表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔術師のファンタジック銀河ハーレム無双  作者: 鮫島ギザハ
第一・五話:月面街と宇宙船
14/21

3.農業・鉱業・宇宙港

 月面都市アルザールの建設は急速に進んだ。

 工事を行っていたのはほとんどオベウス一人。彼は大国の工兵部隊をも凌ぐ土木能力を発揮して、エルフの街や学校、それに必要な建物各種の建造を数日以内に終えた。


 もちろん、他のエルフやダークエルフたちもサボっているわけではない。

 農業、鉱業、そして外征。これらの産業には、既に多くの人々が関わっている。

 加えて、ワシューたちが政治・行政システムの整備や法律の原案を整備中だ。

 アルザールを作り上げるための仕事を、それぞれが分担してこなしていく。


 農業に関しては、あまり進展がなかった。

 〈オベウス一号〉に積まれた食料や種、それに避難民が持ち出してきた物資を元にして、さっそく農業が試みられたのだが……月の砂には当然だが微生物がいないし、成分は偏っている。魔物にいくらか耕されてはいるが。

 何らかの形で土を用意しない限り、絶対に農業は不可能だ。


 ……と思っていたオベウスに、予想外の報告がもたらされた。


「イモが作れた? 本当か、エアナ?」

「ああ。効率は悪いそうだがな」


 二人は農業実験の行われている町外れに向かった。

 ガラス――月の砂はガラス質なので、わりと簡単にガラスが製造できる――の温室で、たしかに月の砂からイモが育っている。

 ただし、イモの一つ一つを囲むようにして魔石が置かれた、やや異様な光景だ。


「どうやったんだ?」


 眼鏡の技術者エルフ、リールクへと、好奇心で目を輝かせたオベウスが尋ねる。

 彼女は本来、生命維持システムや基礎的分野が専門だが……農夫たちを束ねていたダークエルフの農業専門家が反乱の際に戦死したため、一時的に農業の研究を担当していた。


「その、正確なところは分からないんですが……ヤケで試したら、偶然に成功してしまっただけなので……ですがおそらく、多量の魔力と光と水から、魔術的なプロセスで不足する成分を作り上げているのではないかな、と」

