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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
156/209

予選を見学します①

 一回戦は知り合いも出ていなかったので、特に見所も無く終わった。

 続く二回戦にはピーニャが出ていたのだが、俺達の心配虚しくあっさりと勝ち上がってしまった。


「ピーニャって本当に強かったんだな。」

 次から次にバタバタと他の選手を倒していく様は圧巻だった。多分どこかでトールさんも安心してるんじゃないかな。

「あれでもかなり抑えているように見受けられましたよ。」

 ローランが言うにはまだまだ底が見えないらしい。


 三回戦の選手達が闘技場に上がって来ているが、今回も知り合いは居な……、居た。見覚えのある大男が全力で観客達にアピールしている。

「……あれコゲパンさんだよな?」

「コゲパンさんですね。」

「コゲパンじゃな。」

「コゲパン……? ガルボニーの事を言っているのか?」

 ハバキはコゲパン事件を知らないから無理もないが、あの人ガルボニーって言うのか。


「シヴに挨拶してるし間違いないな。」

 コゲパンさんは目立つだけ目立った後、シヴに頭を下げているのだが……、どうもシヴはコゲパンさんの事を忘れているらしい。首を傾げて何か言っている。覚えられて無かったのがよほど堪えたのか、コゲパンさんは肩を落として選手の列に戻って行った。


「酷いな。」

「いや、覚えておるが面倒じゃから知らぬ振りをしただけじゃろ。」

 尚更酷いだろそれ。


 三回戦は一回戦と同じように、特に見所も無く進む。一応我が家に来た事のある人間なので、一応コゲパンさんを応援してみたが、一応勝ったみたいな地味な試合展開だった。あんなにアピールしといて普通かよ。

「コゲパンさん、勝ち進んだな。」

「ええ、あの人実は結構強いんですよ。デンゼル様にその腕を見込まれて警護を担当しておりますから。」

 デンゼルってあの、庭に戻ったら何故か鼻血出してた貴族か。ローランが当然のように言うが、知ってたんならそういう情報は先に教えておいて欲しい。


 四回戦は獣人の男が二人出場していて、周りの選手を全員倒した後、二人共座り込んで何もせず制限時間を待つ、という暴挙をやってのけた。

 当然観客席からは罵詈雑言の嵐だったが、シヴもオサモンさんも何もしない所を見るに、これは作戦として認められたんだろう。どうせ十一試合目では八人になるまでやる事になるんだし、それまでは何人残ろうがお構いなしなんだろうか。


「ドルフは怒らないのかな? あれってちょっと格好悪くない?」

 ハバキはどう思うか聞いてみる。騎士道精神の観点から見るとどうなんだろうか。

「いや、そうでもない。私の見立てではあの二人の力量は拮抗している、どちらにせよ制限時間を迎える事になるんなら、潔くその時を待とうという事だろう。これだけの観客からの罵声や怒号を受け流している精神力は大したものだよ。」

 そんなもんだろうか、獣人と人間では価値観が少しずれているんだろうな。



 四回戦と五回戦の間に一度目の休憩時間を挟むらしいので、今の内に用を足そうと待機室へ戻る事にした。どうせなら飲み物を買おうとエヌを連れて売店を目指すが、最初に俺達を案内してくれた黒服の人に止められる。

「申し訳ありませんが一般客席の方へはお通しできません、何が起きるかわかりませんから。」

「や、でも俺はハバキに付いてきているだけで一般の町民ですよ?」

「お付きの方でも同じです、問題にならないと思われますか?」

 そりゃそうだが……。


「ジュース買えないの?」

 エヌが残念そうに聞いてくる。子供にこんな顔をさせるなんて良心が痛まないのかこの黒服は!

「施設内で購入いただける物は、待機室の方で全て注文できるようになっているとご説明申し上げた筈ですが……?」

「え!?」

 聞いてなかった……。エヌにこんな顔をさせたのは俺だったか。


「す、すいません、ちょっと戻って確認しますね、ほんとすいません。」

 馬鹿にした顔一つせずに俺にお辞儀をする黒服の方を尻目に、ハバキの所へ戻る。丁度待機室へ入って行くのが見えたので俺達もすぐに部屋に入った。


「どうしたアレン、飲み物を頼むのなら私の分も……」

 ハバキが俺とエヌを見て言う。待機室に居ると思ったら居なかった上、後から追うように入って来たので少し驚いているようだ。

「何で言ってくれなかったんだよ、ここで頼めるらしいじゃないか。」

「知らなかったのか? ずっと横に居たから聞いているものだと思っていたが。」

 そうだよ、俺は横に居たのに聞いてなかったんだよ。

「うん、ごめん。俺の手落ちなんだけど取り敢えず何か言いたくて。」

「……? よくわからんが、まだ頼んでいないなら一緒に選ぶとしよう。」

 ハバキっていい奴だな。

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