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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
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何もない日

 今日も特にナギの動きは無かった。いつものようにエヌの相手をして、希少な薬の材料の話をスノドさんからいくつか教わっただけで、何もない日常の素晴らしさを噛み締めて家路につく。

 ローランは仕事があるので長居は出来ませんと早々に屋敷に戻ったので、当たり前だが今は独りだ。


 シヴは火龍が俺の所に来るのは闘技大会が終わってからだと言っていた。まさかあの後ドルフ達とシヴが出会っていたとは思わず、そこに気が行ってしまったからその時は考えなかったのだが、何で闘技大会と無関係な俺を迎えに来るのがその後なんだろう。帰ったらシヴに聞こう。


「よう兄ちゃん、今帰りかい?」

「ええ、美味しいご飯が待ってるんですよ。」

 毎日同じ道を通るので顔馴染みの人も少し増えた。キイなんかは歩いてるだけで目立つし、この町では数年振りのオウルも誕生したと、俺達の屋敷はちょっとした噂の種になっている。


「あんな綺麗なエルフの姉ちゃんの料理が毎日食えるなんて幸せもんだな。」

「いやいや、確かにキイの料理も美味しいんですけど、うちのメイドの腕が素晴らしくてですね。」

「へー、なるほどねえ。まっ、あんな豪邸に住んでるんだからメイドくらい雇ってるよなそりゃ。」

 雇うつもりはなかったんだけど、今はあの時断らなくて正解だったと思ってる。

「トール人材商会から紹介されたんですよ、ほんと何でも出来るんで助かってます。」

「ああ、トールさんとこの。じゃあローランちゃんかい?」

 あら、知ってるのか。昔は赤字だったって言ってたけど、意外と有名なのかなトール人材商会。

「ローランと知り合いですか?」

「そりゃそうだよ、俺んとこのお得意様だもん。」


 話をよくよく聞いてみれば、ローランが早朝から買い出しに出かけている町はずれの朝市、そこで店を開いてる人の一人だった。奇遇だな。

「ローランちゃん色んなとこで働いてるもんなあ……。兄ちゃんのとこにも行ってるとは思わなかったけどな。」

「今度俺もおじさんのお店に顔出しますよ。」

「おうとも、おまけしてやるから遊びに来な。」

「ええ、それじゃまた。」

「じゃあな、ローランちゃんにもよろしく。」


 これも縁だな。朝市に行っても特に俺が買う物は無さそうだが、折角だし一度ローランに付き合ってみるのもいい。


 家に着くと、何をどう察知しているのかわからないが、そのローランが玄関で出迎えてくれる。

「アレン様おかえりなさいませ。」

「うん、ただいま。」

 ずっとここに立っているという訳でもないだろうし謎だ……。

「シヴ様とキイ様も戻られておりますよ。」

「……。」


「……? 如何なさいました?」

 どうやって俺の帰りを予想してるのだろうと考えていたら、ローランが不思議そうな顔で聞いてきた。

「いや、何で俺が帰ってくるのが分かるんだろうと思って。」

「恋人の事は何でもわかるのですよ。」

「もうエーギルは捕まったから。」

「そうでしたね……、残念です。まあ有り体に言ってしまえば何となくですよ。」

 何となく……、ねえ。シヴもそういうのを気配とか勘で察知する事はよくあるが、俺には全く理解できない。

 勘と言うのは経験の積み重ねで、起こり得る事態を深層心理で導き出したものだなんて話も聞くが、どうも俺の身内には当てはまりそうもないな。


「まあそれはいいけど、さっき朝市でお店出してるっていうおじさんに会ったよ。ローランによろしくってさ。」

「お名前は?」

「いや、知らない。」

「そうですか……。あそこには沢山いらっしゃいますからねおじさん……。どのおじさんの事やら……。」

 そう言われたらそうだったな。名前かあるなら屋号くらいは聞いとけば良かったな。


「それは悪かった。それと、今度俺も一緒に朝市について行っていいかな? そのおじさんに顔出すって言っちゃったんだ。」

「勿論構いませんよ、何でも好きな物買ってあげますね。」

「子供かよ。とにかく、何となくでいいからどのおじさんか当たりつけといて。」

「無茶言いますね。」

 まあ行って探せばわかるだろうし、と思って冗談を言ってみただけなんだが。


 いつ行けるかわからない朝市の事はいいとして、取り敢えずお腹が空いたな。二人がもう戻ってるならちょっと早いけど夕食にしてもらおう。

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