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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
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家、探してます⑤

 落ち着くまで二人で見てますから、とタークスさんには独り離れて煙草でも吸って貰う事にした。ぐるっと屋敷の外周を一周して来たところで、平静を取り戻したタークスさんと合流する。


「先程は大変ご無礼を、年甲斐もなく醜態を晒してしまいました。」

「いいんですよ、大抵の人は冗談と受け取るかただの嘘つき扱いするんですけどね。」

 どうやら完全に情報を整理できたらしい、落ち着き払っている。


「確かにそういう方もいらっしゃいますでしょう。しかし私も長年この商売をやっておりますから、どうも嘘の類には鼻が利くようになっておりましてね……。」

 なるほど、一つ一つの額が大きいし、詐欺師なんかも相手にしてきた過去があるのかもしれないな。


「じゃあ信用して貰えたついでに単刀直入に言います。キイも気に入ったみたいだしこの家に決めますよ。すぐに住めたりできますか?」

 タークスさんにそう伝えると、少し困った顔をした。お金を払えば終わりって事でもないのか?


「すぐに……、と申されましても、長らく放置していましたのでねえ。まずはこちらで設備の点検と清掃等を行いませんと。それに、まだ屋敷の中はご覧になられていないのに決めてしまってよろしいのですか?」

 確かに中は見てないけど、キイがこれだけ気に入っているしなあ……。多少床や壁に穴が開いていたところで、ここ以外に心変わりがするって事も考えられない。


「構いませんよ、他にこれと同じ家があるなら話は変わりますが。実はまだあったりします?」

「いえいえ、流石にこれと同じものはございませんよ。でしたら出来る限り早急に準備をさせていただきます。」

「お願いします。それと、清掃だけで構いませんよ? 修繕が必要なところがあれば俺達でどうにかしますから。」

 住むのは三人だしな。使えない部屋は使わなければいいだけだろうって気もする。


「左様でございますか、畏まりました。ではすぐにこちらで清掃業者を手配させていただきます。」

「お願いします。」

「それと、お急ぎのようでしたら本日中に契約書をお渡ししますので、後程宿泊先にお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 そうだな、焦って決める事は無いと思っていたが、逆に決まってしまったんならその先は早いに越したことは無い。


「えーっと……、夜なら確実にいると思います。夜でも構いませんか?」

「勿論です。では、夕食を終えた頃にお邪魔致します。」

 タークスさんはそう言って頭を下げた。

「大体でいいんですけど、総額で幾らくらいになりそうですか?」

 この町の空き物件なら予算内に収まる、と言われたので何も考えないで決めてしまったが、年代物とはいえこれだけの建物だ、予算ギリギリって事も考えられる。


「そうですねえ、修繕費が掛からないとなると……。六千万マグ前後、といったところでしょうか。失礼を承知で申し上げますと、買っていただけるだけでも有難いくらいでございますから。」

 あれ、思ったより随分安いな。そんなに厄介な代物だったのか。まあいつからかはわからないけど、少なくともタークスさんのお爺さんの代から空き家なんだしそんなもんなのか。



 タークスさんはこれから少しこの場所でやる事がある、と言うので、俺達はタークスさんに別れを告げて町に向かう。


「いや、いい買い物をしたのうお主。あの様式の貴族屋敷はもうエルフの国にもあまり現存しておらんのじゃ。」

 キイは嬉しそうにそう言うが、逆に心配になる。

「それって欠陥があるから廃れたって事じゃないのか?」

「欠陥があるとかいう訳ではなくてじゃな、あの屋敷が造られていた頃は、中心に据える柱に世界樹のマナを宿しておってな、その柱の加護を目一杯受けられるような設計がなされておるのじゃ。今ではそのマナ宿しができるエルフが少なくなってきておっての。そこに人間の技術が入ってきたものじゃから、今では殆ど見かけないというわけじゃよ。」

 柱にマナ……ねえ。エルフにしかわからない話だな。


「世界樹の加護か、あの屋敷の柱にもまだそのマナがあるのかな。」

「マナ自体は世界樹がある限り失われるものではないからの。眠ってはおるかもしれんが。」

「もしかしたらマナがキイを引き寄せたのかもしれないだろ?」

「ふふ、いくらなんでもそこまで強いマナはありはせんよ、せいぜい風邪の予防くらいじゃ。」

 いきなり随分と小さな話になったな。


「なんだそりゃ。世界樹の加護って風邪予防なのかよ。」

「ふふ、がっかりしたかの?」

「あー……、いや、助かるよ。健康第一だからな。」

 そうだ、よく考えたら凄い事だ。風邪は万病の元って言うくらいだしな。


「よろしい。まあ住んでおった貴族の階級にもよるじゃろうが、もう少し強いマナが宿されておるかもしれんな。」

 もう少し強いと言っても、通常が風邪予防ならせいぜい快眠機能付きとかだろう。

「まあ強いに越したことは無いんじゃないか?」

「そうじゃな。」


 他愛もない会話をしながら歩いていると、別れ道に差し掛かった。

 町のある方角へと伸びる道と、それとは違うもう一つの道。この町に来た時に真っ先に向かったので覚えている、この道はギルドへ向かっている筈だ。それを見ながら、キイが思い出したように言う。


「そうじゃ、シヴはまだギルドかの?」

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