていた


「そうね…あの二人と、あなたのおかげよ」


「僕は…怯えてただけだ。自分の中の悪魔が恐ろしくて…目を逸らし続けていたせいで、気付くのが遅くなってしまった」


「それなら私だってそう…あの子たちもあの子たちよ、クロの所にいるなら、そう言ってくれていたら私だって」


「なんか少しザワついたよ…お姉ちゃんに怒られるって思ったのかな」


「…16年音沙汰なかったのよ?説教ぐらいしてやらないと」


牢獄という堅く冷たい場所であっても

二人の心はとても穏やかだった


それも、16年ぶりだ


悪夢から覚め、降り続いた雨も止んだ

そしてお互いに手の中に残っているものを

もう取りこぼさないようにと決めた


「…もう大丈夫だよ。行こう、ガゼル」


「ええ、行先は…どこでも良いわね。あなた達となら」


クロジアが目を閉じると、その身体は淡い赤色の炎に包まれた





______________



# misery,s side


同刻


ミザリーの修理もほぼ終わり細かい調整の最中


動けない状態にこそなっていたが、それらは全て関節部などウルベイル鋼以外で賄われている部品の欠損や金属疲労による破損が主な原因であり


それに該当する部品は、そのリスクを重々理解しているベイカーによって予備部品が準備されていた


であるから、修理と言ってもその大半は部品交換によるものでそこまで大掛かりな作業はない


それでもベイカーはキッチリと細やかな部分までの調整を的確に進めていた


そして、更に少しの時間をかけ


『…ん…寝ちゃった…あ…』


疲労からからうたた寝していたミザリーが目を覚ますと身体の不調感はすっかりなくなっていた


『…もう動いていい?』


一応の確認をとる


「いいよ、もう問題なく動けるはずさ」


ゆっくりと車椅子から立ち上がると身体中の動作を確かめ始めた


『ん、良さそう。ありがと、アンタも少し休んだら?しばらく寝てないでしょ?』


「言われてみたら急に疲れが……まぁでも公国へ馬車を出してくれるって言うし、その道すがらにでも寝ようかな」


睡魔が思い出した途端襲ってきたのかベイカーは器具を片付けながら欠伸をし始めた


すると、そこに


〈コンコン〉


とノックが響いた


「ん?はいはい」


ベイカーが扉を開けると兵士が一人たっており敬礼をする


「お待たせして申し訳ありません、馬車の準備ができておりますのでご出立の準備出来ましたら宿の外までお願いします」


「わかりました、ありがとうございます」


ベイカーがお礼を言うと、一礼し去っていった


『…なんだか急いでるみたいね?』


「んー、まぁ流石にまだ落ち着けるようなタイミングじゃないだろうしなぁ。ミザの支度が済んだら行こうか」


『私に持ち物なんてないんだけど…』


と、よく考えたらいつの間にかミザリーが公国から持ってきていた小さな鞄は騒動の中でどこかへと消えていた


残っているものはというと大型拳銃 マリーゴールドとアニマに、クロジアから託された剣スカーレッドのみ


「あれ?…ホントだ、って君、着替えもどっか行ったのか。ならさっき宿の人から貰った着替えがあるからそれに着替えて帰ろうか」


ベイカーが机に置いていた着替えをミザリーへと手渡す


無地の白い、寝巻きのような簡易的な上下だ


『なんともシンプルな…まぁ帰るだけだし十分ね』


「僕も着替えくから、外で集合ね!」


工具を詰め込んだカバンと自分の着替えを手に取るとベイカーも慌ただしく部屋を出ていった


そして


10分後


ミザリーが着替えを終え、外へ出ると


用意された馬車の前で、やはり簡素な白い服に身を包んだベイカーが荷物を荷馬車に乗せている所だった


