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My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
Ignition of Anima
21/39

業、燃ゆる

# another side


「周囲に電気がある…?言っていることは分かるけどそれがどうミザリーの力になるの?」


ミザリーと別れ

先行隊としてドライセン護国王都へ向かうベイカーとレオ


1人にして良かったのかと心配するレオへとベイカーは、ミザリーへのアドバイスというか、そう告げていることを話した


「なると思う、ミザの中のフェンリルは母親であるアリス先生と同一だ。アリス先生の意志で魔力を電力に変え、身体を駆動するのに使ってる。でも言い換えれば魔力を電力に変換する1点がアリス先生の意志、つまり」


「電気さえあれば魔力が無くても駆動することができるってことね」


「うん、でも多分魔力のエネルギーっていうのがとんでもなく大きいんだ。少しの魔力でも電気に変換すれば何倍にも膨れ上がってる。だからこそ、魔力さえそれなりにあればミザの身体は半永久的に動くことができる」


風を受けながら、2人の乗る馬は

着実に王都へと近づいている


と同時にミザリーからは離れていっている


大丈夫、だとは思っていてもベイカーやレオの意識の中にミザリーへの心配は止まない


「それで、周囲に電気があればミザリーはそれを取り込んで動けるってこと?都合が良い期待じゃないの?」


「確かにちょっと期待もあるけど、ミザの身体が動いている限りはミザの中に電気が残っているんだよ。そして、電気ってのは伝導し呼び合うから周囲の電気はその辺りじゃ1番大きいミザのバッテリー部に集まってく」


