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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
195/209

本戦⑨♦

「なんだよっ!?」

 空に舞い上がったピーニャは魔力の壁を蹴り、落下の勢いに任せてカピロの頭上へ。先程踵を打ち込んだ場所目掛け肘を構える。

 カピロはすぐに防御しようとしたが間に合わず、上げた腕をすり抜けピーニャの肘がめり込んだ。

「ドーンッ! その二にゃっ!」

「ぬぐぅっ!」

 痛みと衝撃に耐えながら、防御の為に上げた腕でピーニャを掴もうとするカピロだったが、ピーニャはカピロの頭を掴んでその顔面に膝を叩き込み、その反動で背後から迫るカピロの手首を蹴り飛ばす。


「そんな簡単に捕まらないにゃよーだ。」

 すでにカピロから離れ着地したピーニャが、舌を出してカピロを挑発した。

「もうとさかに来た! 奥の手を出すからな!」


(奥の手?)

 カピロがそんな事を言い出したので、シヴはまた闘技場を壊すつもりなのかと身構える。

「何をするつもりにゃ? さっきの技ならどれだけ出してもきかないにゃよ!」

 アーダー戦でやった技も、闘技場を波打たせるあの技であっても、自分には一切無効だとピーニャは言い放つ。

「そんな小細工じゃねえ!」

 カピロは両腕を顔の前で交差させると、おもむろにピーニャに向かって一直線に走り始めた。

「突進あるのみよ!」

「やっぱりおつむも筋肉にゃ!」

 ただ単に自分に向かって来るだけの肉の塊を躱すと、ピーニャはすれ違いざまに爪を立てて傷を与える。

 しかし、お構いなしにカピロは方向転換してまたピーニャに向かって走る。


 数回それを繰り返し、小さいが無数の傷を負ったカピロ。

「こんなもんは擦り傷よ! 当たれば俺の勝ちだ!」

 実際カピロの本気の突進は岩をも砕く。

 とはいえピーニャは完全に見切っていたので、より深い傷を与えようとすれすれの回避を心掛け始めていた。

 狩りでこのような突進を繰り返す大型の魔物と相対する時は、上回る速度で翻弄し、首への一撃で仕留めるのが獣人の常套手段なのだが、カピロはその首を二本の腕で覆っている。


(お腹しかないかにゃ。)

 ピーニャは次にすれ違う時、カピロの脇腹へ深く爪を突き立て勝利する青写真を描いた。

 それを現実のものとするため、迫るカピロから遠く離れるように走るピーニャ。


「逃げんなこんにゃろう!」

 カピロも追うが、速度に差があり過ぎる。

 二人の距離はどんどんと開いていった。


「これだけあれば十分にゃ!」

 カピロと自分の間に取れる限りの距離を取ったピーニャは振り返り、一気にカピロへ向けて加速する。

 開いていた二人の距離が一気に縮まり交差する瞬間、ピーニャの予定通りカピロの脇腹にその爪が深く突き刺さった。

 そのまま切り裂いてカピロの脇を通り抜けようとするピーニャの視界を、突然黒い何かが覆う。

「!?」

 黒い何か。それはカピロの羽根だった。

 弾力のあるカピロの羽根に一瞬包まれたピーニャは、視界を取り戻そうと咄嗟に身体を反転させる。


「よっしゃ捕まえた!」

 カピロはその一瞬を狙っていた。

 身体の傷は必要経費と割り切って、ピーニャの僅かの静止にだけ神経を集中し続けていた。

「やっちゃったにゃ……。」

 両肩を掴まれ持ち上げられるピーニャ。カピロの力は強力で、振りほどく事は叶わない。


「しかし痛てーなこんちくしょう!」

 ピーニャ渾身の一撃だったので、脇腹の傷は当然かなり深い。カピロの足元には血溜まりが出来ていた。

「参ったって言やあこのまま離してやるが、どうするよ?」

「言わないにゃ。」

「おうおう、負けず嫌いは身を滅ぼすぞ。嫌いじゃねえがよ。」

 カピロはそう言うと一番近い場外へ向けて歩き始める。


「このまま外に落としてやる。女をいたぶる趣味はねえんだ。」

「魔力ぶつけてきてよく言うにゃ。」

「それはそれよガハハ。」

 ピーニャはもがいてはいるものの、やはりカピロの手は外れそうに無い。ただただ近付く場外を見る事しか出来ないでいた。


「しかし普通の嬢ちゃんでこんなに強ええんならよ、王様なんかとんでもねえだろ。獣人って一番強い奴が王様になんだろ?」

 実際には心技体が揃っていなくてはならないのだが、そういう噂程度ならカピロも耳にしていた。


(そうにゃ、パパならどうするかにゃ……?)

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