「お、早かったね。」


『まぁね、もう出れるの?』


「うん。すいません!お願いしまぁす!」


ベイカーが荷馬車の運転手に声を掛けると、運転席へと温和そうな兵士が乗り込む


「よし、帰ろう。みんな心配してるだろうな」


ベイカーがミザリーを促すと、二人並んで荷馬車の席につく


「では、出発いたします!」


運転席から合図が聞こえると、軽い馬のいななきと共にゆっくりと馬車が進み始めた


宿屋から、王都の外へと繋がる門は近い


ちらと振り返ると王都内も多少瓦礫が散乱したり、家屋等も些かの被害が見えているが


それでもルースルーに比べたらその被害は極力抑えられていると感じる


「聞いた話じゃルースルーに赤い柱が見えたのと同じタイミングで竜みたいな悪魔が暴れてたらしい、けど人的被害はほとんど無かったって」


『王都からルースルーに人が来るのを止めるため…まぁ、誰か傷つけられるような人達じゃないわよね。』


ミザリーが両手を頭の裏に回すと、外の景色をぼんやりと眺める


何か思うところ、葛藤のようなものが頭の中に残り続けているのだろう


身体の修理が終わってもミザリーの表情は今一つ晴れずにいた


そんなミザリーの気持ちはベイカーも分かっていたし、同じ気持ちもあった


お互いに気持ちの整理が必要だと、二人は特に言葉を交わすことなく数十分を過ごした



ふと、ぼんやりと景色を見ていたミザリーがピクリと何かに気づく


その一瞬後にベイカーも何かを感じた


『ごめんなさい!少し止めてください!』


ミザリーの言葉に、ゆっくりと馬車が止まる


『少し時間ください、すぐ戻ります。ビー、降りて』


ベイカーを促し、共に馬車を降りるとミザリーは駆け出した


「ミザ、この感じって…?」


『アンタも分かんの?…たぶんね』


数分を走り、馬車からの視線を遮るように木陰に入り更に進むと少し開けた場所に出た


立ち止まり辺りを見回して2人が何かを探すような素振りを見せていると


そこに


フワッと竜人の悪魔がローブを纏って空から舞い降りてきた


アニマ、クロジアだ

その背にはやはりローブを被っているガゼルリアの姿があった


「やぁ…やっぱり気づいてくれたね」


静かに草を踏み地に降りると

その背からガゼルリアが降り、クロジアも人の姿に戻った


『捕まってるはずじゃなかったの?』


ミザリーの声に非難の色は無い、どこか嬉しそうですらあった


「誤解しないでね。私達は罪を認めているし、言い逃れもしない、罰を受ける覚悟もある。ただ…それを償う形は、私達が決めたいの」


ガゼルリアがローブから顔を出した

その顔は、疲労感こそ感じるものの晴れやかに見える


暗い場所でしか会ったことがなかった為

顔立ちが整っていることには気づいていたが

両目の目尻側に火傷のような少し爛れた跡があることには今初めて気付いた


「護国の法、罰として囚われ処刑されるよりも、僕たちにはできることがあると思ってる。…国の連中がそれを認めないことは分かっているし、そんなものをハナから求めてはいない。ただ…」


クロジアが深く頭を下げた

それに続いてガゼルリアも同じように頭を下げる


「君達には…僕たちを真の意味で救ってくれた君達にはそれを認めて欲しい。」


「…勝手な事を言っているのは分かっているし、あなた達にそれを背負わせる傲慢さも理解している…それでも…」


『あなた達にできることって?』


「僕の中の悪魔の力を…この子達の力を正しい事に、人を守るために使いたい」


「私達は世界を巡る、まだこの世界には悪魔に虐げられ家族を失う恐怖に怯える人達が多くいる。そんな人達が…大切な人を失わないように、大切なものを大切なままで生きていられるように、僅かでも人を守りたい」