「理屈はわかるけど、それでも…」


ミザリーと別れて以来、レオはずっと背後を気にしている


無理もないがその気持ちはベイカーも同じだ


「大丈夫さ!…ミザが望めばミザはなんだってできるんだ。それにミザが言ってたろ、合流するって」


スっと指を口に咥えると

ベイカーは大きく息を吸って


〈ピィーーーーー!〉


と指笛を、大きく、長く鳴らした


これを合図にミザリーが合流する、それをただただ信じている


「ミザは嘘つかないからさ」


ニッとレオに向かって笑顔を浮かべる


「ベイカー…」


レオは、自分と同じようにミザリーを心配しているベイカーが


やはり自分と同じようにそれを信じ自分に言い聞かせているのだと感じた


「そうね、私も…信じるわ」


グッと手綱を握り直し、意識してかせずか

2人の駆る馬の速度は少しずつ上がって行った




_______________



# misery,s side


『ふっ!!』


〈ガッ!!〉


ミザリーの突き出した拳を大剣で受け、そのまま押し返すアニマ


〈パチパチッ!!〉

ミザリーが移動する度に周囲の静電気がミザリーに集まっていく


それを糧に一挙手一投足の速度が威力が上がっていく


〈ザッ!!〉


とミザリーが踏み込む音が聞こえるのと同時に振りかぶった蹴りがアニマの肩に命中する


【グッ…なんなんだ、お前は、人間じゃない…のか?】


戸惑いがアニマの動きを鈍らせているのか

アニマは剣をミザリーに突き出し、質問への返答を求めているようだ


『私は人間よ、生身じゃなくて悪魔の魂で機械の身体を動かしているってだけでね』


自らの腕を見ながらミザリーは答えた


【なに…?ならばお前も望まざる力を与えられたということか…】


ピクリとミザリーにアニマの発言が引っかかる


『そりゃ最初はすんなり受け止めらんなかったわよ。でも今は違う、母さんが、周りの人達が、口やかましい幼なじみが私を人だって形作ってくれてる』


【…】


なにを考えているのか

いや、それよりも問答を繰り返す内に


『なんか妙ね、アンタ…お前も?…まるでアンタも悪魔の力を手にした人間みたいじゃない?』


ハッとするようにアニマが視線をミザリーへと向け直した


【何がわかる…】


『やっぱり…初対面の時からしたら随分考えこんで人間らしい振る舞いに見えるわ。』


【人間らしい振る舞い…もうそんな存在であることに固執してはいない…が気付いているのだろう?】


『勘よ…最初はね、でもやっぱり知った顔っていうかほんの1日ぶりね。クロジアさん、だっけ?』


ミザリーの口から出た名は

ルースルーを出た際に出会った青年の名だった


どこか内気で物静かな、あの青年


【…妙な予感はしてたさ、出会った時、そして躊躇なく悪魔を倒そうと、倒せる力を持っていると感じた時】


『アナタも勘が働いてたってことね、でも私らはアナタが悪魔だってことには気付かなかった』


戦闘態勢からお互いに力を抜いた

言葉を交わすフェイズに入ったのだ


【僕だってそうさ、悪魔を倒せると言うだけなら珍しくもいなくはない。だが僕の使い魔を墜としただろう、アレが君たちを敵性のものだと僕に判断させた】


『ぁあ、倒されたら分かんのねアレ…で?邪魔って言うのはアナタのじゃなくてガゼルリアの邪魔ってことでしょ?』


【…そうだ、ガゼルの邪魔をするのなら僕が放ってはおかない】


決意が見えるほどに語気が強まる


『そんなに公国が憎いの?今の国王も前の国王も恨みを買うような人じゃないはずよ』



【公国がちゃんと調査をしてくれていれば!ガゼルがっ…苦しむことはなかったかもしれない】


感情が露になり、クロジアという青年から感じていた物静かさは姿を隠し激情


閉じ込めていたものを吐き出すように声を荒らげている


『事情がありそうってことは分かったけど、まだイマイチ見えないわね。…何にしても公国にちょっかい出すってんなら放っておけないのは私達も同じよ』



【だが公国など…二の次だ…】


ポツリとアニマが、いやクロジアは呟いた


『…は?』


ミザリーが瞬きを一度した


一度目を閉じ、そして再び開いた眼前


アニマが剣を振り下ろしていた


『…ッ!』


〈ズシャァッ!〉


とアニマの剣が後ろに飛んだミザリーに当たらず地を割いた、が更にそのまま突き込んでくる


瞬時ミザリーはその切っ先に

マリーゴールドの弾丸を撃ち込んだ


〈ドゥオンッ!〉


命中した衝撃でその切っ先は地面に叩き込まれ、その剣をミザリーが左脚で踏み込み追撃を封じ


〈ドガッッ!!〉


と右脚でアニマの頭はと蹴りを叩き込む


僅かながらの電力を得、回復しつつあることを実感するように身体はミザリーの意のままに動いた


『随分感情的になったわね、公国が二の次なら目的はどこにあんのよ?』


手応えはあったものの、有効打とは言い難いようだ


竜のような出で立ちの為首はやや長く当てやすくはあるが外殻に覆われている


生半可な攻撃は芯には響いていないのだ


【公国など極論…どうでもいい、公国への恨みなど逆恨みのようなものだ。僕たちの本懐は護国を壊すことだっ!】


『護国って…自分達の国を?』


【君も見ただろう、ルースルーの狂った常識を…悪魔を崇め神格化している、自身らを傷付けられても贄として受け入れている歪んだ偶像崇拝を!】


『確かにおかしいとは思ってる、けど…何があったの?』


ミザリーは両手を下ろし、再び会話へとクロジアを促す


知ること、それがこの争いの解決に

最も近い方法だと感じたからだ


【…ルースルーには2種類の人達が集まっている】


ポツリとクロジアは語り始めた

吐き出すことで溜飲が下がることもあるのだと感じたのか、それとも訴えか


【魔女狩りから逃れた多くの人、そして幾らかの〈偶然的に悪魔に救われた人々〉だ。

30年以上前、人々は悪魔に襲われ傷付けられることに疲弊し苛立ち〈生まれつき魔力を帯びる人達〉を魔女と称し、せめてのもの抵抗のつもりか迫害し始めていた。行き過ぎた迫害は贖罪の皮を被せ処刑まで行って、多くの罪もない人々を殺した】


『…そんな…ことが…』


【そんな折にも悪魔は現れる、魔女狩りの最中現れた悪魔達は人々を襲い殺めた。だが魔力を帯びている人間を同胞と勘違いするのか、魔女狩りの対象となった人々のことを襲うことはなかった。各地で同様の事が起こったため、そういう習性だと予測することはできた。だが、魔女狩りに苦しみ迫害されてきた人間にとってその悪魔達は自らを救った神にも見えたんだそうだ】


淡々と語ってはいる

しかし、言葉の一つ一つ一音一音にどこか棘のような危うさを感じる


【難を逃れたとはいえ、いつまた魔女狩りのような迫害の憂き目に会うかしれない彼らはある人物の計らいで集められ一つの集落を作り、それがいつしか町になった。僕とガゼルの家族は元々別の村にいたが迫害され出来たばかりのそこに辿り着いた】


『もしかしてそれが…』


【そうだ、ルースルーだ。護国王都の膝元であり、領内での魔女狩りに厳罰を行うという庇護の元ルースルーは少しずつ発展していった】


『その人物は誰なの?罰を与えられるというならお偉いさんではあるんでしょ?』


【ああ、偉いさ。なんせ、現国王ハンブルク・ドライセンその人だからな。当時既にその地位に居たハンブルクは公的には他の町村と同等に支援していた】


『何となく…聞いてる限りは恨みを買うような人じゃなさそうだけど』


【表面上は名君だったさ。だがハンブルク・ドライセンは魅入られていたんだ】


『…魅入られて?』


【悪魔という存在にさ!一生命でありながら人とは違う力を持つそれに焦がれ欲した。そして16年前のある日事件は起こった。一部の妄信的な悪魔信者であるルースルーの町民達と悪魔に魅入られた国王ハンブルクは秘密裏に悪魔を招来する儀式を敢行したんだ!】


『な…』


【人道的な倫理を顧みない地獄をこの世に作り出すような儀式、その贄になったのは何も知らず!罪もない!明日の姉の誕生日への期待に微笑んでいたガゼルリアの幼い弟妹だっ!】


『…ッ』


言葉が出なかった

耳から入ってきた言葉を頭で、脳で理解した

理解しているつもりがそれを拒むように脳が揺れる


姿さえ知らない

敵だという情報しか持ちえなかったガゼルリア・テンパラントの過去


その新たな情報が感情を揺さぶり続ける



【ガゼルの幼い弟妹と数人を犠牲にして行ったその儀式は完了後、ハンブルクによって箝口令がしかれ口外することを禁止された。そしてルースルーの民達は幼い弟妹たちの犠牲を供物だったとその一言で全て受け入れて…今ではもう覚えているものもいない…】


『…だからって…そんな…』


【迷いが生じたのがわかるよ…君は優しい人みたいだね。ガゼルもとても優しい人だった…だけどハンブルク・ドライセンがルースルーという町が彼女を修羅に変えた】


『…でも、そんなのが正しいなんて…』


言葉が上手く出てこない

何を言うべきなのか、何が言えるのか

分からなくなってしまった


【そうさ、正しいことをしているなんて言うつもりはないし認めてもらうつもりも毛頭ない。でも…それを知って


君はガゼルリアを間違っていると言い切れるかい?】

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