明日がこわい場所【ゴミとカラス】
近所の住人がいなくなってしばらくすると、カラス達が戻ってきてカラスよけの網の隙間にくちばしを突っ込んで、袋を破って食べられそうなものを物色し始めました。
カラス達はくちばしでゴミ袋の中身を取っては、食べられない物は放り投げ辺りゴミを散らかしてもお構いなし。そして食べられる物を見つけては食べていました。
ララはその様子を目を丸くして見ていました。
その時遠くからゴゴゴゴ・・・と車が近づいてくる音がしてきました。ゴミを収集するために収集車がやって来たのです。
あちこちに設けられたゴミ収集場のゴミを収集車に放り込みながら、こちらまで近づいて来るのが見えてきました。
カラスはそれに気もとめず、見つけた食べ物を食べ続けていました。そして収集車がこちらのゴミ収集場にやってきて、カラスはようやくゴミから離れると、この場から離れて飛んで行ってしまいました。
「あ~あ!こんなに散らかしやがって、カラスのヤツら。」
清掃員が文句を言いながらカラスが散らかしたゴミをホウキを取り出して片付け始めました。
ホウキで収集場の周りを掃きながらララの存在に気づきました。
「ん?・・・なんだお前、わんこか?
随分大きいわんこだなあ。どうした、こんな所につながれて。」
ララはキュ~ンと鳴きました。
「いつからここにいたんだ?お前さんの飼い主はどうした?こんなゴミ置き場になんかつながれて、可哀想に・・・、棄てられたのか?」
そう言いながら清掃員はララの頭を撫でました。ご主人とずっと会えずに寂しくて不安だったララは、人にやさしく撫でられて泣きそうになりました。
しかし、それも束の間
「じゃあな。俺はまだ仕事があるからお前さんにかまっていられないんだよ。」
清掃員はそう言うと次の収集場へ行ってしまいました。
ララは遠くなる清掃車を見送りました。
そして誰もいなくなったゴミ収集場で
またひとりぼっちになりました。
ララがいるのは住宅街のゴミ収集場。
太陽が真上に昇った頃には、誰もいない静かな様子になりました。
ララは地面にあごを伏せて、ゴミ収集場から見える町並みを見ていました。
ララのお腹がグウっと鳴りました。
『お腹空いたなぁ・・。』
ご主人から離れてから、ずっとごはんをもらっていなかったので、ララはかなりお腹が空いていました。
カラスが朝ゴミをあさっていたのは、お腹が空いていたからなんだな・・と、ララは気が付きました。ララは自分でごはんを探すことなんて、一度もしたことがなかったので、もちろんそんなことは出来ません。
『どうしよう。あたしはこのまま何も食べられずに、ずーーっとここにいるの?ご主人、早く迎えに来て!』
ララは不安と、怖さと、哀しさで涙があふれて仕方がありませんでした。