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天才魔術師のファンタジック銀河ハーレム無双  作者: 鮫島ギザハ
第一・五話:月面街と宇宙船
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8.アルザール宇宙港

(間違えて7話を二回投稿してたので修正しました)

 そして数ヶ月後。

 急激に資源産出量が膨れ上がった結果、もはやアルザール市街で使い切れないほど大量に余剰の魔石が生まれていた。

 ミスリル、そして鉄やアルミニウムなどの副産物も、クレーターの外に作られた大倉庫へ積み上がっていく。


「頃合いだろう。宇宙基地と宇宙船を作るぞ」


 月は魔術資源が豊富だが、それ以外の資源は壊滅的だ。

 せいぜいコンクリートとガラスと金属ぐらいの産業しか成り立たない。

 今以上の発展を目指すなら、絶対に貿易相手が必要である。

 それに、そもそもオベウスの元々の目的は宇宙探索だ。


 彼が発した鶴の一声で市議会が動き、資源が回される事になった。

 今は恩返しの意味も込めて無償ですが、将来的に経済が回り始めたら無償供出ではなくて有償購入にしてもらいますからね、というワシューの念押しを受ける。

 この資源でいつものごとくオベウスが超速工事を行った。

 大望遠鏡や各種の魔術センサーを備えた観測基地が、一夜にして完成したという。


 エルフの兵士たち、そして技術者のうちオベウスへ同行する事を選んだ者たちが、観測基地の居住区画に移り住む。

 人の気配が増えると共に、にわかに基地らしさを帯びていった。

 正式な名称の決まらないうちから、誰かがこの基地を「アルザール宇宙港」という名称で呼びはじめ、すぐにこれが名前として定着する。


 大望遠鏡と魔術センサーにより、さっそく詳細な天体観測が開始された。

 といっても、星の見えない地下都市に天文学者は一人もいない。

 オベウスの他に天文観測を行える適任者がいるとすれば……。


「メノー。お前は天文学の知識もあるはずだな。仕事をしろ」

「わたしが仕事すると思ったら大間違いだ!」

「ほう。ならばポテチの供給を断つぞ。芋と菜種油の供給源を握ってるのは俺だ」

「ひ、卑怯な! わたしが餓死してもいいっていうのか!?」

「餓死するレベルでポテチばかり食うなバカ。嫌なら仕事しろ」

「いーやーだー……」


 ……というわけで、メノーが無理やり任命された。

 結果、頭上の青い星に加えて二つ、やはり何かしら知的生物の住んでいる星がありそうだ、という結論が出る。イーネカイオンの言っていた通りだ。

 加えて、いくつか未知の小惑星帯や衛星が発見されるなど天文学的な成果が挙がった。

 それから、この機会に頭上の青い惑星を〈球地〉と呼ぶことにしたらしい。


「安直なネーミングだ。この宇宙に〈球地〉という名の星が百個はあるだろうな」


 ……以上の報告を受け、オベウスがそう返す。

 居住区画の休憩室を貸し切った、小規模な発表会の場である。

 参加者はオベウスを筆頭に、エアナやレンドール、リールクなど、将来的に彼の宇宙船に乗船するであろう人員だ。


「だってー、変に固有名詞を使ってもわかりにくいかなって」

「……まあ、異論はない。価値中立な名前でもある」


 オベウスは頷いて、話を進めた。


「他の星にも知的生物が居るそうだが。宇宙船を建設した後は、その二つの星のうち片方が最初の目的地になるな。環境の推測は出来るか?」

「できるよー、精度は保証できないけど……内側の星は、見るからに灼熱地獄だね。肉眼だと夕日のような色に見えるから、〈夕星〉って呼ばれてる星だけど……大望遠鏡でクッキリ見た感じ、ぜんぜんそんな平穏なレベルじゃないね」

「灼熱地獄? 俺の兵士なら並の暑さじゃこたえんぞ、なんせ直射日光の直撃してる日にも魔物を狩りに出てたからな、ガハハ! 探索できんことはねえよ!」


 レンドールが言った。〈シールド〉があるとはいえ、直射日光を受けた月の温度は容易に百度を超える。逆に、直射日光を受けない時はマイナス百度を軽く下回る。

 いくら魔術で容易に温度調整ができるとはいえ、この環境で魔物を狩ってきたのだから、兵士たちは相当タフになっているだろう。


「いくらタフでも、マグマの上は歩けないでしょー?」


 メノーが手元資料にある夕星の望遠画像を指した。

 火山らしき凸凹の激しい地表に、赤色のマグマらしき物が露出している。


「……き、気合で! いや、こりゃ流石に無理かもな」

「ねー、流石に環境が悪すぎるよねえー、まさに地獄って感じだよ。でも、もう一個の〈大青星〉もまた難儀な星でさあ」


 オベウスは資料のページを捲った。

 雲の下から覗く、青一色の海。どこにも大陸はない。


「それなりに長い時間をかけて、雲の下に隠れてる部分も観測したけど、大陸はどこにもないっぽい。狭い島ぐらいはあるかもしれないけど。ここに住んでる知的生物がいるとすれば、まず海の中だろうね」

