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My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
Ignition of Anima
27/39

暗雲を呼ぶ

# another side


ドライセン護国 王都ジャンベルタン


ベイカーやリーダがクロジアと出会ってから半日ほどが経っていた


今もなお王都内では所在不明となった国王

ハンブルク・ドライセンの行方を兵士達が躍起になって捜索している


表立って「国王」を捜索しているとは口に出せないが、それでも大勢の兵士達が動員されている現状に、国民達も大事があったと感じているようだ


そんな王都を王城の頂きから見下ろすものがあった


王城の室内からではなく文字通りの頂き、城の上から視線を張り巡らせているのは


クロジア・レンブラント


16年前の魔を盲信するルースルーの民、そしてハンブルク・ドライセンによる非人道的な儀式により、その身に悪魔〈アニマ〉を宿した青年


その目が帯びている光はどこか悲しさを感じられるものの、鋭い


「(ガゼル…ジャンベルタンに居らずこの騒ぎ、国王を攫いルースルーに向かったか)」


図らずともミザリーらによって

使い魔とのやりとりを絶たれたため


詳しい状況は把握しづらいがそれでも、察するには容易い


「あの子は…死んでしまったかな…」


ポツリと零した


ミザリーの事だ

使い魔をやられたことから、ミザリーら3人への警戒を高め、誘いこむつもりで悪魔化したが


実際にかかったのはミザリー1人

得体の知れない存在を相手に二手に別れるとは予想外だった

その末先行したリーダとベイカーに先にジャンベルタンへと辿り着かれてしまった


おかげでガゼルリアと会う時間がなかった


だが予定通りにガゼルリアがルースルーに向かったと見て、多少焦りが緩和されミザリーのことを不意に思い出したのだ


「(僕らの話を聞いて…あんなに哀しそうな顔をしながらも僕を止めようとした…きっと優しい子なんだろう)」


少し息を吐き、顔を揺する


「(あの赤毛の少年の幼なじみ…悪いことをした。でも…)」


ふと視線を落とし自らの掌を広げ見つめた


空気が揺らぎ、掌が炎を纏い始める


「償いは必ず僕が受けるさ…だからあと少しでいい。ガゼルの邪魔をしないでくれ」



_______________



更に12時間後


# another side


再び夜が辺りを包み込む

静かな夜がまた訪れると、人々もそれぞれの家で安らぎを得る頃


ルグリッド公国 王都 ソーデラル


〈ザッ!〉


と馬が慌ただしく駆け込んできた


筋骨逞しい馬はよく見ると細かな傷跡が生々しく多く残っている


険しい道を駆けてきたのだと想像に易い


それを駆る女性、リーダも身体に幾らかの枯葉や枝などが所々に張りついている


振り払う時間さえ惜しんできたのだろう


公国内に戻ったため

再び獅子のマスクで顔を覆っているが、恐らく体力もかなり消耗しているはず


しかしそれをおくびにも出さず、そのまま公国王城へと馬を走らせた


そして数十分後


リーダが王城へと戻り王室の扉をノックしていた


2度のノックの後ほど、すぐに中から入室を促すルベリオの声が聞こえてきた


「失礼致します、只今戻りました。」


入室して会釈をするレオへとルベリオがすぐに駆けよってきた


ルベリオとテーブルを挟んで座っていた右大臣イグダーツも顔をこちらに向けている


「レオッ!無事でしたかっ…1人ですか?」


ひとまずの安否を確認できはしたが、王城を後にした時と比べて明らかに人数が足りないことにルベリオが尋ねた


「少し緊急事態が重なっています。駆け足になりますが御説明のお時間を」


「構いません、教えてください。」


ルベリオに着席を勧められたが、それを断りリーダは事の顛末と公国に迫る緊急事態の説明を2人に話した


ミザリーが敵性の悪魔との戦闘に向かった後、合流できていないこと

ベイカーがその捜索に向かったこと


護国でのハンブルク国王の行方不明とそれに関わるであろうガゼルリアとクロジアのこと


そして最も急務である

ここ公国へのリョフ・テンマの進軍、それも残された時間は恐らく多くは無いということ


「そんな…ミザリー、大丈夫でしょうか…」


「ベイカーが捜索に向かってくれています。あの二人ならば戻ってくれると…私は信じています」


それはまるで自分の強い願いを口にするかのような励まし


そんなリーダの気持ちも汲み取り

ルベリオは強く頷いた


「…わかりました。僕も信じます、では早急にリョフの迎撃の準備にかかりましょう、イグダーツ!」


「かしこまっております、軍備を至急…」


