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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
145/209

闘技大会に向かいます①

「こんなに大人数になるとは聞いていなかったのだが?」

 ギルドの前のテーブルに座ってはしゃいでいる俺達を見て、正装のハバキが額を押さえている。

 領全体で言えば出場者はナインハルトだけではないのだが、ハバキが直接出場を打診した事もあり、ナインハルトの送迎はハバキの馬車で行う段取りだったようだ。

 今ここに居るのは審判として行かなければならないシヴ、応援組に俺とローラン、それにトールさんまで居る。ナインハルトはまだ中で準備しているが、その内出て来る筈だ。見送りにヒルダさんやクロウの面々も居るが、ティオに行く訳ではないので数には入らない。

「間に合ったようじゃな。」

「まだ増えるというのか……。」

 更にキイがナギを警戒して、エヌを無理やり連れ出してくる始末。


「八人も乗れる訳ないだろう! 大体貴公は誰なんだ!」

 ハバキがトールさんを指差すが、この前うちでおたくの恋人と熱く語りあってたのを忘れたのか……?

「いやそれがっすね、餌あげるの忘れたら背中に乗せてくれなくなっちゃって……。」

「答えになっていないだろう!」

 トールさんは本当は馬に乗って独りで行くつもりだったらしいが、今日になって馬がへそを曲げているとローランに相談に来たので、じゃあトールさんもハバキに乗せて貰ったら? って軽い気持ちで言ってしまったのは俺だ。トールさんが馬に乗れる事に驚いて何も考えてなかったのは認める。


「ローラン、お前が付いていながらこれくらい予見できなかったのか?」

「うふふ。」

「うふふ……じゃない!」

「いえいえ、大丈夫ですよ。ちゃんと解決策の用意はございますから。」

 ローランはこうなることは分かり切っていて、敢えて何も言わずに楽しんでいたみたいだ。


「まず馬車にはキイ様、シヴ様、ハバキ様、ナインハルト様、それとエヌ、ついでにトールさんが乗られるのがよろしいかと。」

 まあ大きな馬車だし、子供含めて六人なら快適とは言わないまでも窮屈はしないだろうな。

「お前とアレンはどうする?」

「馬で行きます。」

 え、聞いてないんだが。

「勝手に決めるなよ、俺は馬に乗れないって言っただろ。」

「ご安心を、勿論私の後ろにお乗りいただきます。」

 ああ、まあ後ろならハバキの時に慣れたから何とかなるか。

「それならワシとアレンが馬じゃろう、お主はハバキのところの使用人でもあるのじゃから。」

 キイが言う事ももっともだ、俺もキイも観客でしかないからな。

「ご冗談を、キイ様のお立場を無視して私共平民が馬車で悠々と向かう訳には参りませんよ。」

 それもそうだ、俺達は麻痺してるけど一応女王様だからな。ハバキが後で何言われるかわかったもんじゃない。


「……卑怯じゃぞ。」

「何の話でしょうか。」

 ローランがキイから目を反らした。よくわからないがキイは馬車が嫌なのか?


「よし、ではキイ殿が馬車に乗るのは確定事項だな。」

 そう言いながらハバキが頷く。

「トールさんは馬に乗れないし、エヌも危険だから後ろに乗せる訳にはいかないだろ?」

 俺がそう言うとハバキもローランの案しかなさそうだと納得しかける。

「そうだな、ローランの案を採用するしか……」

「あのよ、難しい顔して話し合いしてるとこ悪いが、俺とナインハルトは走っていくつもりなんだよ。」

「試合に出るのにか?」

 シヴはともかく、選手として出るナインハルトは体力を出来るだけ温存しておくべきだろ。

「あんまりどっかに肩入れすんのもどうかとは俺も思うんだが、ちーっとばかし稽古つけてやろうと思ってな。」

 それは明日から始まる会場への道中でする事じゃないだろ。

 やめとけ、と言い掛けたところで、当事者のナインハルトが準備万端でギルドから出て来る。


「お待たせしましたハバキ様、報告が遅れましたが私は修行も兼ねて徒歩で向かいますので、荷物だけお願いいたします。」

 シヴと一緒に行くのがそんなに嬉しいのか、挨拶を済ませてニコニコとハバキの馬車の後ろに自分の荷物を積み込むナインハルト。出て来る前に俺達が話していた内容を知らないからか、上機嫌を隠そうともしない。


「い……、いくら何でも……、貴公達は自由過ぎるのではないか……?」

 流石にハバキも肩を震わせ、今にも爆発しそうだ。まずいな、うまく治めないと。

「二人が良いって言ってるんだしいいじゃないか、な? 馬車にはハバキとキイ、ローランとエヌ、トールさんに、ついでに俺も乗せて行ってくれよ。」

「しかしだな、万が一の事がこの二人に起きれば……」

「この二人に万が一とかそうそうないから大丈夫! あとあの日森でハバキの剣真っ二つにしたのシヴだよ!」

「あっ! てめえ!」


 どさくさに紛れて言ってやった。

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