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My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
形の違う石
18/39

異変の町

# misery,s side


「…悪魔に救われた…?」


クロジアという青年の言葉を断片的に反芻するレオ


そのフレーズに既知感を覚えたゆえの戸惑いが微か浮かぶ


『…』


「それってどういう…?」


ベイカーが追い問う


「勿論…こんなこと言ったら皆にはやっかみがられますけど偶然に、ということだと思います。中には悪魔に襲われ、その悪魔を他の悪魔が倒して結果的に救われた。なんて人までいます」


『めちゃくちゃね。それで皆が皆、悪魔を憎み切れないどころか感謝って?どうかと思うけどねぇ』


ミザリーが解せぬとばかりに首を回す


「それで…クロジアさんは僕らに何か用が?他の町人達とは違うってのは分かったけど」


『ヤー、そういやそうね?』


改めて注目され、クロジアの背筋がピンと伸びる


「それは…その、ガゼルリアってさっき言ってましたよね?」


「えっ?ああ、そういや口にしてたっけか。でもそれがどうかしたんですか?」


『もしかして知ってるんですか?』


「は、はい。ガゼルは…幼なじみです」


思いがけない言葉

くしくも同じ幼なじみという関係性であるミザリーとベイカーは目を見合わせた


『ほぉ…』


「ほぉって君…え…?ガゼルリアって人何歳なんだっけ?」


ベイカーが今度はレオへと顔を向ける


「私も正確には…20代後半とかじゃなかったかしら?」


その言葉にクロジアが頷いた


「そうです、僕もガゼルも28歳なので」


初対面からイマイチ年齢が測りきれなかったクロジアが年上だと分かり、いやそもそもガゼルリアの関係者だと判明したことのほうが重要


3人は悟られない程度の警戒心を浮かべる


『ってことは…クロジアさんも国の関係者?ですか?』


「いえ、僕は…ガゼルと幼なじみってだけで職務には関与していません。さっきの町で細々と歴史学者の真似事しながら暮らしてるだけです」


『じゃぁ…たまたま聞こえた幼なじみの名前につい反応しちゃったってこと…?』


「は、はい。実は最近は会えてなくて、ちょっと気になってたのでつい」


『…』


チラリとミザリーがベイカーとレオに顔を向ける


『私たちも実は会ったことなくて、今回王都に行って会えたらなって話してたんです』


「そうそう、ねぇレオ」


ベイカーがうっかり下手な回答をする前にレオに話を振った


国と国との諍い

個人の発言が何を生み出すかも分からないため慎重になるに越したことはない


「ええ、共通の知人がいるのでそんな話をできたらと思って訪ねていく所なんです」


パッと見怪しい出で立ちではあるレオだが

その喋り方は凛としており、外見の怪しさをぼかすことに効果を発揮していた


『そうそう、さて。それじゃあまり時間があるわけでもないし行きましょうか?』


長話をして時間を割ける場面でもない

早々に切り上げて目的へと足を向けるため

3人はクロジアへ別れを告げる


「そうね、それでは失礼。」


「じゃぁ僕らはこれで」


ベイカーが辺りを見回すと自分達の馬がこちらへ駆けてきているのを見つける


「おっ、良かった良かった。3頭とも怪我はないみたいだね。」


馬も体調に変わりはないようだ

再び馬に跨ると、クロジアに会釈をしもう一度北へ向けゆっくりと走り出す


「あ、はい。道中お気をつけて…」


どこか名残惜しそう、というのだろうか

歯切れ悪くクロジアも見送りのため手を振った



その数分後



馬の慣らしの為ゆっくり歩を進めていた3人

そろそろ速度をあげるかというタイミング


「さっきのクロジアさんはガゼルリアの幼なじみって言ってたけど、何か知ってたのかな?」


ベイカーがもうすっかり姿も見えなくなっているのに後ろをチラリと見る


『国の仕事をしている訳じゃないんだし、重要な役職でしょ?そんなホイホイ喋ったりはしてないでしょ』


「恐らくね、国との争いに関係するような事案なら尚更。いくら親しくても外部に漏らすようなことはないはずよ」


「まぁそれはそうだけどさ、もしかしたらどんな人か、とか人となりぐらいは聞けたんじゃないのかなって思ってさ」


『かもしんないけどね。私らだって怪しまれる可能性もあんだから、火急だし』


「…あれ?」


ベイカーがふと眉をしかめた


『ん?』


「いや、さっきの町さ。悪魔に救われた人達が造った町っつってたろ?ハイトエイドの思想と黒箱、それにガゼルリアもあの町に出自があるなら」


「ええ、もしかしたらそこにきっかけがあるのかもしれないわ。」


『…悪魔に救われる…ねぇ』


どこか思わしげに空を見上げるミザリー


「…なくはないとか思ってんだろ?」


『まぁね、悪魔に善悪がないとは言い切れないんでしょ?』