振り絞るような二人の言葉からは微塵の虚偽も感じられない

我が身可愛さの嘘偽りはない


ミザリーも、ベイカーもそれは分かっていた

大切なものを失った痛みを16年抱えて生きてきたこの二人の言葉には人らしい優しい気持ちがあると


『…私は二人の生き方までは決められないし、認めるなんて立場じゃない…けど』


チラとミザリーはベイカーを見た


「けど、うん。素敵な生き方だと思う、な、ミザ。」


『まぁ…なんていうか、私あんまり言葉にすんのが得意じゃないけど二人には、や、四人には……生きてて欲しい。それじゃダメ?』


微かにクロジアとガゼルリアの肩が揺れた


それはミザリーなりに二人の意志を尊重し、応援するという意思表示


クロジアの中にあるテシルとセシル、ガゼルリアの双子が生きていると認めてくれたということ


「うん!そうだね、だから二人とも顔を上げてください」



ベイカーの言葉に二人はゆっくりと顔をあげた


微か潤んだ瞳が印象的にミザリーには映った


「ありがとう…僕達は、この罪が消えなくとも自分達なりの償いを止めない。」


「あなた達に…誓うわ」


ガゼルリアがフードを被るとクロジアが再びアニマと化す


「もう行くよ…本当に君達には世話になった。この恩は忘れない」


「ミザリー…これを…」


ガゼルリアが手紙のようなものをミザリーへと手渡す


『これは?』


「気になってると思って…ハイトエイドとの関わりを簡易的だけど書き起こしておいたわ。」


『ああ、思い出したら気になってきたわ』


「クロジアさん、ガゼルリアさん!また会えますか?」


クロジアの背に乗り出したガゼルリアを見て

ベイカーが駆け寄る


「どうかな…金色の狼がいるんだ、ルグリッド公国に僕たちの役目はないだろうけど、それでも…ああ、そうだね」


クロジアがそっと胸に手を当てた


「この子達も、僕達も…また会えることを願ってるよ」


「ええ、いつかまた」



ブワッ



と風が吹くと


木の葉を巻き上げ、一瞬の間に二人は消えていた


『…あ』


ミザリーが空を見上げる


「ん?」


『スカーレッド…借りたままで良いのかしら?』


元がアニマから託されたものだけに返すべきかと、騒動が終えたあとから考えていたものだが完全にタイミングを失ってしまったことに気付いた


「いいんじゃないか?あの二人の意志に沿った使い方は出来るだろうし、それにまた会えるんだ。」


『ま、そうね…しばらく預かっとく』


二人は空をもう一度見上げると、馬車へと向かって歩き始めた




_______________


それから1日と数時間が経過した


馬車は止まることなく進み続け

ミザリーもベイカーも、疲労感からかその殆どを寝て過ごしていたため


気づけばルグリッド公国 王都 ソーデラルへとたどり着いていた


馬車の運転をしてくれていた兵士に起こされたベイカーは、横でいまだ眠っているミザリーを起こすと欠伸をしながら荷台を降りた


続いて降りてきたミザリーも空からの陽射しに目を細め、まだどこか夢心地であった


王城前の広場 ベイカーはその広場が大分荒れていることに気付いた


地面が抉れたり、並々ならぬ傷跡が数え切れないほど残っており所々に浅黒く染みがついている箇所もある


「これって…そうか、もしかしてここで…」


辺りを見回してみるがその広場以外に目立った損傷などが見当たらないため


この広場がかの戦闘域になったのだろうと推測し、ベイカーはその血痕の跡から途端にリーダへの心配がぶり返す


とそこに


〈タッタッタッ!〉


と走ってくるいくつかの足音が聞こえた


『む…?』


ミザリーがいまだ開き切らない瞳をそちらに向けたそのとき


駆けてきたリーダ・バーンスタインはバッとミザリーの両脇に手を差し込みそのまま抱え上げた


幼い子供を持ち上げる親のような、170cmを越えるリーダが同じく170cmほどのミザリーを持ち上げる様は不思議な絵面だった


おまけに


「おお、大丈夫なのかよ、リーダ。ミザは案外重いんだぜ?」


と機械の身体ゆえに100kgを超えるミザリーを明らかに大怪我の処置がなされているリーダが持ち上げていることに心配を見せる


「デリカシーのないこと言わないで貰えるかしら?私なら平気、二人も…無事で良かった」


『リディも…ありがとうね、母さんのことも』


「姉として当然のことよ」


と未だミザリーを降ろそうとしないリーダを見てふっと微笑んだベイカーへと


〈ドッ〉


となにかが飛び込んできた


「ベイカーッ!!ミザリーも!おかえりなさい」


ベイカーにぶつかってきたものの正体はルベリオだった


ずっと心配してくれていたのだろう

ベイカーとミザリーへ交互に視線を行き交わせる瞳は潤んでいた


「ぐぅ…みぞおち…」


ぶつかった時に丁度ルベリオの頭がいいところに入ったらしい


再会の喜びと共にその身を襲った鈍痛にベイカーがなんとも言えない顔を見せた


『なんか面白い顔してるわね…ただいまラビ』


と幼なじみの面白い顔と弟の顔を見て安心しているミザリーの視界がぐるんぐるんと回り始めた


『ん?』