「いえ、迎撃ではなく避難に重点を置いてくださいませ。」


「えっ?」


「王城内、そして王都内の民をできる限り王都から避難させ、そして事が終えるまで王城には近づかないように手配してください


リョフは、私が討ちます。」



力強い言葉に鋭い眼光は確固たる意志を表している



当然ながら現段階での王都内の最大戦力はリーダ・バーンスタインの他にない

しかし、それを筆頭とし軍力も合わせての迎撃とばかり、ルベリオとイグダーツは考えていた


「それはいくらなんでも無茶じゃ…強力な悪魔なんでしょう?リョフと言うのは…」


伝え聞いた話だけだが

ミザリーとリーダを圧倒したというだけでもその実力は伺い知れる


その底がまだ見えていないなら尚更だ


「…正直に申し上げますと、私がリョフに適うとは思っていません。全力を出し切っても可能性が僅かにある程度のものです。」


「それならその確率をあげるためにも兵を動員するという手を取っては…」


とイグダーツが薦めるも


「本音を申しますと兵士達と乱戦に持ち込んだ場合、リョフを相手に庇える自身がございません。あくまで可能性があるというのは、リョフにのみ神経を集中させられた場合の話です、それに本当にガゼルリアの手がそれだけとも限りません。兵士は陛下や国民の守護に当てて頂きたいのです。」


「レオ…」


ルベリオにはレオの、リーダの強い決意を止められるとは思えなかった


リョフに集中するためとは言っても、その実は他の国民を案じてのこと


自身に万が一のことがあっても、国民の護衛に兵士達を回せるのなら避難もつつがなくこなせるだろうという気遣い



チラと見たイグダーツも同じ考えにいき当たったのだろう

感慨深げに頷いた


「分かりました…それで、リョフの現れる場所の見当はつきますか?」


「リョフはマモンという悪魔の腹の中におります。そのマモンがどこから現れるのかは予見できるはず、かなり大型の悪魔でした。私が単独で城の頂上から見張りますので、国王たちは…できれば王都外への避難を。」


「イグダーツ…至急手配を、兵士に誘導させ王都の民を1人残らず避難させてください。城の中の者もすぐに」


「かしこまりました。通達して参ります」


席を立つと足早にイグダーツは王室を後にした


残されたレオとルベリオ


レオは静かに膝まづいた


「申し訳ありません…ミザリーを危険な目に…」


静かな声、だが微かに震えている

それは自責の念であるとルベリオは気づいている


「レオを責めるつもりなんてありません、きっとミザリーが言い出したことでしょう?それを止められる人なんて居やしません。それに…ベイカーが探してくれているならきっと見つかりますよ、無事に」


「そう祈っています…」


「王都内の民全員を避難するのには恐らくかなりの時間を要します。王城内、そして王都一区、二区を率先して避難させレオとリョフの戦闘域を確保させる。それでいいですね」


「はい、本当ならば王都外に引き寄せられればよいのですが…王城に被害を出す可能性もあります。」


「いいんです、「国とは民、王とはそれを包み込む器のようなもの」と父上は良く言っていました。民が無事ならば城も国も何度でも立ち上がれます。…それを守る役割をレオやミザリーに任せるのは不甲斐ないですが…」


「それこそお気にすることではございません、私にできる事は、多くありません。私にできることは…戦うことだけです」


「そんなことありませんよ、リーダにはこの半年足らずで多くの事を教わりました。…頼りにしてるんですから、僕もみんなも」


「…お気持ち有り難く…」


「そうだ、ロワールにも力を貸して貰えれば。良いですよね?ロワール」


ルベリオがそう話すと、窓に近寄り開け放つ


すぐにふわっと、黒い鳥が一羽飛び込んできてルベリオの頭の上に乗った


この鳥は、ロワール


公国の王に代々受け継がれ、力を貸してくれている黒い大鷲の悪魔だ


今は一般的な鳥のサイズであるが本来は体高3m強、翼を広げた全長は10mほどもある大型の鷲の悪魔である


代々受け継がれていた、という話ではあるが文献でしかその情報はなく先代国王ハーディン・ウェイヤードの戴冠に合わせ百数十年ぶりに姿を現した


ルベリオの護衛を担い、王城や王都周辺の悪魔の襲撃には目覚しい活躍を見せている強力な悪魔


それを戦力に加えたらとの提案だったが

やはりリーダは首を横に振った


「リョフの単独進軍とは分かっていても、それを鵜呑みにして王の護衛を疎かにしては有事の際悔やんでも悔やみきれません。ロワールには引き続き殿下の護衛を」


リーダの言葉にロワールは小さく鳴いて返事をした


「分かりました…ではせめて食事と休息を、避難通達が終わるまでの短い時間ではありますがその間だけでも周囲の警戒をロワールにお願いします。今は少しでもリーダの体力を回復させてください」


