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My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
形の違う石
17/39

ルーツ

# misery,s side


『……は?』


おもわず町民に向かい顔を顰めるミザリー


無理もない


現状からすれば悪魔は人を襲い傷つけるもの

そしてミザリーらが遠巻きではあるが見た景色は明らかに悪魔が暴れており、現に町民はその影響で傷付いている


しかし、それを助けたはずのミザリーに対して鋭い眼光を被害者から向けてられていることに疑問が生じるのは当然だ


ベイカーは咄嗟にレオに耳打ちした


「レオは下がってて、ここは僕らで様子を見る」


コクリ頷くとレオはスっと下がり、町民の視界から外れた


『…?…?…ビー、アタシなんか勘違いしてる?』


悶える鳥人の悪魔を放置しすっかり困惑しているミザリーがベイカーに振り向き尋ねる


「いや、ちょっと待ってください!…悪魔に襲われていたんじゃないんですか?皆さん怪我もしてるし…」


ベイカーがミザリーの前に立ち町民の顔色を伺う


その中の1人の初老男性が1歩踏み出し声を荒らげる


「余所者には分からない、我らは悪魔を害と見ていない!見てくれは禍々しいかもしれんが神の使いなのだ、それを貴様らはっ…」


「神の?…でも怪我を…」


「供物を捧げねば神の使いとて動いて下さらぬ、この些細な血でいつか生命を救ってくださるのなら安い物だ」


「(嘘だろ…正気じゃない、ほんとに悪魔を崇めてんのかよ)」


その時


〈グァアーーッ!!〉


翼を激しく動かしながら鳥人の悪魔が立ち上がった


そして血走った目で周囲を見回すと

ある一点に視線を固め突如走り出した


視線の先には、子供だ


〈ギィヤーーッアッ!〉


一直線に走るその姿は救済とは程遠い明らかな敵意、捕食者の姿


「ッ!」


ベイカーの額に一瞬で汗が浮かぶ

町人がザワついでいるが助けようとする様子はない


〈供物〉といったさっきの男性の声が頭の中に響く


「そんなわけ…あるかよっ!ミザッ!止めてくれ!」


ベイカーが発すると同時


正確にはベイカーの意思決定と同時にミザリーは大型拳銃を構えていた


〈ドゥオオンッ!〉


再び発砲音を響かせマリーゴールドから銃弾が飛び出す


今度は寸分の狂いなく鳥人の悪魔の頭部に直撃した


極小規模の爆発を起こし確実な致命傷となった


そして瞬間の沈黙の後、鳥人の悪魔は黒く塊

弾けた


その砂のような破片が風に吹かれている中


狙われていた子供が恐怖心から放たれた反動か、泣き始めた


「こ…こわか…あ」


声にもならないその声は傍にいた母親に抱き抱えられると次第に落ち着き始めた


だが


危うく子供を犠牲になるところだった


そんな状況であるにも関わらず、周囲の一部の町民はやはりミザリーらへと強烈な視線を送ってくる


「貴様ら…よくも!クアトル様を…」


〈ジャリ…〉


怒りの様相で2人へにじり寄ろうとしている


ミザリーは俯き、マリーゴールドを握ったまま両腕をダランと下ろしたまま


ベイカーも同じく俯いているが

その両腕は力が込められ、拳は固く握りしめられている


「貴様らのせいで我らの町は!どうなることか!」


『知ったこっちゃないわよ』

「ふざけるなよ」


ミザリーとベイカーの声が重なった

セリフは違えど2人の憤る理由は同じだ


「アンタらがどんな思想と理由で悪魔を崇めようが構わない…でもそれを何も分からない子供にまで押し付けんのかよ!あの子が傷付いても!生命を落としたとしてもアンタら供物だから仕方ないって納得できるのか!あの涙が見えないのかよ!」