リーダがミザリーを掲げたまま回り始めたのだ


それでも何故かされるがままのミザリーを見てベイカーが気付いた


「…なんかリーダってミザに甘いんじゃないか?…でもまぁ、ずっと心配だったろうしなぁ。…アリス先生もよくミザを抱えて回ってたっけなぁ」


と昔を思い返しては見るが、その記憶の中のミザリーはちっさかったのでやはり目の前の光景は微笑ましくも不思議ではある


十数回転ほど回ったところでリーダはやっと抱えたミザリーを下ろした


そして今度は抱きしめた


『…リディ…やっぱしんどいんじゃない。怪我してんのに無理しちゃダメよ』


抱き返し、その背中をポンポン叩くミザリー


重傷の身体でそんなことをしたものだからリーダの息が切れていることに気づいたのだ


「うーん、姉妹の愛ですかね?」


ルベリオがどこか嬉しそうない顔で二人を眺めているが、出会い頭にベイカーに飛び込んでくる当たり


「(ミザの姉弟分ってそういうとこも似てるもんなのかな?)」


家族間、厳密に血が繋がっているわけではないがそれよりもなにかもっと深いもので繋がっているんだなとベイカーは胸が暖かくなった


「…ん?」


「…あれ?」


途端にリーダとルベリオが何かに気づくと、ベイカーの顔を


というか一部の髪が金色になっているベイカーの髪を見つめ始めた


「ベイカー、どうしたんですか?その髪」


「光の反射か何かだと思ってたら…見過ごせないわね」


二人がまじまじと顔を近づけベイカーの髪を伺っている


ミザリーはなにかバツが悪そうに空を見上げ始める


「…思い当たることはなくはないわね」


リーダが顎に手をやりポツリ零す


「え?わかるの?僕も気づいたらなってたからよくわかんないんだよな…」



「恐らく、二回目の同調が起きたのよ。」


「…へ?同調?って?」


「第一に悪魔っていうのは持っている魔力そのもの、「悪魔=魔力」まずそれを前提として。

私は後天的に「人」が悪魔の力を宿したもの、そもそも相容れないものを無理やり1つにしたようなもの。相性や親和性、練度によって差異はあれど完全な一になるのは非常に困難。

でもミザリーはその悪魔の力がアリス、母親であるという稀有な存在であるゆえに完全に1つになることができている。それが一回目の同調」


「ふんふん、それで?」


「言い方は悪いけど完全に1つになることができており…更に肉体を持たないミザリー自体が限りなく悪魔に近いものなの」


人として生きようとしているミザリーをそのように言うことに申し訳なさを感じているのか、不意にミザリーの頭を撫で始めるリーダ


『ん?別に気にしてないわよ』


やはりされるがままのミザリーも

リーダのそんな気持ちは察している

気を悪くしたりはしない


『え?…ってことは…』


「デビルミザが僕と同調したってこと!?」


『しばくわよあんた』



「へぇー、そんなことがあるんですね。ずっと一緒にいるからですかね?」


ルベリオが驚きはしているものの納得は出来ると言うように頷く


「それもあると思います、思考や行動原理が似通っている。この二人は共に危機的状況に直面することが多い、そういう場面で同じ気持ちになることが要因になってるんでしょう」


『なんか釈然としないけど、その影響が私リスペクトの髪なわけ?』


「リスペクトって、ミザが押し付けたようなもんだろ?」


ミザリーがしかめっ面をしているのを横目に見つつ


「えー、でも良いですよね金髪って、やっぱ目立ちますし…もしかして僕もずっと近くに居ればっ」


ルベリオがハッと気づく


「ということは私もそろそろ…」


リーダも微かな期待を感じハッとしている



そんな姉弟分を見てひとつ息をつくミザリー


巨大な影が足元に落ちたのを見て、空を見上げると上空には


ロワールの姿があった


ロワールとはルベリオの護衛を任せている大鷲の悪魔だ


代々ルグリッド公国の王を守る存在であり、公国を離れる際に護衛としてその近辺警護を頼んでいたのだ


『ロワール、ありがとね。助かったわ』


ミザリーが手を振ると、ロワールが何回か旋回しまた何処かに飛んでいった


代わるように心地いい風が吹くと、ミザリーは目を細めた


『なんかあっという間に時間が過ぎたわね…』


「濃い時間だったからね、ラビにも話してやんなきゃな」


「そうですよ!とりあえず部屋に行きましょう。ゆっくり話を聞かせてください」


ルベリオが促し、王城へと歩き始める


それに続きベイカーが


立ち止まりその背中を少し眺めていたミザリーにリーダが気づいた


「ミザリー…おんぶとかする?」


『ふ…平気だって、リディの方こそ必要じゃないの?』


ミザリーが少し笑って歩き出した


空は晴れた


ガゼルリア、クロジアも長い悪夢から目を覚まし失っていた時間を償いの時の中で取り戻して行くだろう


罪はあれど、逃げずにそれを抱え

人を守りたいという優しい理由で前を行く、生きる

その旅路がどうか優しいものでありますようにとミザリーは祈った


『良い天気ね…ご機嫌よ』

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