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7/7

本意


 「……恋愛促進カードについて、少し良いお話をしに来ました」

 「……もう一回聞くぞ。お前、何処でその情報を手に入れた?」


 ……毎度のことなのだが、こいつは予想外の方法で抜け道を見つけたりしてくる。

 だからある程度の個人情報開示については黙認していた。

 ……いや、それもおかしいんだけどね。


 しかし、今回の件に関しては話が変わってくる。

 何故なら、現時点でこのカードの存在を知っているのは、俺を含めて三人しかいないはずだからだ。

 残りの二人というのが、校長と如月だ。

 まさか、校長が情報を流すとは思えないし……如月のことは、疑いたくはない。


 「あ、ご心配なく!先輩の知人が情報を漏らしたわけではありませんから」


 まるで俺の思考を先読みしたかのように、天野が答えた。

 それを聞いて俺は、正直少しほっとした。

 ―――しかしだ。

 

 「……だったら尚更分からないな。お前にこの件について知るための手段は無いはずだが?」


 そもそも、持ち主である俺ですら存在を知ったのは今日なのだ。

 クラスどころか、学年すら違う天野がこのカードの存在を知る方法は、皆無と言ってもいいだろう。


 ……しかし、現に天野は突き止めているわけだしな。

 一体どうしてだ……?

 

 「まあ……先輩が思っているよりも、私の人脈が広かったということですかね~」

 「……どういうことだ?」

 「つまり~……先輩以外にも、カードの存在を知らされていた人がいるということです!―――って、そういう事は先輩にも知らされているはずですよ?」

 「……あ」


 言われてみて、なんとなくだが思い出した。

 確か、成績優秀者である人物が、国内で数名手に入れたんだっけか……。


 「……いや、それはお前、人脈どころの話じゃないだろ」

 「ふっふーん!私の人脈は、海よりも広いのです!」

 

 得意げに言う天野に、思わず海を思い浮かべてしまった。

 こいつ、態度も海レベルででかいからな。


 「はぁ……で?そのカードの存在を知ったお前は、俺にどんな話をしに来たんだ?……なんかちらっと、良い話だって聞こえたんだが」

 「はいっ、それはモチのロン!先輩にとっても、私にとっても利益しか生まれない……いわゆる、ウィンウィンな関係ってやつです!」

 

 天野は、やたらと食い気味に言ってきた。


 彼女がそこまで言うとは……。

 実はこれ、かなり珍しいことだったりする。


 天野桜という人間は、これでもかってくらい現実主義者なのだ。

 決して感情論ではものを言わない。

 とにかく、自分の利益になることだけを考えて生きている。

 

 もしかしたら、天野が今こうやってあざとい感じで俺に話し掛けてきているのも、実は演技だったりするかもしれない。

 そう思うくらいには、彼女は自分を出さない人間だ。


 ……まあ、俺がそう言い切れるのは、天野のあの時の表情を見たからなのだが。


 ……とにかく、そんな天野がここまで興奮しているのは、珍しいことなのだ。

 それほどこのカードが希少価値だと言うことか……。


 「……で、俺に何をして欲しいんだ?」


 とにかく、そこが話の主旨だろう。

 カードの主導権は俺にあるのだから、俺が何かしらのアクションを起こさなければ、天野は動けないはずだ。

 

 ……まあ、とはいえ少しくらいの事ならしてやるつもりではいる。

 特に、このカードに深い思い入れがあるわけでもないからな。

 流石に、カードを下さいとかだったら少し考えるが。

 

 「あはっ、先輩は物分かりがよくて助かります!」

 「……お前な、俺は一応先輩なんだぞ?」

 

 あまりにも扱いが雑すぎる気がする。

 ……まあ、いつものことだから別に良いのだが。

 

 それで俺は、軽い気持ちで天野の提案を待っていた。


 「それじゃ~あ~……先輩、私の彼氏になってください!」

 「うーん!ムリ!」


 思いの外、一番無理なやつだった。

 

 「あー待って待って!別に本気でカレカノやれって言ってるんじゃないんですよ!!」

 「……ええ?」


 意味が分からん。

 本気じゃない恋人って一体何だよ……。

 

 「つまりですねぇ……大雑把に言えば、恋人のふりをするってことです」

 「……ああ、なるほどそういうことか」


 そこまで言われれば、流石に彼女の狙いが分かった。


 「……確かに、このカードは恋愛目的でないと使えないもんな」


 そして、その条件さえ達してしまえば、この世の全てを手に入れられると言っても大袈裟ではないからな。

 ……正直ここまで来てしまうと、このカードの不正対策はがばがばな気がする。


 「言ってしまえばこのカードは富ですからねぇ。そんなのもう、利用したもん勝ちじゃないですか!」 


 そう言う天野は、めちゃくちゃいい笑顔をしていた。

 ……相変わらず、腹黒いやつだなぁ。


 「……うーん。でもまぁ、悪い考えではないんだよなぁ。このまま腐らせるくらいなら……」


 受け取った時点で、所有権は俺にあるわけだしな。

 どう使おうが、それは俺の勝手だろう。

 それに、欲しいものが……ないわけでも、ないのだ。


 「……まあ、取り敢えず明日まで待っといてくれ」

 「……?何でですか?」

 「ああ……明日、如月と一緒にこのカードを使ってみようって約束をしてるんだよ。取り敢えずそこで使い勝手を見てだな……」

 「はっっっや!!」

 「おお!?な、何だよ急に!」


 何故だかいきなり大声を上げる天野。


 早い……?一体何が……?


 「何でもないです!!……先輩も、隅に置けませんよね」

 「……はあ?」


 よく分からない事を言う天野。

 ……やはり、こいつの事を完全に理解するのは難しそうだ。


少し時間が出来たので投稿しました。

不定期ですが、これからもよろしくお願いします。

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