「……もしそうなら、未知の魔術だ! 〈クリエイト・エアー〉や〈クリエイト・ウォーター〉あたりと違う、未知の物質生成魔術が存在する可能性がある!」


 オベウスは興奮しながら言った。


「これは研究するべきだろうな、ひょっとすると新たな可能性が……」

「ところで、イモ一つにどれぐらい魔力が必要なのだ?」


 興奮した様子のオベウスを遮って、エアナが尋ねた。


「あーっと……それは……見た通りですね。大型の魔物産魔石六個で苗一つ。滅茶苦茶な大食らいですよ」

「実用的ではないな。他の手を試すべきであろう」

「待てエアナ、これは大発見に繋がるかもしれないんだぞ!?」

「今は投資の余裕はない。そういうのは落ち着いてから存分にやってくれ、オベウス」

「くっ……!」


 というわけで、魔石は他の用途に回されることになった。

 食料の安定供給は遠い。



- - -



 それから、二人は鉱業の現場へ向かう。

 こちらは極めて順調だった。

 採掘ノウハウを持った元奴隷たちが働いている上に、道具はオベウスがいくらでも生産できるのだ。適切な休息と優れた道具の効用で、むしろ効率が上昇していた。


「開通まで何日だ?」

「二週間もあれば。中の様子がどうなってるかにもよりますがね」


 現場の責任者がトンネルの入り口を眺めつつ、オベウスに言った。

 ……鉱業とはいっても、まず採掘するべき対象は鉱脈ではなく、崩れた地下都市クィンドールだ。瓦礫の下に眠る多くの資材を掘り出せれば、様々なことに活用できる。


「そこから農業区へ向かうには、どれほどかかるのだ?」

「……振れ幅は大きいですが、最低でも一ヶ月ですかね。崩れ方にもよります」

「となると、農業が回りだすまで二ヶ月近くはかかるであろうな……魔物のまずい肉は、もうこれ以上食いたくない……」

「姫様にこんな事を言うのもなんですが、私も同意見です」

「農業区の土を運んでも、すぐに農業は復活しないぞ?」

「なに?」

「本当ですか!?」


 オベウスが口を挟み、二人が勢いよく振り向いた。


「空気がなければ微生物は生きられない。農業は専門外だが、作物が育つためには微生物が必須だろう? 農業区の土は、もう全滅してるはずだ」

「じゃ、じゃあ……ずっとマズい魔物肉を食い続けるしか……?」

「俺の持ってきた土の微生物を増やせばなんとかなるんだろうが、専門外でな……あるいは、大量の魔石を消費して地上へ転移し、生きている土を持ってくる手もある」

「……地上への超長距離転移用に必要な魔力は、数ヶ月間に産出されたすべての魔石を足してもまだ足りないほどの膨大な量であったと聞くぞ? それまでの間、ずっと魔石を溜め続けるのか……?」

