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大陸ユーリシア ①

12月27日。コミカライズ11話が、ピッコマ様にて先行配信となります。

※今月から、先行配信先が変更になります。


とっっても見応えのある回です!

料理長 コミカライズも マッチョです(川柳的な)

「では行ってくる」


 分厚い外套を纏ったシンジュが颯爽と馬車に乗り込む姿を見送り、ナルは屋敷に戻った。

 年の瀬ゆえに、シンジュは忘年会へ向かったのだ。

 今年は蝗害諸々と慌ただしい日々が続き、官吏たちの疲労は凄まじい。

 だからこそ、今日の忘年会と年始の三日間だけは褒美としてゆったりと過ごすことにしたという。


 もっとも、休むことの出来ない仕事が例年より多いため、官吏の休暇は交代制となっている。

 すべての部署ではない。

 だが少なくとも、シンジュが属する外交関連の仕事はとにかく多忙なのだ。


(旦那様が、『部下たちを労ってやらねばならん。来年も馬車馬の如く働かせるためにな』って言ってたのは、聞かなかったことにしよう)


 シンジュが労うというのだから、今日の忘年会はさぞ楽しいものになるだろう。

 参加するシンジュの部下なる者たちには、全力で楽しんでほしいものだ。本当に。


 ナルは子ども部屋に向かい、すやすや眠る我が子の顔をじっと見つめる。

 一歳と半年。まだまだ手の掛かる子だ。

 ちまっと見えている前歯が可愛くてたまらない。

 

(いつかこの子が大人になって、愛する人と幸せに過ごす日々が見たいわね)

 

 パチッと暖炉の薪が爆ぜた。

 なんだかんだと年末は慌ただしい。

 今日も一日動き詰めだったせいか、ぬくもりに満たされた部屋はナルの睡魔を誘う。


 少しだけ、と自分に言い訳をしてベッドに突っ伏した。


 夢を見た。

 夢のなかのナルは真っ白い部屋にいた。

 不思議なことに、森林の清らかな香りに満ちており、とても心地が良い。

 その部屋の窓から、ナルは眼下に広がる街を見下ろしていた。

 やがてナル一人だけだった部屋に、見知らぬ男がやってきた。

 その男は二十歳ほどと若く、白い髪と金の瞳を持っている。どちらもこの世界では珍しいものだ。

 男がふっとこちらを振り返った。

 男は驚愕を浮かべ、あっという間に――修羅のような顔になる。

 彼はナルに飛び掛からん勢いで近づいてきた。

 明確な殺気が、心胆を寒からしめる。


「――ま。奥様!」

「きゃああああああ!」


 跳ね起きたナルは、慌てて辺りを見回した。

 すぐ側にぽかんとした様子のカシアがいる。彼女がナルを揺すって起こしてくれたのは、中途半端に差し出された手の位置から推測できた。

 心臓がうるさいほど音をたてている。


(もし夢から覚めなかったら、殺されてた)


 考えてゾッとした。

 ただの夢とは思えなくて、自分の身体を抱きしめる。


「奥様、顔色が優れません。温かい飲み物をお持ち致しましょうか」

「え、ええ。カシア、起こしてくれてありがとう」

「うなされておられました」


 カシアは控えめに告げると、頭をさげて部屋を出て行く。

 時計を見ると思っていたよりも時間が過ぎている。

 ナルは息子が眠っているのを確認してから――ナルが悲鳴をあげたとき、じつは少しぐずっていたがまた眠ったらしい――、子ども部屋を出た。


 時間が経つにつれて夢で見た恐怖は薄れてきて、所詮ただの夢だと思うようになる。

 自室でゆったりと過ごしていると、カシアがきた。

 手に紅茶かハーブティを持っているかと思ったが手ぶらだ。

 彼女は困ったような表情で、こそりと告げた。


「お客様がいらしてまして」

「お客様?」


 夜更けに、しかもシンジュが不在の今、誰かを屋敷にあげるのはまずい。

 シロウならば顔パスだが、それはカシアも承知しているため、こうして伺いに来たと言うことは別の者だろう。


「どなたなの?」

「奥様の騎士様方と神官長様です」

「リンとアレクと……師匠!? なんで師匠!?」


 神殿関係者が出入りしていると噂されたくない。

 思わず保身に走った考えをしてしまったことを悔いたが、いやいやここはむしろ保身に走るべきだろうと思い直す。


(いえ、師匠だってそれくらいわかってるはず。たぶん、急用なんだわ)


 カシアに対応させるには荷が重いだろう。

 ナル自ら玄関へ向かった。

閲覧ありがとうございました。続きものになります。

前回のお話(ナルが旅行に行くやつ)が重めだったので、今回は軽いテイストでいけたらなと思っています。


ポチッと評価をして頂ければ嬉しいです。

如月のやる気がもりもり上がります!


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