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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
120/209

薬屋

 翌朝。

 久しぶりにキイの作った朝食を食べ、食後の紅茶を向かい合わせで飲む。

「今日はどうしようか、昨日の事を確認しに行くか?」

 昨日話した諸々の事。

 その中でも特に気になっているのは、当然レイラとナギの件だが。

「竜草が手に入ればすぐに治るのじゃろう?」

「って聞いたけど。」

「ならば今いたずらに追及したところでよけいな面倒を増やすだけじゃ。」

 キイが言いたい事はわかる。しかしそうは言っても、あんな事言われたら俺も気になって仕方がない。

「いつかは確かめるつもりなんだろ?」

「そりゃそうじゃよ。じゃがそれは急くようなものではないのじゃ。それに……。」

「それに?」

 聞き返すとキイはカップを置いて俺を見た。

「もしワシの言う事が当たっていた場合、エヌの身に危険が及ぶことも考えられるのじゃ。」

「あ。」

 そうだな……、キイの予想が外れる事を願っていたからそこまで頭が回ってなかった。

 外れた場合じゃなく、当たっていた場合はその先がどうなるかわからない。少なくとも、天使の存在を知っている上で隠して診察する必要性が感じられない。となるとそこには高確率で悪意が潜んでいる筈だ。

「やめようこの話は。俺は竜草を持ち帰って必ずエヌを救う、それが先だな。」

「そうじゃな、下手に刺激して要らぬ事をされてはかなわんからの。」


 少し重い空気になったので話題を切り替えようと口を開きかけた時、キイが立ち上がりカップを片付け始める。やはり気を悪くさせただろうか。

「お主も早く支度するのじゃ、薬屋の掃除の続きがあるからの。」

 掃除って昨日やってたあれだよな。

「まさか営業再開するつもりじゃないだろうな?」

「お主、さっきエヌを治すと言ったじゃろう?」

 言ったけど……。


 ……あっ!

「そういうことか! わかった、すぐ用意するよ。」

 エヌが治れば別にあの二人はあんな暮らしをしないで済むんだよな、そうなれば次は仕事だ。

 エヌはよく効く薬を調合する薬屋さんの看板娘、勿論学校にだって行ける。

「すぐに理想の生活に行きつくかはわからんが……、まあエヌなら大丈夫じゃろう。」

「俺達も希少な素材集めくらいなら手伝えるから、最近できたっていう大きな薬屋とは質で勝負しよう。」

「お主がやるわけではないのじゃから……。」

 呆れるキイになだめられたが、やっぱり興奮せずにはいられないよ。


 すぐに部屋に戻って着替えを済ませると、風呂の排水をして皿を洗い終えたキイの元へ。

 昨日見た感じでは店内が狭いのも手伝って、掃除自体はある程度終わってそうだったので俺は修繕を主にやろうかな……。

「いっそ棚とか全部入替えてしまおうか、光蟲も買ってきてさ。」

「いや、そこまでワシらがやるわけにはいかんのじゃ。そもそもスノドに話してもおらんからの。」

 そっかそっか、昨日の今日だもんな。

 じゃあまずは今ある棚を全部捨てて……。

「聞いておるのかお主?」

「聞いてるよ、スノドさんに話して店の改築だろ?」

「ばかもん、ワシはやるとは言っておらぬ。そうなるだろうと言いたかっただけでじゃな……。」

「わかってるって、でも絶対そうなるよ。間違いない。」


 そう言うとキイが俺の両腕を掴んで向き合う形になった。

「まずはワシがスノドに話す、それを横で静かに聞くのじゃ、約束できるな?」

 俺は何度も頷いて返す。

「竜草の事は昨日あの場にいた者以外には一切他言無用じゃ、実際に手に入れるまではの。良いか?」

「それはわかってる、医者二人の耳に入らないようにだろ?」

「そうじゃ、それならよい。あとは過剰に再開を期待するでないのじゃ、エヌの両親の事も忘れてはいかんぞ。」

 エヌの両親は、エヌを治せる薬を探しに旅に出たんだっけ。

 今すぐに帰ってくるように伝えたいけど……、それは無理だもんな。

「どうにか探す方法があればいいんだけど……。」

「あれだけ目立つあやつが何年も探し回って見付からんのじゃ、難しいじゃろうな。」

 だよなあ……。

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