真っ直ぐに町民全員を見据えるベイカー

怒りが顔に、声色に、握り締めた拳に滲んでいる


その言葉に町民の何人かは目を逸らし

俯き、未だ泣きじゃくる子供に目をやる者もいる


「お、お前のような子供に何がわかる…!」


一歩前に踏み出してきていた町民がやや、勢いに押されながらも言葉を発する


「僕みたいな子供にだって分かることがアンタら分かんないのかよ!生命だぞ…失くしたら悲しいってことぐらい…」


ポンッとベイカーの肩にミザリーの掌がのった


『行きましょ…ビー。』


「…うん。」


どこか悲しげに、2人は町の出口へと足を進めた


それを見送る町民達にもう2人を非難する気はないのか、言葉も発さず未だ泣きじゃくる子どもを見つめ続けていた


そしてその町民達から少し離れた家の陰、

2人をずっと見つめている1人の姿があることには誰も気づいていなかった


数分も歩けば、町の出口に辿り着いた南から北へ抜けるだけの簡単なルート


騒ぎで町中の人が入口に集まっていたのか

すれ違う人も多くは無かった


町を抜けるとようやくベイカーがポツリと口を開いた


「なんであんな…悪い悪魔を祀ったりしてんのかな…」


ベイカーが〈悪い悪魔〉と表現したのは

悪魔にも善悪が、人にとってのものだがそれが悪魔にもあるという認識だからだ


フェンリルやヨルムンガンドなど事実的に人の味方をしてくれているものの存在を知っているが為の表現


『さぁね…なにかしらの理由はあるんでしょうけど、それを探るタイミングも失っちゃったし』


「ごめん…僕が上手くやれれば良かったんだけどなんかカッとなっちゃって」


バツが悪そうにベイカーが頭を搔く


『睫毛の先程も責めちゃいないわよ、私も同じ気持ちだったし…そーゆーとこよアンタの良いとこは』


「うん…あっ、レオ」


ベイカーが目の前の木の陰に潜んでいたレオに気づく


「だいたいの話は聞いてたわ、アレがこのルースルーの懸念材料ってことで間違いないでしょうね」


『みたいね、ずっとあんな感じなのかしら』


「少なくとも数年前からは、あの地図も新しいものではないから…調査は行ったはずだけど他国の領土であることと、タイミングよく悪魔でも現れない限りは看破することの難しい内容だから確定情報は得られてなかったみたい」


「町ぐるみでやってることみたいだから立証するには国境っていう壁は…でも護国さえ認識してないのかな?」


「どうかしらね、それももしかしたらガゼルリアからなにか聞けるかも知れない……ところで」


『ん?』


「あなたは誰かしら?」


レオの唐突な問いにポカンとするミザリーとベイカー


だがすぐにレオの視線が2人の背後ということに気付くと揃って後ろを振り向いた


そこには、オドオドした様子の青年が1人立っていた


170よりやや高い、レオと同じぐらいの背丈


だが背丈だけでなくどこか灰色がかった髪色のほうがレオを、と言うよりリーダを思わせる


実直そうな顔立ちを際立たせているが、顔立ちが性格を表す訳ではなく、こちらを見る視線はやたら泳いでいる


「えっと…君は、この町の人?だよね?」


歳も近そうだと思いベイカーが1歩近づく


「はっ、はひっ、…あっ、はい、そうです。ルースルーの者で、クロジアって…言います。あの…今ガゼルリアって?」



スっと静かにレオがクロジアと名乗った男性の前に立つ



「あなたは…何故ここに?私たちに何か用かしら?」


気の弱そうな青年であること

そして獅子の覆面を被っているレオに眼前に立たれたこと


萎縮するには十分な材料だろう


「あっ…いえ…その…」


言葉が上手く出てこない様子にミザリーとベイカーは目を合わす


(『もしかして…リディって』)

(「もしかしてレオって」)


(『「怪しい?」』)


覆面の中にある顔を、そしてどういう人物かを知っているミザリーらにとっては気にならないが

初対面で会話するのにはなかなかハードルが高い容姿ではあるのかもしれないと2人は思った



『リディ待って、えっと…クロジアさん?』


「は、はい」


顔が見える分レオよりは緊張感が薄れたのか

眼鏡をかけ直しミザリーと視線を合わせようとする


ミザリーが声をかけると同時に親しみやすそうなベイカーが歩みよったのも良かったのだろう


クロジアは少し呼吸を整えると喋りはじめた


「あの、王都に向かうんですよね?少し歩きながらで良いですか?まだ町の人達も様子を伺ってるかも知れませんし」


チラと町を見やると確かに

出口のほうから数人がこちらに視線を向けていた


『…行きましょ』


ミザリーがベイカーとレオを促すと

クロジアの提案通りに王都へと歩き始める


数分3人は無言で歩き続け

ようやく町からもそれなりに距離があいたところでようやくクロジアが喋りはじめた


人見知りではあるようだが、向かい合っているわけではないので先程より緊張はほぐれているようだ


「あの町は…僕が生まれた頃にはもう先程見られたように悪魔を祀っていたんです。」


『やっぱりあれはそういうこと…』


「はい、あの悪魔は2ヶ月ぐらい前から姿を現すようになったやつで…餌場として時折訪れてはああやって荒らしていくんです」


「…その、死者とかは?」


ベイカーが恐る恐る訊ねる


「いまだに出てはいません…でも重軽傷者は必ず出ています。人を食べたりしなくても穀物や干し肉など食べ漁って満足しているようではあるんですが…今日は子供が危なかった。あの子は…時々僕が本を読み聞かせてる子で、本当に良い子なんです。」


話しながらもグッと拳を握りしめているのにベイカーは気づいた


「でも僕は…悪魔が現れては隠れて今日だって…」


ミザリーがレオとベイカーに視線を送る

どうやらこのクロジアという青年は町の人達とは違う価値観


というより正当な価値観を持っているのだと判断できた


「あの、それであの町はなんであんな風習が?」


ベイカーが核心をつく


「それはあの町のルーツが関係してます。実は…あの町は悪魔に救われた人達が作った町なんです」

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