表現の自由
20XX年、デマや誹謗中傷の嵐と化したインターネットに業を煮やし、政府は『個人情報の保護』、『健全な青少年の育成』を謳い憲法第21条を改正しようとした。しかしこれは『表現の自由』を脅かすものだとして、時の作家たちは喧々諤々と抗議の声を上げたのだった。
「コンプライアンスを守る悪役って何!?」
「なんでもかんでも規制規制って……だったらミステリーとかホラーとか全滅だろ!」
「臭いものには蓋をすれば良いと思っているんだ。歴史を真っ白に塗って、無菌室で子供を育てて……歪な選民思想の成れの果てが、昨今の排他的分断格差云々如何候」
このままでは自由な創作活動ができなくなる。そう懸念した人々の活動によって、無事『表現の自由』は守られたのだった。
「万歳! 自由万歳!」
「これで自由に作品作りができるぞ!」
「ペンは剣よりも強し!」
大喜びした作家たちは、勝ち取った権利に胸を踊らせ、皆自由に筆を走らせた。
『交通事故で異世界に転生した主人公は〜……』
『悪役令嬢に転生したヒロインが〜……』
『売れる作品を……できるだけ長期連載を……』