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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
199/209

本戦を見学します⑤

 多少ばたばたしたものの、少し冷めた昼食は問題なくとる事が出来た。

 もしかしたら今日もシヴが現れるんじゃないかと思ったりもしたが、その気配は無かった。色々聞きたい事があったんだが。


 準決勝第一試合はピーニャとカピロで行われた。

 ピーニャの動きに翻弄されたのか、重そうな打撃を貰うカピロの劣勢だと思われた。

 しかし、突如突進を始めたカピロはピーニャの隙をついて捕まえる事に成功した。

 そのまま悠然と場外に向かって歩き始めたので、誰もがピーニャが場外に捨てられて終わりと確信したのだが、ピーニャは自分で自分の肩を咬み千切り始め、その場で場外に投げ捨てようとしたカピロの腕から脱出、まさかの頭突きでカピロから勝利をもぎ取った。

 何で自傷していたのか、その後何で抜け出せたのかは俺にはちょっとよくわからないが、最初のタロス戦でついた肩の傷も開いたみたいで、ピーニャの白い毛皮が血で真っ赤に染まっていてかなり痛々しかった。


 続く準決勝第二試合はナインハルトとカローニ。

 勿論俺達はナインハルトを応援したが、一番応援に力が入っていたのは何故かミームだったのが面白い。本気でエルフとして扱うつもりじゃないだろうな。

 今までの試合の流れから、二人は様子見から入ると思っていたんだが、意外な事に開始と同時に攻め合っていた。

 途中、ナインハルトとカローニの手がぶつかったのは見えたが、どうもその時にナインハルトは裂傷を負い、カローニは骨折をしたみたいで、そこからは互いに残った腕一本。中距離で突きの差し合いになった。

 決定打を与えられず、逆に貰う事も無く。しばらくその状態で膠着していたが、カローニが先にナインハルトに剣を落とさせる事に成功する。

 だが次の瞬間には、カローニの膝蹴りを血だらけの拳と自分の膝で挟むようにして止めているナインハルトの姿があり、シヴは直後に試合終了の合図を出していた。

 膝辺りへの攻撃だったので当然カローニの意識ははっきりしているみたいだが、起き上がれない所を見るに折れたか外れたか砕けたか……、とにかく試合続行は不可能になったみたいだ。


「なあ、肘じゃなかったけど、あれってシヴがよくやる奴だよな。」

「うむ、格下を馬鹿にする時にの。」

 そう、チンピラにしょうもない絡まれ方をした時なんかに、力量の違いを見せつける為にシヴはあれをよくやる。本人曰く、趣味は悪いが「勝てない」と思わせるのに丁度いいんだそうだ。

「オウル試験の時のあれ、シヴの必殺技かなんかと勘違いしてるのかな。」

「流石にそれは……、いや、無いとも言い切れんかナインハルトじゃからの。」

 誰でも思い付く事だが、実際に出来るかどうかって言われればほぼ無理だろうあれ。

 ナインハルトの普段の物腰から想像できないが、流石にダコタという過酷な町で生き延びて来ただけはあるんだな。


 試合も終わり、オサモンさんとシヴが何か話しあっている姿だけが闘技場に残された。

 それも長くは続かず、何かの結論が出たようでオサモンさんは拡声器に手を掛ける。

「観客の皆様方! 御覧の通り、準決勝二試合まで終了いたしました。残すところは後二試合、三位決定戦、そして今大会の覇者を決める決勝戦となっております。決勝戦は間違いなく行う事をここに宣言致します。但しご覧になられた皆様方もお分かりかとは存じますが、カローニ選手の負傷が大きく、三位決定戦を予定通り行えるかどうかが難しいのが現状です。大変心苦しいのですが、今後の発表をお待ちいただけますようお願い申し上げます。」


 オサモンさんはそう言うと、すぐに決勝を行わずに一度選手の体調を整えると付け加えた。まあ当然か、カローニにしろナインハルトにしろ、そのまま闘技場に残って戦えってのはきつすぎるしな。

 最後にその間、何か催しを行うとも言ってたな。本人は気を使ってるのかそんな事言わないが、正直エヌは退屈してるだろうから子供が楽しめるものだといいんだけど。

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