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ちびっこ錬金術師は愛される  作者: あろえ
第一章

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48話:アーニャのポーション1

 翌朝、月明かりを取り入れていた部屋に、眩しい太陽の光りが差し込む。


 ポーション作りを終えたアーニャがガサゴソと片付け始めるなか、眩しい太陽光に反応したジルが目を覚ました。しばらくボーッとした後、自分が座って寝ていたことに気づき、ハッとする。


 仕事中に寝てしもた~~~! である。


「ああ、起こしちゃったわね。錬金術の作業台は、使った後に掃除するって決めてるの。悪かったわね」


 周りに紙がいっぱい散らかってるよ、と突っ込みを入れるほど、ジルに余裕はない。


「ぼ、僕、寝ちゃって……」

「別にいいわよ。薬草の選別のために声をかけたんだから、あんたはしっかり役目を終えたわ。正直、月光草に含まれる二つ目の魔力を確認できて、ホッとしたの。やっと前に進めるってね」


 実は、治療薬の開発に数ヵ月ほど大きな進展がなく、アーニャは手詰まり状態だったのだ。分析しても不可解な反応ばかりで、頭を抱えることが多かったのだが、もう一つの魔力を無視していれば、当然のこと。その魔力の存在を認識できるようになっただけでも、錬金術にとっては大きな一歩となる。


 ルーナの治療薬は未完成ながらも、大きな悩みから解放されたアーニャは、過去最高に喜びに満ちて……。


「ちょうどいいわ。お腹空いてるから、なんか作ってちょうだい」


 ぐぅ~っと、お腹がなるほど空腹だった。


「うん。それは大丈夫だけど、ルーナお姉ちゃんのポーションはできた?」


「当たり前じゃない。今回はけっこう良い出来のポーションが作れたわ。月光草の品質をうまく見れてなかっただけで、ここまで変わるとは思ってなかったの。おそらく、二つの魔力が一定以上存在しないと……って、あんたには説明するより見せた方がいいわね。待ってなさい」


 ふっふふーん♪ とアーニャは鼻唄を口ずさみながら、ポーションケースをジルの元へ持っていく。机の上に置いて箱を開けると、そこには十本のポーションがあった。


 今までルーナのポーションを何十本も作り続けたアーニャだか、今回は渾身の出来。すっっっごいドヤ顔を見せるほど、手応えが違った。


「どう、いい感じでしょ? ほらっ、二つの魔力がどうなってるか、ハッキリ言ってみなさい。聞いてあげるわ」


 実際のところ、どうなっているのかわからないアーニャは、ジルに魔力の状態を聞くしかない。素直に、教えてほしいと聞けないのは……察してほしい。


 ポーションケースに入っているポーションを一通り見たジルは、端っこに入っていたポーションが気になり、指を差した。


「これはどうしたの?」


「別にどうもしてないわよ。同じように作ったもの。いい感じでしょ? いい感じよね? いい感じ、じゃないの? え、ダメなの?」


 ちょっと聞かれただけで、アーニャは疑心暗鬼になってしまう。表情がコロコロと変わる姿は、どっちが本当の子供かわからない。


 しかし、ジルはポーションの善し悪しが気になったわけではない。本当に、このポーションが何なのかわからなかったのだ。


「ううん、これ以外は白色の魔力が綺麗に混ざってるよ。でも、これだけ魔力の色が違うの。虹色なの」


「……はぇ?」


 昨日は月光草に魔力色が二つのあると驚いたばかりのアーニャだが、難度の高い素材はそういうケースが稀にある。しかし、虹色の魔力色なんて聞いたことがない。ましてや、錬金術を終えた後に魔力の色が変わるなど、完全に予想外の出来事だった。


 物質変換の工程で月光草の魔力が変質した場合は、濁ると表現するだろう。つまり、虹色に変化しているのであれば、元々の魔力の性質が完全に変わったことになる。そんなことは通常、あり得ない。いや、絶対にあり得ないといっても、過言ではない。


「綺麗な虹色をしてるよ?」


 それなのに、ジルは虹色だと言い張るのである。


 あんた、なに言ってんのよ! と、問いただしたい気持ちを、アーニャは抑える。魔力が目で見えるジルの情報は、今後のポーション作成に大きく関与するほど、大きな情報になるはず。


(私が何も感じないってことは、乳白色の魔力が何かの影響を受けたのかしら。でも、虹色の魔力色なんて聞いたことがないわよ。いったいどうなってるの。ルーナに飲ませて大丈夫なの?)


 うーん、と頭を悩ませるアーニャは、先程までの清々しい気持ちから一変して、大いに悩んでいた。めちゃくちゃ悩んでますー! とアピールするみたいに、両手で頭をかきむしっている。


 でも、でも! サッパリわからない! だって、知らないんだもの!


「綺麗なのよね?」


「うん、一番綺麗だよ。魔力も他のポーションより多いの」


 綺麗なら良さそうと、アーニャは単純な思考にチェンジした。


「深く考えてもわからないわ。こういうときは、一番確実な方法を取るわよ。エリスを起こして、錬金術ギルドの戡定ルーペで確認してくるわ」


「僕も行く!」


「なに言ってんのよ。まだルーナを一人にはできないでしょ。それにね、私はお腹が空いてるの。朝は甘いものって決めてるから、何か作っておいてちょうだい」


 徹夜明けのアーニャは、我が儘だった。これには、さすがのジルも驚く。


「ええっ! 冷蔵庫にオムライスを作る材料しかなかったのに?」


 アーニャの家の冷蔵庫を見たジルは、甘いものなんて作れないよ、と驚いた。朝起きたばかりで料理が作りたくないのではない、材料がなくて困っているのだ。


「もう一つ冷蔵庫があるのよ。私とルーナの朝はね、トーストにたっぷり蜂蜜を塗って、牛乳をグイッといかないと始まらないの。でも、あんたなら他に甘いものが作れるかなって思って」


「じゃあ、作る!」


 料理マニアのジルは、アーニャの喜ぶ笑顔を思い浮かべながら、二つ返事で引き受けるのだった。

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