「海中か。それなら探索は出来るかもしれない。水圧の問題はあるが、宇宙船が作れるなら海の中に潜れる船も作れるはずだ」

「いや……海の魔物は巨大だと聞くぞ、オベウス? 地上に住んでいるようなやつでも、クラーケンだとか大ダコだとか、ドラゴン並に大きい魔物がごろごろしているそうじゃないか」


 伝統衣装風の露出度が高い服を着ているエアナが、心配げに言った。

 ……これからずっとこの衣装で通す気なのだろうか。

 なかなか大胆だな、とオベウスは他人事のように思った。


「ああ。空気より海のほうが、含んでいる魔力量が大きいからな。……海中の大型魔物を撃退する事を考えると……宇宙船にそのまま潜水できる能力を持たせるべきかもな」

「宇宙船に潜水能力!?」

「あんたは相変わらずよくわかんねえ事言い出すなあ……ガハハ」


 エアナとレンドールが同時に突っ込んだ。


「できるじゃん? 技術的にはなんもかわんないよー?」

「えっとその、真空だと内側から外側への圧力ですが、水圧は外側から内側ですから」

「構造材で力は受けないんじゃないのー? シールドで防ぐでしょ?」

「……そっか、なるほど」


 一方、メノーとリールクはすぐにオベウスの発想を理解したらしい。


「その能力があるんだから、真面目に働け、メノー……」


 オベウスは思わずぼやいた後、液体金属で宇宙船の模型を作り上げる。

 平べったい胴体が三つ並んでいるようなデザインだ。後部には三角形の主翼がある。

 中央が人間の居住する区画や各種倉庫および大気圏離脱用のメインエンジン、両端の胴体は高効率なサブエンジン用の区画である。

 大気圏への突入・離脱や大気圏内飛行能力を考慮してオベウスが設計を繰り返した結果、こういう形状に収束した。

 胴体が平べったいのは、揚力を生み出す翼としての役割を兼ねているためだ。


「このサイズのシールドにかかる水圧を考えると……あまり長くは魔力が持たないな。仮に深海へ潜ったら、せいぜい一時間が限度だ。浅い場所なら長く持つが、ソーラーパネルの魔力補給が効かなくなる。潜水と浮上を繰り返す必要があるな」

「待てよオベウス、海水の魔力は空気より多いのであろう? なら、深海となると、圧縮されてもっと魔力が増えるのではないか? そこから補給することはできんのか?」

「……海水から魔力を抽出する機構か。可能かもしれないが、一から開発する事になると流石に時間がかかりすぎる……この宇宙船に積むのは無理だな」

「残念だ」

「だが、いい発想だ。この調子で頼むぞ、エアナ」

「! あ、ああ。頼まれた」


 エアナがわずかに頬を染めた。


「ん?」


 メノーが彼女の表情に現れた微妙な変化を発見する。


「へー……オベウス、へー……わたしという相手がいながら……」

「相手でもなんでもない」

「三角関係に発展する予感……!」

「発展するかバカ」


 オベウスがため息をついて、壁にかかった魔術式の時計を見た。


「情報は共有できたようだから、ここで解散とする」

「おつかれーみんなー」


 全員が一礼して、それぞれの仕事に戻っていく。

 お茶請けに出されていたポテチの残りを高速で放り込み、そそくさと部屋から退出していくメノーの首を、背後からオベウスが掴んだ。


「これから造船所と指令基地のガワを作りに行く。手伝え、メノー」

「うぇっー、仕事はもうしたじゃんよー。帰らせろー」

「ダメだ。お前の仕事量なんか俺の十分の一以下だろうが」

「あのねオベウス、人の限界はそれぞれ違うんだよ。自分が出来るからって、他人にその基準を押し付けるのはいけないと思いまーす!」

「そりゃ正論だが、お前は若くして魔術協会長にまで登りつめた女だろうが」

「あー! 首根っこ掴まれて誘拐されるー! だれかー! たしゅけてー!」


 ……オベウスがメノーを作業現場に連行した結果、愚痴やおふざけに付き合わされる結果となり、たいして作業速度は上がらなかったとか。


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