家、探してます④
午後の二軒を取りやめた俺達は、町のはずれにある今まで見た中で一番大きな屋敷の前に居た。
「これですか?」
「はい、こちらでございます。先代が物心付く頃にはすでに売りに出されていたという事でございます。
建物自体は古いですが頑丈で、部屋数も多く庭も広いのですが……。この通り町と森の間にございまして、
木々は生い茂り虫も多く、手入れをしてまで住もうという方が現れませんものでして……。私も滅多に思い出しません。」
まあそうだろうな、俺はあまり気にならないが。
庭の手入れなんて、旅しかしてこなかった俺からすれば、むしろ憧れすらある。
「取り壊しを考えた事もございましたが、これほどの物を更地にするとなると費用も馬鹿になりませんから、このような有様でございます。」
そうだよな、頭が痛い問題だ。でもそれだけ長く放置されていている割には、建物自体に傷んでる箇所はあまり見られないように感じる。
「どんな人が住んでいたかもわからないんですか?」
「先代が大雑把な性格でして、恥ずかしながら資料が残っておりません。王族が住んでいた、という話は先代から聞いたことがございますが。しかし、人間の王族ではなかったと言っておりました。」
「となると、獣人かエルフ、魔族という事もあるのか? どう思う? キ……。」
ふとキイを見ると、なんだか小刻みに震えていた。
「……良いのう、これは良いのう! アレン、ここに決めんかの!?」
なんだか偉く気に入ったようだ。普段は冷静なキイがこんなに感情を出すのも珍しい。
「一体どこにそんなに感動しているんだ? 森が近いからか?」
「わからんのか? これはエルフの建築物じゃ。」
見た目に特徴でもあるんだろうか、タークスさんも資料がないからハッキリとはわからないと言っていたのに。
「この造りの建物はワシのお爺様が王じゃった頃の物じゃ。お爺様が鎖国を解いて、他種族と親交を持ち始めた時期に建てられたのじゃろう。門柱に刻まれている紋様は、間違いなくエルフの家紋じゃ、誰の物かまではわからんがの。」
つらつらとこの建物の事を説明するキイにタークスさんが目を丸くしている。
「??? あの、失礼を承知でお聞きしますが……、奥様は一体?」
まあ突然ペラペラと、謎の物件として扱ってきた物の答え合わせが始まったのだから無理もない。
「キイはエルフの女王ですよ、あと奥様ではありません。」
「元じゃ。」
時と場合にはよるが、常に隠す必要もないので聞かれれば答えるようにはしている。まあ冗談と受け取られる事の方が多いからタークスさんの反応は意外だった。
「……元奥様の女王様でございますか? 女王様の元奥様……? 夜は女王様……?」
「落ち着けタークス、エルフの国の元女王じゃ。」
冗談と受け止めなかったせいで酷く混乱していたタークスさんが、キイの説明で整理できたのか言葉を失った。