野辺送り
殯の宮。野辺送り。
星の堕ちた、路地裏に、水死体。
門前町の雑木林を折れた処にある森に、邪法外法に呪われた寺院がある、
其処では、護摩壇があって、険しい顔のお坊さんが、尸解仙の真言を、唱えているという噂。
お寺の壺には、蛇女。軒下には、天井さがり。
枕返しを飼っているという噂も。
旅に出よう、足跡を残そう。
ええ、呪いのように。
姫様道中桜並木の中、狐の従者も交えて。コン。
姫様の簪が、しゃらしゃらと、格子模様の戸板に、乱反射。
人は、彷徨い、生きた証を探します。今も昔も。
悩み多き人間のおかしげなところよ。
山の鬼が嗤います。
古き町並みは、だた黙って佇む。不思議な。
路地裏の、とっくに閉まった着物屋さんの、煤けたがラス台の中で、微笑んでいる日本人形。
唇が真っ赤なのが、やけに気になる。
僕らは赤に呪われた世代。
閑散とした商店街の片隅で、朱い紐を小指に巻いて、風に靡かせる遊び。
櫻の咲くころに、娘さんは、鬼に嫁入り。
刃が見え隠れしている、御重箱。
さあ、もうすぐ銀河鉄道が出発するよ。
先生、この列車で、殺人があったみたいなんだ、犯人の足跡が、天井にまで憑いているよ。
カンパネルラは、ガラスケースに目一杯のゾウリムシを持って。
天気輪の傍で、ホタルイカが海みたいに光っている。
僕らは、布団の中で、銀河鉄道を夢見る、成長痛に苦しむ。
下駄箱のお化けに、恋文を喰われてしまったみたい。
教室の真ん中で交霊術をしていたら、こっくりさんに嫉妬される。
先生、この机の上の花は、とても綺麗だから、僕は泣いてしまう。
美術室のお化けと理科室のお化けが、夜ごとに喧嘩。
二宮金治の銅像があるなら、宮沢賢治の銅像があったっていいと思う。
夢の終わりは、泡沫の始まり。何時だって、時代は巡っている。
内緒、内緒の秘密話は、秘宝のように宿場町に眠る。
鬼退治の鬼やらいたちは、秘密の黒電話で呼び出せるよ、あの秘密の番号は押し入れの中の壁にピンで止められた白い紙に。
秘蔵の風に吹かれて風車がくるくる回る。
呼び止めてご覧よ、ほら。
夢の魔法瓶。
底の方に、目玉が、水に浮かんでいる。
洗面台の隅の方に隠れてしまった月との隠れんぼは、もう終わりだからでておいで、と狐の様に手招き。
風は刻を刻んでいる。
其処の宿場町で、風車が風に吹かれているから、通りゃんせの唄に載せて鼻緒の赤い下駄で千鳥足。
僕らは赤に呪われた世代。
夕暮れ街道沿い。
すっかり人も途絶えて。
遠くからワオンワオンと犬の鳴き聲。
カラスの聲も。
其れに混じって女のすすり泣く聲も、何処からか幽かに。
ころころと毬が転げてきて、くすくすと嗤い聲。
逢魔が時黄昏時には、ご注意を。
電柱にも、看板で、痴漢や通り魔注意の文字が。
此処にも、でるんですね。