second
# misery,s side
「おかえりなさい!3人とも無事で何よりです」
数時間をかけ、再びの道のりを戻り
王都に戻ってきた3人を迎えたのは心配そうな顔で駆けてきたルベリオだった
時刻はまだ日も登らぬ夜明け前だが
そうそうに目覚めていたのか
それとも心配で眠れていなかったのかは定かではない
『朝早いのねラビ、感心しちゃうわ』
「なんだか目覚めちゃって、2人も大丈夫ですか?」
「僕らは平気だよ、ってもミザは…無事とも言いきれないんだよな」
「えっ?」
ベイカーの言葉でミザリーを振りかえる
『ビー…別に平気だって』
「…あれ?ミザリー、髪が…」
日も登らぬこともあり、まだ明るさが足りない室内だったため気づくのがワンテンポ遅れたがルベリオもミザリーの髪色の褪せに気づく
「大丈夫なんですか?」
『まぁそこんとこも含めて話をまとめましょ?今後の行動も考えなきゃ』
「話をまとめる?ミザがそんなことしてくれるなんて…」
『任せるわ、ビー、リディ』
「はいはい、ラビ。イグダーツさんは?」
「間もなく来ます、3人とも座ってください」
そして数分後、イグダーツが揃い
5人、と言っても椅子にかけたのはルベリオ、ミザリー、ベイカーの3人
イグダーツとレオは傍らに立ち席を囲んだ
そして3人は調査での動向を正確に報告した。
「すると…ローブの人物が何者かまでは分からなかったということですね。状況的に無理もない…」
とルベリオが報告を頭で反芻しつつ、不安な要素である謎の人物について零す
「いえ…実は」
レオが言葉を挟む
「確信と言うには多少朧気なものではありますが、私がローブの人物を追跡中見えたものがあります」
『なにか手掛かり?』
「にはなると思うわ。追跡中静止を促す警告のつもりで剣を振ったときにローブを捲りあげたの、その時に瞬間だったけど腕に青い腕章が見えたの」
「青い…腕章?なにかわかりますか?イグダーツさん」
ベイカーはイグダーツに向かい問う
イグダーツは顎に手をやり難しい表情をしていたが
「ドライセン護国の…軍務大臣の腕章が青色です。つまり、その人物は可能性としてガゼルリア・テンパラント…かと」
「なんてことでしょうか…状況的には公国をドライセン護国が敵視し、そのリョフという悪魔を使役していると見ても…」
ルベリオとイグダーツが揃って顔を強ばらせる
『薄々そんな予感はしてたんでしょ?対策ってか、今後どう動くかのプランはあるの?ラビ』
「無茶いうなよミザ、国と国だ。そんな簡単に喧嘩できるような関係じゃないんだよ」
『だったら…どうすんの?』
チラと今度はレオへと視線を移す
「あくまで私達があの場にガゼルリアと思われる人物を見たというだけ、それだけでは動くには情報が足りない。でもガゼルリアの動向は探る必要がある、リョフの動向もガゼルリアから探れるはず」
『つまり…あんま進展してない?もしや?』
「いえ、少なくとも国境付近での悪魔の出没の原因とリョフという存在を知ったこと。ガゼルリアが個人としてか、国としてか公国を敵視しているということが分かったわ」
「そうだね、国としては…どう動く?ラビ?」
「公国は…半年前の傷もまだ癒えていません。そんな中また襲撃を受けるようなことになればまた国民に苦難を強いることに…そんなことはさせません」
未だ幼さの残る顔には不釣り合いの、眉間の皺が王としての責任を感じさせる
『ってことは今度は…』
レオが頷く
「ドライセン護国へと赴く必要があるってことね」
「まぁそれしかないよね、ラビとイグダーツさんはどう考えてますか?」
「今や再びの危機という可能性でしかないですが、それでも動かないという選択肢は取れない。ですよね、イグダーツ?」
「仰る通りです、状況証拠の域をでるものではありませんが…備えること、情報を更に集めることに尽力することが危機を回避することへの最善の手であることは間違いありません。我々の方でも防衛策を強化する方向で進めたほうが吉かと、もし杞憂であってもそれに越したことはありません」
『後手には回れないってことでしょ、ようするに、で?具体的にどうすればいいの?』
ミザリーの問に、他の4人が考え込む
そして、しばしの沈黙の後にイグダーツが口を開いた
「私は今回の件に対してハイゼン武国への情報共有に尽力致します。万が一の際には協力していただくことも視野に入れておく必要がありますし、事態が事態です。」
「そうですね…ミザリー」
ルベリオが改まってミザリーへと向き直る
『はぁい?』