「言いきれんなぁ、ミザのフェンリルはまた特殊なパターンだと思うけどヨルムンガンドとかロワールもいるから一概に悪魔=悪とは言い切れないね」


『ふむ』


「まぁでも今は頭に留めとく程度にしとこう、王都まではどんくらいかかんのかな?」


「今のままのペースなら3日かからないくらいかしらね」


『ん?』


ミザリーがふと空を見上げる


上空60mほどだろうか

赤黒い陰が見える


1m以上はあるそのサイズ的に悪魔であることは察することができる


しかし、別段こちらに襲いかかってくる様子があるわけでもない


どうしたものかと、ミザリーが顎に手をやる


「…ミザリー」


同じくその陰に気付いたレオが注視しながらミザリーに声をかける


『ん?』


「あれ、撃ち落とせる?」


『ビー、届く?』


ミザリーが懐から6連装大型拳銃マリーゴールドを取り出しながらベイカーに顔を向ける


「有効射程は50mぐらいだけど…」


『無理ってこと?』


「な訳あるかよっ、有効射程距離ってのは正確な射撃が可能な距離のことさ!届きはする、ミザ、スコーピオンを。」


『へいへいっと』


ミザリーが懐から革袋を取り出すと中から先の尖った銃弾を手に取る


スコーピオンとは、ベイカーが改修した6連装大型拳銃マリーゴールド


3種類の特殊弾丸を発射できる特殊機構


その専用の銃弾の1種


貫通性に特化したスコーピオン


〈カチャッ〉


手馴れた動作で装填すると顔の横に構えた


『でもなんで?』


「足になにか括り付けられている、恐らく伝達事項を誰かに伝えるために遣われてる悪魔」


「このタイミングで王都へ向かう伝達か、確かに捨ておけはしないね。」


『なるほどっ』


〈チャッ!〉


馬を静止させると、鳥の進行方向を計算に入れ僅かな沈黙ののち


〈キィンッッ!!!〉


と金切り音のような音を響かせ発射した


デフォルト弾丸として使用されているtouch fireと比べるとやや早い弾速


風の影響をものともせず


秒にも満たぬ時を経て


〈ザシュッ!!〉


と見事にスコーピオンは鳥の脚に命中した


「…あれは…」


様子を見ていたレオが何かに気付くと、手綱を引き駆け出した


『ん?倒せてはないけどいーの?』


とミザリーの言う通り鳥の悪魔は脚に被弾こそしたものの撃破には至らず


左右に大きくふらつきながらも飛び続け

流石の射程からも離れて行ってしまった


「とりあえず僕らも行こう」


ミザリーとベイカーがレオの後を追う


50mほど走ったところで馬から降り

何かを拾いあげているところだった


『なんかあった?』


ミザリーがサッと馬から降りるとレオの手元を見る


文書、量的には手紙のようなものだが半分ほどが消失している


『ありゃ…ご機嫌すぎたわね』


手馴れた命中率が仇となったか、マリーゴールドの弾丸で吹き飛んだようだった


「それでも伝達を止めたし、これだけでも情報は得られる。良くやってくれたわ」


『…ふむ』


どこか満更でもなさそうなミザリー

ベイカーは


(「珍しい、褒められて照れてるな」)


と察した


「それで?何が書かれてるの?」


ベイカーが尋ねるとレオは破れた封から紙片を取り出すと広げた


「私達3人がルースルーを通過したっていう報告。それと、なんの事かしら…準備が整ったってことらしいけどそれに関しては書かれてないわね。」


『うーん、てことはルースルーから飛ばされた伝書悪魔ってこと?』


「そうみたいね、準備っていうのが気にかかるけど…」


「ちょっと待って」


ベイカーが考えこむために伏せていた顔をあげた


『ん?』


「…もしかしてだけど、その手紙の送り主…さっきのクロジアさんだ」


『へ?そうなの?』


「そうか、ベイカーの言う通りね」


『なんで?』


「思い返して見てよ、僕達はさっきのあの騒動のときもしものためにレオに身を隠してもらってんだ。3人揃ってんのを見た町人は恐らくクロジアさんだけだ」


『…なるほど、ん?てことはあの人が悪魔を使ってる…ってことになるの?』


「うーん、そうなる?」


ベイカーがちらりとレオを見る


「実際に使役しているとは限らないけど可能性としてはあるわね、そして仮にそうだとしたら私達に接触を図ったのもなんらかの意図があったのかも知れない」


『見かけによらないものね、良い人そうだったのに。ってもまだそう判断するのは早いかもしれないか』


「そうね…まぁ、今はとにかく進むしかないわ。さっきの悪魔が王都まで辿り着けるとは思えないけど、万が一もある。急ぎましょう」


『了解、まだまだ一悶着ありそうね』


数分、脚を止められたものの

可能な限りの最善の手は打てた


だがそれによって、魔を祀る町ルースルーとクロジアという青年


それに対する疑問が生まれる

それでもその疑問を解決するには走るしかない


3人はまたも馬に跨り北上を始めた

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