「なんとかなる」


 楽観的に言ったオベウスを、エアナが渋い顔で見ている。


「あの……作業現場は見ていきますか?」

「いや、いい。クレーターの外に用事がある。行くぞ、エアナ」

「ああ。……ずっと……魔物肉か……」



- - -



 オベウスとエアナは、クレーターの淵に作った急な階段を登り都市外へ出た。

 その瞬間、エアナは手に持った魔石に刻まれた術式を発動する。

 〈シールド〉だ。通常の結界に比べて精密な魔力操作を要求するため、今の所オベウス以外にこれを行使できる者は一人もいない。

 なので、外征で魔物を狩って得た高品質な魔石に〈シールド〉の術式を刻みつけ、外へ出るひとりひとりに支給されている。


 月の砂に刻まれた足跡をたどり、二人は低重力下を跳ねるように移動していく。

 小さな丘を越えた先にある高地で、エルフの兵士たちが魔物と戦っていた。


 月の砂から顔を出した巨大なミミズ風の魔物へ、統制された弓矢の斉射が襲いかかる。

 分厚い皮膚にいくつもの矢が突き立ち、続いて火球が魔物の頭を撃ち抜く。

 だが、攻撃力不足だ。その巨大ミミズが兵士たちへと頭をもたげる。


「助力するべきじゃないか、オベウス」

「ああ。〈ライトニング〉」


 オベウスが掌を向け、巨大な雷を放つ。一発で痙攣し、地面に倒れた。


「さすがだ」

「天才だからな」

「……前から思っていたのだが、お前のその受け答え、微妙に傲慢であるよな」

「ただの事実だ」


 二人は兵士たちの指揮官へ近づいた。


「火力不足か。魔術ゴーレムに頼っていたツケだな、レンドール」

「……ガハハ! 返す言葉もねえってやつだな! まさにその通り、俺たちゃゴーレムの火力支援を受ける前提でな、火力役の支援に特化してんのさ」


 レンドールは手にした弓を振り回しながら、大きな身振り手振りで説明した。


「大きい奴を狩れないかと試しちゃみたけど、やっぱ魔石の生産が軌道に乗るまでは月兎を狩る以外ねえや。ってわけで」


 彼が兵士たちに向き直る。


「おめえら、今日も兎狩りの時間だ! パーティを組んで散開しろ! 成績の悪かったものは、あのミミズ肉は抜きだからな! 必死に狩れ!」


 兵士たちが六人程度の少人数に別れ、四方に散っていく。

 一部の兵士たちはこの場に残り、巨大ミミズの解体と運搬に取り掛かった。


「ミミズ肉……? 待て、私達が食べていた魔物肉のシチューに混ざっていた、ぶよつく物体は……もしや!?」

「気にしないのが一番だぜ、姫様! じゃりっとした砂っぽい月兎の肉よか美味いんだからな! 食えりゃなんでもいいだろ、ガハハ!」

「そうだな。少なくとも栄養補給の観点からは問題がない」

「お前たちは食に無頓着すぎだ!」


 エアナが言う。残りの二人は、どこが無頓着なんだ、と言いたげに彼女を見ている。


「……食料供給が復活したら、私がうまい物を食わせてやろう。食育が必要であろうからな、お前ら二人には……」

「おお、楽しみだ! さて、じゃあ、俺はお二人に同行させてもらうとしようかね! 今日はどこまで行くんだよ、オベウス様?」

「様は要らない」

「んな事言ったって、上官と部下の関係だぞ! 様ぐらい気にするなよ、ガハハ!」

「……まあ、いい。北側へ向かうぞ」


 三人は北へ向かった。道すがらにオベウスが魔物を一撃で狩り、魔石を集める。

 やがて三人は崖に突き当たった。

 急斜面の先には、平らな盆地が広がっている。

 モノクロームの荒涼とした大地だ。


「将来的に、この盆地へ宇宙基地を建設する。最初は巨大な氷レンズ望遠鏡や魔力式測距儀と大型の通信設備を用意し、他の惑星の観測を行ってもらうつもりだが……」


 オベウスが懐から人工アダマンタイトの塊を取り出し、〈シェイプシフト〉で地面に立体模型を描いた。

 それは、全長数百メートルを優に越す超大型の建物がいくつも並ぶ大型の宇宙基地だ。


「大型滑走路に造船所、指令基地に各種の倉庫。一年以内に、ここまでは発展させたい」

「一年……ガハハ! 随分せっかちな計画だな、そりゃ!」

「無茶だ。ガワだけならともかく、中身を作るには地下都市の資材を転用しても足りないし……だいたい、そういう設備に必要な魔石を集めるだけで何年かかる?」

「鉱山奴隷を使った手掘りなら、十年はかかるだろうな。……ところで、俺はもともと”発明家”なんだ。魔術機械による自動化が、俺の専門分野の一つでな」


 彼は宇宙基地の立体模型に触り、再び変形させる。

 それは探査車の先端に細長いドリルをつけた機械だ。


「まずは、こういう穿孔用のドリルを備えた機械を作る。これで細長い穴を開け、そこに魔石爆弾を接地して、発破することで採掘する。手掘りよりもずっと早い」

「……お前が前に使っていた、あの大きなドリルを備えた奴ではダメなのか?」

「あれは燃費が悪すぎる。採掘して得られる魔石より、採掘に使う魔石のほうが多い」


 魔術金属目当てならともかく、地下に生成された魔石を掘るためには使えない、とオベウスは説明した。


「採掘した鉱石や原石の運搬も自動化する。もちろん運転手は必要だが」


 箱型のショベルがついた車と、鉱石を積載するカゴのついた平べったい車の模型へ変形させる。


「そして、運んだ先での冶金処理や原石の魔石化処理も自動化する。自動化に使う魔力より、自動化によってもたらされる処理量の向上による産出量の増大が大きいはずだ。……地上の魔石産出量だとこうはいかない。採掘にしろ処理にしろ、手動のほうが高効率なせいで奴隷労働のほうが合理的になる……嫌な話だ」


 彼は模型の工場を作った。


「手掘りに比べて、ラインの稼働当初でも数倍以上の魔石産出量が見込める。その資材を用いてさらに規模を拡大していけば、いずれ産出量は数百倍、いや数万倍に膨れ上がる。それだけの採掘量があれば、宇宙船であろうと量産できるようになるだろう」


 そして、オベウスはふたたび宇宙基地の立体模型を作り上げた。

 その滑走路に、カクカクとした造形の大型宇宙船が鎮座している。


「よくわかんねえけど、スゲエのは分かった!」

「…………想像が追いつかない」


 エアナは口を開けたまま、その模型を見つめていた。


「想像力はいらない。俺が現実にする」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