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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
152/209

予選前①

「そろそろ会場に向かう準備をする時間ですよ。」

「ん……? ああ……、おはよう。」

「おはようございますアレン様。」

 ローランに起こされ、部屋の窓から外を見る。町は人で溢れていて、そこら中に露店が立ち並んでいた。


「どうだったあの後?」

 みんながみんな我が儘を言うので、ハバキの所にローランとエヌ、ミームの所でキイを押し込んで、代わりに御者の人をこの部屋に連れて来た。そうしてトールさんには床で寝て貰って、御者の人と俺はベッドで寝た。

「これでは折角の私用の旅が台無しだ……、と言っておりました。」

「はは、じゃあ今夜は人員配置を変えてやろう。」

 軽く身体を伸ばしながら部屋を見渡すが、トールさんと御者の人は居ない。


「あれ、二人は?」

「トールさんはもう会場に向かわれましたよ。ピーニャちゃんを探すとか言ってましたが。」

 まああの人の目的というか、心配だから見に行きたいって話だったからな。

「そっか、御者の人は?」

「馬の世話をするのが仕事でもありますので。」

 って事は馬車を停めた辺りに行ってるって事か。人任せにする訳じゃ無かったんだな。


「もう皆準備して待ってるのか?」

「ええ、この宿の入り口で落ち合う事になっております。」

「わかった、すぐ行くよ。」

 俺だけが遅れてしまった訳か、みんな元気だな。


 急いで準備を済ませて部屋の鍵をかけ、宿の受付に鍵を預ける。今日もここに泊まる事になるので貴重品しか持って来てはいない。

 勿論トールさんは居ないが、代わりにミームと、初めて見る執事風のエルフが加わっている。

「遅い! 朝が弱いんじゃエルフの国には住めないわよ!?」

 ミームが何故か一番怒っているが、エルフの国に住む気はないので、苦笑いだけ返して無視することにした。

 他の面々も挨拶をしてくるので、俺も返していく。


「おはようアレン。すまんな、どうしても一緒に行くと聞かなくての。」

 キイが謝ってくるが、別にそこは気にしてないからいいのに。

「それは別にいいんだけど、それよりさっき受付の人に聞いたらもういい席取れないんじゃないか? って言われたんだよ。」

「それは大丈夫だ、私達の席はもう用意されている。一応来賓として取り計らってくれたようだぞ全員。」

 まあハバキが居ればそうかもなって気はしてたから、実際そこまで心配はしてなかったんだけど。


「という訳で、ご飯にしたいと思いまーす!」

 ミームが元気よく右手を上げて、そう叫んだ。常にこのノリで生きているんだろうか、女王がこれでエルフの国は大丈夫なのか?

「申し訳ありません、久方ぶりに公務以外で他の国に来る事が出来て、少々気が昂っておいでです。」

 初顔合わせのエルフの執事がそう静かに俺に説明をしてくれる。

「いえ、構いませんよ。俺はアレンって言います、よろしくお願いします。」

「セバスです、お見知りおきを。」

 ああ、この人がセバスさんか。きっと苦労してるんだろうな。


「ミーム女王陛下と私達が同じ区画に通されるとは思えないが、目的地は同じだ。食事をして向かっても問題はないだろう。」

 ハバキがそう言うので、俺は頷いて返してみんなを見る。

「折角のお祭りだし、どうせなら買い食いしちゃおう。美味しそうな屋台が沢山見えたんだよ。」

「さんせーい! 歩きながら食べてもうるさい大臣が居ないなんて最高ね!」

 セバスさんよりもその大臣の人の方が苦労してそうだな、この口ぶりから察するに。

「じ、実は私もそういうのはあまりしたことが無くてな。その、少し嬉しいな。」

 ハバキはまあそうだろうな、平民の出とはいえ、規律正しい騎士だった訳だし。

「未知の香りが漂ってますからね、今後の役に立つかもしれません。」

 この町は様々な地方の物が集まってくるからな、ローランの料理の幅が広がるなら俺達にとっても素晴らしい事だ。


「早く早く! どれから食べる!?」

 ミームがすでに先導していて、遠くからこっちを向いて手招きしている。勿論横にはセバスさんがいるが、女王を先行させる事に危機感を覚えたのか、ハバキとローランがすぐに追った。


「疲れるじゃろう?」

「うん、大臣は大変だろうね。」

「ふふ、一度見に来ると良いのじゃ。怒ったり青ざめたり……、大臣の顔の色がころころと変わるのは一見の価値がある。」

 キイがそう言って、大臣の事を思い出しているのかクスクスと笑う。

「私達もいこー! お金あんまりないけど……。」

 キイと手を繋いでいるエヌが、残った手で俺の手を取った。

「エヌはお金の事なんか気にしなくていいよ、キイが無理やり連れて来たんだし。」

「そうじゃよ。それにしても……。」

「それにしても?」

 俺とエヌを交互に見て、最後にエヌと繋がった自分の手を見るキイ。

「いや、何でもないのじゃ。さあ、ワシらも早く合流するとしよう。」

「変な奴だな。」


 予選まであと少し。タイラーとニイルが居るのが気にかかるけど、シヴも居るし何とか無事に終わってくれればいいな。

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