表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
My Nightmare ~Hug the Ghost~  作者: 燕尾あんす
形の違う石
15/39

残滓

# another side


ミザリーらに休息を促したレオは

ルベリオやイグダーツと今後の政治的な、国としての方向を定めるために話し合った


とは言っても火急のタイミング

変更の可能性の少ない大筋だけをまとめた

起こりうる変化に対しては随時の対応をということに要点を置いたもの


それでも小一時間を消費している

一刻一秒時間を使えばそれだけ後手に回るリスクがあるが、恐らくは既に公国は後手に回らざるをえない


不利な状況からのリカバーが最優先かつ最難関課題だ


それでは、とレオは一礼の後

王室を後にしようとした


「あっ、レオ!」


ルベリオが、慌てて椅子から立ち上がり

レオに近づくと


「ミザリーとベイカーをお願いします。」


「もちろんです、この身にかえても…」


言葉を遮り、首を横に振った


「だからと言って、決してレオが傷ついていいという訳ではありません。レオも気をつけてください、3人一緒に無事に戻ってきてくださいね」


まっすぐレオを見つめるルベリオ

マスクで顔が見えずとも虚を突かれたのは雰囲気で分かった


「ご武運をお祈りしております」


イグダーツが声をかけるとハッとしたように再び一礼し、そして王室を後にした


長い廊下を静かに歩きながら、ミザリーらの待つ場所へと急ぐ


「私も…か」


ポツリと呟くと剣を握る手に力がこもる




_______________


# misery,s side


そのころ二人はと言うと

ベイカーは風呂敷のような大きな布をバタバタとはためかせていた


ミザリーはその近くで空を見上げながらご機嫌に髪を揺らしていた


「そっちのが普通なはずなのに見慣れないもんだね、気に入った?」


ベイカーが声をかけるとミザリーは振り返った


その髪は、魔力が減少したことにより普段より暗めな髪色になっている、だけでなく


これまでは向かって右側を撫で上げオールバックにし、左側は肩より短いぐらいの髪型


アシンメトリーなものだったが


今は右側が左側に長さを揃えられている


肩までの長さになり、つまりシンメトリーになっていた


それでも三つ編みは後頭部の襟足真ん中からしっかり伸びて編まれているが



『悪かないわね、良い気分転換になりそ』


ジッと、そんなミザリーの顔をベイカーは見つめた


『…なによ?散髪代でも寄越せって?』


言葉の通り、この散髪はベイカーが行ったものだ


機械の身体を持つミザリーはその髪ももちろん鋼の繊維でできているゆえにベイカーでないと手に負えない


ミザリーから頼まれたベイカーが恐る恐る切った結果だが、反応からするに上手くはいったようだ


「違うって、アシンメトリーなんて変わった髪型でなかったら尚更アリスさんと似てるなって思っただけさ」


『ん、あぁそうかもね。』


「お、レオが来たよ。そろそろ出発だな」


正門へと目をやるとこちらへと向かうレオが目に入る


レオの視線がベイカーに、そしてミザリーへと向くと


極わずかに歩が緩んだ


一瞬の緩みのあと、やはり静かに二人の元へ辿り着く


「髪切ったのね、ずいぶん突然」


やはりそこに気づいての緩みだったらしい


『思い立ったが何とやらよ、でもちゃんとハーフアップっての?括れる長さはあるから邪魔にはならんわよ』


「…アリスによく似てるわ、髪型が変わると特にそう思えるわね」


懐かしむような穏やかな声色がアリスへの情愛を感じさせる


『ビーと同じこと言ってるわよ、やだやだ。』


「やだってこなないだろ、照れてんの?」


『なんで私が照れんのよ』


「だってちっちゃな頃はアリス先生みたいになりたいって言ってたじゃないか」


『…忘れたわよ、んなこたどーでもいいから行きましょ。』


くるっと踵を返すと馬を留めてある小屋へ向かい歩き出す


そんな後ろ姿を眺めながら

ベイカーとレオは顔を一瞬見合わせる


「せっかちだな、全く。」


「性格までは流石に似なかったのね」


「ま、根っこが同じなのは間違いないよ。行こうレオ、頼りにしてるよ」


ベイカーの言葉にレオはほんの少し息を飲んだ


先程のルベリオやイグダーツから向けられた心配や武運を祈る言葉


そしてベイカーからの信頼を向けられた今


かつて〔四つ脚〕として過ごしていた醜悪とも言える日々にはなかった感覚


きっと人としては些細なことだろう

しかし、そんな些細な言葉にレオは胸の高鳴りを覚えた


「…悪くない。」


囁き、二人の背を追う

国の為にと重責を背負う筈の足取りが心なしか軽い気がした




________________


# another side


ドライセン護国


それはルグリッド公国の北方に位置する四大国の内の一角


資源や交易が盛んであり、経済的な意味での関わりは行えど同大陸内のルグリッド公国・ハイゼン武国・バリオール奏国に対しては勿論、他大陸の諸外国に対しても敵対・交戦の意思を片欠片も見せない