「それにベイカーとレオも、ドライセン護国に行って貰えませんか?もう一度ガゼルリアに会うことが必要だと思います」
「会うってもさ、そんな簡単に会える人物なのか?軍務大臣って言ったら、イグダーツさんみたいな立ち位置だろ?そんな重要人物にいきなし行ったって…」
「会えるとは行かずとも、向こうは私達3人を認識した。ならば護国に入れば向こうから何かしらの反応はあるはず」
レオの言葉にルベリオが頷く
「その反応から何か手がかりというか、今後の動向のヒントを得られれば。向こう側は正体に当たりをつけられているとは思っていない可能性もありますし」
『でも…どうなの?向こうさんがその気なら、私達…戦っていいの?』
「敵対の意思が見える相手に関してはもちろん戦ってください。でも、極力被害は出さないようにあくまで自衛の範囲内でお願いします。」
「…あれ?」
ふっとベイカーが疑問を浮かべる
「でも護国と敵対するってことになればもちろんラビ達も危ないだろ、レオも連れてったら万が一があるんじゃ」
ベイカーの疑問ももっともだ
国と国との戦いになれば現国王であるルベリオにこそ最大の危険があり
公にこそなっていないが
公国の最大戦力はミザリーとレオである
その2人が同時にルベリオの元を離れるということを危惧すべきではないかとベイカーは考えたのだ
「それなら差し当たりの心配はないと思います。今王都の守りは最優先事項として事に当たっており、王城にはハイゼン武国からの支援兵も多く派遣して頂いております。それに彼もいますから」
イグダーツがベイカーの心配を払拭するように説明を始める
「更に大事となれば、例えば我が国への侵攻をするとなればその動きは隠し切れるものではありません。察知して危機回避することも難しくはないでしょう。ですが、これがドライセン護国ではなくガゼルリアの独断の敵意だとしたら察知が困難になります。」
『なるほど』
「また適当に相槌打って…ん?イグダーツさん、彼って?」
『あんたもなかなか薄情ねビー、ロワールよ。』
「ロワール…あ!あのデカいカラスか!そうか、ロワールがいたんだ。」
『鷲だっつってたでしょ、まぁそれならラビの護衛を任せられるわね』
ふぅとルベリオが息をつく
「まだまだ苦労かけてしまいますけどどうかお願いします…僕がもっと強ければ…」
『役どころがあるのよ』
ミザリーがルベリオの言葉を遮る
『私にはできないことがラビにはできるの、ラビにできないことは私らがやるわ』
「ミザリー…」
『ひとまず、やることはわかったわ。ビー、リディ行きましょ。』
「ええ」
「また大移動か、なんか以前を思い出すね」
『年寄りみたいなこと言ってんじゃないわよ、ったく』
「ミザリーとベイカーは少し休んでて、私は国王と少し話をまとめておく」
レオがルベリオを見やると
ルベリオもこくりと頷く
重要な事項などについての話はレオでないと判断できないためミザリーらはそれに甘えようと王室を後にした
そして
王城の階下、門前に椅子が設けられているスペースがある
ミザリーとベイカーはそこでレオを待つことにした
グッと拳を握っては開く
ミザリーは時折自身の動作を確かめるようにそんな仕草をとる
それを横目に見ながらベイカーは尋ねた
「ミザ、ホントに平気なんだね?言っとくけど隠し事はなしだよ?」
『うん?言った通りよ、平気っちゃー平気』
「ならいいんだけど…少しの間戦闘のことはレオに頼ったほうがいいかもね、魔女の魔力が濾過できればそれを使えるようにもなるはずだし」
『頼るって…なんか悪いわよ』
「んなこたないだろ、姉ちゃんに頼んのなんて遠慮するようなことじゃないって」
『なんか…わかんないのよね、その…頼り方というか』
珍しく悩ましい表情を浮かべている
「ま、ミザに姉貴分なんて今まで居なかったしいきなり頼んのは難しいか…」
そもそもがそういう質ではない
それをわかっているベイカーであるが、リーダとの仲を進展もとい家族たらしめるにはあってしかるべきことだとも思っている
「頼るのを躊躇って君が傷ついたりしたらそれこそレオに悪いんだよ。今すぐどうこうは難しいかも知んないけど、頭の片隅に置いといておけばいいよ。」
『片隅に…なにを?』
「君にはレオや僕、それにラビ達も付いてる。1人じゃないよ」
『…ふむ。』
少し照れくさそうではあるが、ミザリーなりにも納得できたようである
ふと
『あっ、そうだ。まだちょっと時間あるわよね?』
思い出したかのように問う
「ん、まぁ話を詰めてるんだろうしそんなすぐ来るってこともないんじゃない?」
『じゃぁちょっと頼まれてよ』
「いいけど…なにを?」




