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やばいやつ

 山崎と別れた後、俺は自宅まで早足で向かった。もうこれ以上妙なイベントに遭遇しないようにだ。

 自宅に到着したと同時に真っ直ぐベッドに向かい、その身を委ねる。

 とにかく、疲れ切った身体を休ませたかった。


 俺は、実家から少し離れた所にアパートを借りて、一人暮らしをしている。

 といってもアルバイトをしているわけでもなく、生活費は完全に親に頼り切っているのだが……。

 一人暮らしをしている理由は、単純に一人になれる環境が欲しいというわがままと……後は、家庭の事情だ。

 ……いや、そんなことよりも、俺には考えるべき事があるのだ。

  

 今回の、恋愛重要視制度について。


 この制度の導入によって、高校ではこれからどのような事を学ぶようになるのかはまだ推理の仕様がないが……場合によっては、俺は高校を中退する事も考えている。


 だって、そうだろう。

 学校という、数少ない学びの場において、勉学という概念そのものが無くなるとすると……一体、就職する際の選定基準や試験内容はどうなってしまうんだという話だ。

 

 勉強は、無くてはならないもののはずだ。

 だから、俺がこれまでに積み上げてきたことを活かせる環境というものが、きっとまだ何処かにはあるだろう……と考えている。

 確証はないが……。


 それに、恋愛をするくらいなら……勉強をしていた方が、いくらかましだ。


 

 ピーンポーン―――



 俺が頭をフル稼働させてあれやこれやと考えていたところで、インターホンのチャイムが鳴った。

 一体、誰だろう……とか、そんなとぼけたようなことは言わない。

 俺の住居を知っている人間なんて、限られているのだ。


 父さんか、母さんか、はたまた我らが妹、朱里か。

 それとも―――


 「はい、どちら様?」

 『せ~んぱい!開けて下さいっ』

 

 インターホン越しに聞こえてきたのは、よく知る女の声だった。

 俺の家を訪ねてくるのは、知っている人物のみで言えば四択に絞られるのだが……よりによって、一番引きたくなかった四分の一を引いてしまったようだ。


 「よし、帰ってくれ」

 『えーーー!!』


 少し悩んだ末、俺は回れ右して貰うにした。

 それだけ、会いたくなかった人物だということだ。


 『嫌ですぅ!折角ここまで来たんですから、せめて入れてくださいよ~!!』

 「しつこい女は嫌われるぞ」

 『融通の利かない男は嫌われますよっ!』


 ……むぅ。

 俺は中々帰ろうとしてくれない様子を見て、どうしたものかと長考する。

 手強い相手であることは、こちらも十分理解しているので……これは、一瞬の隙を見逃さなかった方がこの勝負を制することになるだろう!


 『早く入れてくれないと、先輩の住所を学校の放送を通して皆にバラしちゃいますよ~?』


 ガチャリ。


 「よし、入れ」

 「あ、どうも~」


 ……まあ、俺がこの女に勝てないことは、最初から分かっていたんだけどな。



 ◆◇◆◇



 天野桜。この女の名前だ。

 彼女との出会いは……最悪だったな。

 家に入ろうとしたときに、いきなり肩をつかまれたと思えば、


 「はい先輩の住所、特定しました~!」


 などとぬかしながら、俺に脅しをかけて来やがったのだ。

 

 ……まあ、もうここまで言えば、天野がどういった人物なのかは十分に伝わったと思うのだが……とにかく、コイツはやばい。

 何がやばいかと言えば、全てがやばい。

 見た目や雰囲気に惑わされてはいけない。天野に捕まってしまえば、そこで人生終了。

 俺なんか、彼女のせいで生活スタイルを変えたほどだ。


 「先輩、浮かない顔してどうしたんですか?」

 「……主にお前のせいなんだけどな」

 「またまた~。こーんな可愛い後輩がお部屋にお邪魔してるっていうのに、その物言いはないんじゃないですか~?」


 ……よく言うぜ。

 俺は今まで、何度お前に騙されてきたことやら。


 「……それで?今回は何の用だよ」 

 「あ、もうそこに触れちゃいます?先輩って意外とせっかちですよね~」


 あはは~、といった感じでとぼける天野。

 もう数秒そのあほ面を俺の前で晒すようなら、この場でぶん殴ってやろうかと考えていたのだが……すぐに彼女は真剣な表情になった。


 「もう、分かっていると思うんですけどね……恋愛促進カードについてです」

 「……お前、どこでそれを?」


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