「いえ、私は…」


「これは国王からの命令です!必ず、食事をとり、仮眠をとって身体を休めてください。ロワール、警戒をお願いします、何かあればすぐに教えてください」


〈キィャッ!〉


小さく鳴いて、ロワールは開け放たれた窓から外に羽ばたいていった


「敵が現れれば、すぐにロワールが来ますから、ね」


どこか有無を言わさぬ勢い

国王の命令とは言っているものの、これは単純に気遣っているのだと察するに容易い


リーダは観念して、その言葉に甘えることにした


ずっと馬で駆けっぱなしで体力も使い続けているのは確か


アリスを母とするミザリーとリーダ

そしてミザリーの父ハーディンをやはり父とするルベリオ


一般的なものと比べて形は違う

しかし、ここにも姉弟のような繋がりがある


ルベリオがそう繋がろうとしてくれているのだ


リーダはどこかくすぐったく感じながらもそれに甘え休息をとることにした



数刻先で待つ 戦いへと



_______________


同刻


# misery,s side


『ガゼルリアはルースルーで何する気なのかしら!』


疾走する馬に揺られ続けること数時間が淡々と過ぎていた


今こうしている間にも公国で、ルースルーで事が起こっているかと思うと焦りや緊張が溢れる


まだガゼルリア達の目的がはっきり見えていない事もそれに拍車をかけている


「具体的に何するかはわかんない、けど目的は恐らく護国王ハンブルク・ドライセンとルースルーの独自思想、悪魔を崇拝する文化、それが引き起こしたガゼルリアの家族に対する悲劇への復讐だ。クロジアさんもそれに協力していることから2人の動きは同一の結果に対して動いているはず」


『つまり、護国の王様とルースルーに同時に復讐するために王様をルースルーに攫っていったってこと?』


「ああ!ガゼルリアならそもそも攫うまでもなく暗殺って手段も取れたはずなのにそうしなかったってことは、別の目論見があるんだ」


『…間に合うかしら』


「僕とリーダが王都にいた時に失踪の騒ぎがあった、そしてすぐ後王都を経って僕はミザを探したんだけどそこまでは大きく時間はとられてない、公国に戻るためにルースルーへ向かう方面から逸れてた時間、そして引き返す時間がそのままタイムロスになっただけだから2、3時間遅れてるかもしれない。でも向こうも護国王を連れての移動、そんで何か計画があるにしてもすぐ実行って訳には行かないと思うから…」


『念入りに準備してくれてることを祈るしかないわね!』


「ああ…ねぇミザ!」


『なに?』


「身体平気か?まだもちそう?」


『ええ、なんか思ったよりいけそう。なんか不思議』


「油断すんなよ!多分、ルースルーにはガゼルリアもクロジアさんもいる。クロジアさんは悪魔化してるし、ガゼルリアもまだ黒箱を持ってるかも知れない。戦闘は…逃れられないかも」


『分かってる!でも、まだ話さなきゃいけない。話して解決するとは思ってないけど…なんて言えばいいのかしら…まぁ察して!』


「わかった!」


やけに物分りが良いベイカーに少し目を見開くミザリー


そうだ、ベイカーはこういうところがあるとミザリーは思った


上手く言葉にできない事を、ミザリーが言いたいことをわかっている


小さい頃、あまりに理解が早いベイカーに

ミザリーは


『ビーは人の心が分かんの?』


と聞いた事がある


そんな訳はないが無邪気ゆえの質問だ


もちろんベイカーの答えは


「そんなわけないだろー?」


と答える


しかし、どこか納得していないミザリーにベイカーはサラリとこう付け加えた


「僕が分かんのはミザのことぐらいだよ」


付き合いの深さゆえの発言だったが

ミザリーはやはり無垢ゆえに


『すご…超能力じゃん』


と返した




『…ま、いいか。何にしても力貸してよ、私は…あの二人を止めたい!』


「それも分かってる!」



同じ気持ちを持っている

そういう存在が傍にあることの心強さをミザリーは感じた


まだ頭の中は上手くまとまっていない

ガゼルリアやクロジアの気持ちを完全に理解できることなんてできない


それでも、止める


そんな2人の頭上には分厚い雲がかかっていた

一雨来そうだ、ということさえ考える余裕もないが少しずつ


少しずつ2人は確実にルースルーへと近づいていた

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