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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
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ハバキの沙汰①♦

 ローランから伝鳥で届いた手紙に目を通したハバキは、すぐにココノエの元へ向かった。

「どうしたんだい領主様、いきなりだね。」

 レイラは咥えていた煙草を消そうともせずハバキを見る。

「ココノエに会いたい、今は大丈夫か?」

「ああ、ジジイは多分起きてるから勝手に行っていいよ。」

「わかった。それと……」

 まだ何かあるのか、そう言いたげな視線をレイラがハバキに向ける。

「もう少しまともな恰好をしろと言った筈だ。いくらここが不正規な医院だとしても、医者の自覚くらい持て。」

 呆れた声でハバキが言うが、レイラは少しも気にせず足を組み直す。

「しゃれた服を着てれば病気が治せるならそうしてるよ、心配しなくても不潔にはしてないから。」

 くたびれてはいるものの、洗った清潔な服である事実に変わりはないのだから構わないだろう、と、まともに取り合わないレイラに、ハバキは説得を諦める。これを今まで幾度となく繰り返して来た。


「いつか全て捨てて買い直してやるからな。私の趣味に文句を言っても聞かんぞ。」

 そう捨て台詞を残して、ココノエの病室に向かう為ハバキは診察室を後にする。

「そりゃ楽でいいや。」

 煙草を口に運びながら、残されたレイラは小さく独り言ちた。


 ココノエの病室の扉を叩き、返事を待たずにハバキは中へと入る。

「もう起きられるのか?」

 ココノエは上半身を起こして、本を読んでいた。栞を挟み本を閉じたココノエは、それを脇に置いてモノクルを重ねる。

「ええ、ご迷惑をおかけしております。」

「本当にな。ココノエが居なくては困るという事も、この五年で随分と増えてしまった。」

「今後はそれを減らす様に努力致しましょう。」

「ふっ、そうしてくれ。」

 鼻で笑いながらハバキは手近な椅子に腰を下ろし、ココノエを見る。


「それで、私にしかわからない問題でも発生致しましたか? 例えば紅茶の位置ですとか。」

「ココノエの淹れる紅茶は、ココノエが治ってからで構わないよ。実はお前の名を騙る者がローランの前に現れたらしくてな。」

「ほう……、未だそのような者がいるとは。」

 伝説とまで言われた男だ。ココノエの名を使う者は、これまでも決して少ないとは言えない数だった。しかし、ココノエが死んだという事が広まると同時に数を減らし、ここ数年では噂すらも聞かなくなっていた。

「まあ小物である事は間違いないのだが、お前の名は悪党を引き寄せる。」

「その者は今どこに?」

「ローランが捕縛済みだ、牢に居るよ。」

「ローランが……?」

 自分の名を騙る者、まさかそれだけを理由にローランがわざわざ手を出すとは思えないココノエは、疑いの気持ちを込めてハバキにそう返す。


「ああ、どうやらその者の仲間にアレンが刺されたようだな。アレンはクロウなので、実際に刺した男はすでにギルドで処理されているようだが。」

 ローランにアサシンの技は教えたが、アサシンとして生きて欲しくはないと考えたココノエ。それだけにローランには、自分の名を知る者と一切理由なく関わるなとも教えている。アレンという男には先日会ったが、主人を護る為に戦ったのなら仕方の無い事かと納得した。


「しかしその者も運が無い、確かアレンという男は依頼達成率もその額も、その辺の有象無象とは比べ物にならない筈。」

「そうだ、【剣聖】に【女王】と仲間が特殊過ぎて、アレンと実際に会っていても中々感じさせないが……、ギルドからの資料ではアレンも凄腕中の凄腕だ。刺した男は表を歩けまいよ。」

 実際はシヴとキイの働きも大きいのだが、不死である事を利用して、危険な土地へと出向くような依頼が得意だったアレン。普通のクロウなら二の足を踏むような、死地での探索等の依頼でも問題なくこなして来た結果だった。


「では私の偽物もギルドに?」

「それがおかしな話でな、アレンを刺した者はギルドで処理されたようだが、ココノエの名を騙った者は私の所に裁くように依頼が来たのだ。」

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