自国の存続を第一とし、所有する武力はあくまで自衛の為のもの


温和な大国


そんな印象が似合う国である


「ドライセンが保守的だなどと、まだ思っていたのでしょうね。他国はおろか、国民でさえも」


ドライセン護国 王都 ジャンベルタン

その王城


地下


立ち入れるものは極わずか

密かな会合などに重鎮達に使われる一室


一室とは言っても何も無く

椅子の一脚があるわけでもない無骨なその空間


唯一 部屋の四隅に小さい燭台があり、

ちびた蝋燭の灯りが頼りなく照らしている


シンプルながらも上質な装いに身を包んだ女性


暗がりの中、顔立ちのはっきりした美形

片目にモノクルを付け無骨な銀細工が不気味に映えている


チラと一瞥した目線の先には車椅子に座った人影

男性のようではあるが、言葉を発するでもなくピクリと動くわけでもなくただそこに居る


「今あなたがどのような感情を抱いているのか…この私には分からない。しかし、今この場に私が立っていることはあなたが積み上げた罪の結果…」


その言葉に微かに車椅子の人物が反応したような気がした


「それでは私は、やるべきことを完遂致します。ご安心を…あなたはただその日を待てばいいのです。その命の行く末は変わらないのだから…」


深く息を吸うとその女性は

ガゼルリア・テンパラントは歩き出した



________________


# misery,s side


『しかしてよ、しかして』


公国を発ち、再び馬に跨りドライセン護国へと北上を始めたミザリー達


数十分ほど走ったころ

突如ミザリーが声を上げた


「なんだよ?自分で走れないから不満なのか?」


『アンタ私を動物だとでも思ってんの?』


「じゃぁどしたんだよ?」


『向こうの動きが分からない、だから探りに私らがドライセン護国に行く。何かしらの反応がある、手がかりを見つけるってのが今回のプランでしょ?』


「ざっくり言えばそうだね、なんか気になんの?」


『その「何かしらの反応」が無かった場合どうすんのよ?言ってしまえば向こうがローブの奴のこともリョフのことも知らんぷりする可能性だってあるわけじゃない?』


「……」


ミザリーの疑問にベイカーが目を丸くした

だがそれをベイカーらが疑問視してなかった、というわけではなく


「ミザがそんな所に気づくなんて…たまげたなぁ」


『アンタ私をなめすぎてんじゃないの?』


「まぁまぁ、でもそれは確かにそうさ。そうなった場合、無駄骨どころか時間を無駄に使わせられたことになる。なにか考えがあるの?レオ」


先導するレオにベイカーが尋ねる


やや、馬のスピードを落としたレオは

ベイカーらと並列する


「動きがなければ直接当たるわ、ガゼルリア・テンパラントに。」


『…それって護国のお偉いさん、リディが森で見たって人よね』


「ええ、あれがガゼルリアと確定した訳では無いけど直接当たれば揺るがす材料はあるわ」


「材料って腕章を見たって以外になにかあるの?」


「…2人も見たはずよ、あの人物が使役していたあの黒箱〈ブラックボックス〉を」


『ハイトエイドも使ってたやつね、それを持ってたら当たりってこと?』


「だけじゃない。そもそも「ハイトエイドも使ってた」というのが少し違うわ」


『?』


「ん、確かにミザの中にはフェンリルの黒箱が納められてる。意味は違えど使ってるって点ではミザも使えてる?ってこと?」


「そういうことじゃないわ。…黒箱は悪魔の魔力、その結晶体。でもその由来は二通りある、一つは悪魔自身がその意思で魔力を形成した物。ミザリーの使っていた魔器や、ミザリーの黒箱は擬似的にそういう形をとっているだけでそれに該当するわ」


「うん、そこまでは分かるけどもう一つは?」


「…悪魔の魔力を強制的に結晶化し、自身の眷属とする。魔の母と呼ばれる悪魔の力よ」



『それって…』


「魔女の檻に封印されていた【魔女】の力ね」


「でも、魔女はミザが倒したはず」


「そこを疑っている訳じゃない、事実ハイトエイドは魔女から黒箱を託され使用していたけれど、ハイトエイドに悪魔を黒箱化する力はなかった」


『つまりどゆこと?』


「そうか!新たに黒箱が作れないなら、ガゼルリアが黒箱を持っている理由は一つだ」


『…ガゼルリアはハイトエイドから黒箱を受け取っていた…?』


「魔女がハイトエイドに黒箱を託したように、ハイトエイドがガゼルリアに黒箱を託した。その繋がりの可能性が見える以上公国も他人事ではいられない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