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異世界転生って性別も変わるんですか?  作者: 幻影の夜桜
俺の実力がこんなにすごいわけがない
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第7話 羨望 ①

ジェイコムの通信悪すぎて作業が進まない……。校閲がぁぁぁ。

「ミラさん! A級魔法を使えるようになったって本当ですか!?」

「すごいです! まだ三ヵ月くらいですよね!」

「どんな練習をしているんですか?」


 ギルドに入るなりこれである。

 フィオナ撃退に続いてまた根も葉もない噂が……と言ってやりたいところだが、あいにくと今回に至っては間違ってはいない。

 数日前のチョトツキユウを狩った時の話になるのだが、あの時俺は最後の作戦として、【アイスグランド】で下から突き上げる戦法に出ていた。問題が起こったのはそこだ。

 当時すこぶる調子が良かった俺は作戦を成功させたのだが、その魔法の威力があまりに強すぎたのだ。

 木よりも高く突き出たそれは【アイスグランド】の上位互換であるA級魔法と認定されてしったという訳だ。それに新魔法だったおかげで俺に命名権までもが飛んできている。

 この世界ではA級魔法の壁が高く、それを使うだけで一流魔法使いと見られる。それにそのA級魔法が新魔法。さらにさらに歴代四番目の速さでの会得というプレミア付き。


 まあ、客観的に見れば騒がれて当然だろうが……。

 その日以来、俺はその魔法を使えていない。

 正直俺はまぐれ以外の何物でもないと思っているし、ギルドの方にもそう伝えてある。

 だがそんなものに効果なんてあるはずもなく、「またまたご謙遜を」「まぐれでA級の新魔法なんて出せませんよ」と言われるのみであった。

 そういう訳で今俺は実力に見合わない株を得てしまっている。ミストは「もしかしたら違う街からも見に来る人が出てくるかもね」なんて言ってたが、真剣に困るのでやめていただきたい。


 ちなみにこの騒動のせいで俺はクエスト探し当番を免除されている。俺が探すとハードルが跳ね上がるからだ。

 もっとも他の三人にしたって「あのミラさんのパーティメンバーだ!」となるだけで大差ない気もするが。

 まあしかしミストが居れば少なくとも流されることもないだろう。そしてやはりミストは手頃なクエストを確保していたようだ。


「ボムボムとファイアビーの討伐?」


 クエスト難易度は4。報酬と実力の兼ね合いを考えるとベストと言えるだろう。


「うん。ミラちゃん水魔法使いだし、悪くないかなって」


 水魔法使いだから、というのはこのモンスターの特徴にある。

 まずボムボムは名前の通り動く爆弾だ。ただし自分で火を起こせないため、自爆することはない。サイズも小さく、火属性魔法の扱いにさえ気を付ければ何ら問題はない。


 問題は付属のファイアビーである。

 こちらもやはりその名の通り蜂だ。ただし、この蜂の針は着火することができるのだ。

 しかしその火は小さく、刺されても大したことはない。超局所的で超軽度の火傷を負うのが関の山なため、こちらも単体では脅威になりえない。


 そんなコイツの厄介なところは、ナワバリをボムボムの群れが生息するところに張ることだ。

 このファイアビーという生き物は先にも言ったようにそれ自身では脅威でなく、己の身を守れないがためにボムボムを護身に使うのだ。

 そしてこの二種の生き物が交わった途端、それは新しい脅威になる。

 己の身の危機を感じれば、即座に付近のボムボムに着火。そして爆発を引き起こして敵から逃れる。


 もはやスズメバチに刺されるどころの騒ぎではない。そしてこの蜂は凶暴であり、特に敵意を向けていなくても、ついうっかりナワバリに踏み入ってしまっただけでドカーン!となりかねないのだ。

 そんな危ないタッグを街近くの森の中に野放しにする理由はない。


 そして肝心の討伐手段だが……まあ要するに、“火を使ってボムボムを爆破させること”が厄介なのであるから、火に対処しやすい水魔法は非常に好相性であると言える。


「いいよ、分かった」

「よし、じゃあこれで決まりだね。早速行こうか」


 助かる提案だ。

 というのもさっきから妙に見られている感じがしてならない。適度に注目を浴びるのは気持ちがいいが、ここまでくると単に精神的に疲れるだけだ。

 ま、気を取り直してクエストに臨むか。




 ◇


「そういえばボムボムは捕まえるのか?」

「うん。15匹くらい欲しいって言ってたよ」


 ボムボムというのは火の元さえ気を付ければ本当に無害なモンスターらしく、それでいて爆弾としても使えるため、クエストとして出た時は捕獲のお願いが入ることも多いらしい。

 ちなみに捕獲できなくても失敗にはならない。逆に依頼された数以内なら、追加報酬が出る。

 ……と、さっきから発動させておいた風の結界魔法に何かの団体が触れた感触。


「ね。小さいのがいっぱい来たよ」

「お。じゃあそれだな。近くにボムボムは居るか?」

「ボムボムかは分からないけど、それっぽいのは感知してる」


 結界はあくまでそれに触れられた時にその存在に気が付けるだけの魔法。モンスターどころかそのへんの小動物や、果ては木や草すらをも感知してしまう。

 きっといくつも経験を積んだ歴戦の猛者とかなら何が触れたのかが事細かに分かるのだろうが、あいにく俺は大きさと大まかな形状は感じ取れても、それが何かは分からない。せいぜい動物か植物かの違いが分かる程度だ。

 まあしかし今回は多分そうだろう。地を歩くモンスターは丸っこいのが多いし、ファイアビーかと思ったらただのミツバチでした、なんてオチもあまり無いと言える。そもそも火を扱うだけあってファイアビーは蜂界じゃ最強だ。他の蜂が存在できるはずがない。

 さてさて、問題は50メートル先に捉えたその集団をどうするかである。

 ファイアビーの縄張りは巣から半径30メートルほど。これはボムボムの行動範囲によるものだ。


30メートル、短く感じるかもしれない。だが、いつ爆発するか分からない敵を30メートル遠くでを警戒するのは厳しい話だ。

 となれば遠距離から仕留めてやりたいところだが、素早いアイツらへの一局集中遠距離攻撃など、ハッキリ言ってまったく当たらないだろう。そもそも森の中に30メートル先から狙いをつけることがハードな話だ。

 さすれば範囲攻撃か? 否。半径30メートルもの範囲を埋めるなどしんどい上、仮にできたとしても自然被害が大きくなる。それに手段は【タイダルウェーブ】になるだろうが、それをするとボムボムの回収が困難にもなる。

 ちなみに中へ飛び込んで爆発を防ぎつつ戦う選択肢はない。そんな反応速度、俺にはない。


 ならば八方塞がりか? もちろんそんなつもりもない。

 結論は出ている。戦う必要はない。


「行くよっ!」


 俺は空へ向けて水の砲丸を撃ちあげた。【ウォーターキャノン】と似ているが、少しだけ組み替えてある。いわば俺のオリジナルだ。

 その砲丸は空高く舞い上がったところで、何の衝撃を受けていないにも関わらず大きく弾けてしまう。ここが【ウォーターキャノン】との違いだ。

 弾けた砲丸は水滴となって周囲に降り注ぐ。さながら雨のようだ。


 撃ち上がり弾ける様子は水の花火。名付けるなら【ウォーターワーク】だろうか。


 そして降り注ぐ水は周囲の木々を濡らしていく。木々の中を飛ぶ高熱の蜂は行動をどんどん制限されていく。

 攻撃能力は一切ないが、ファイアビーを無力化するにはこれが効率的だと思う。

 実際熱を原動力にする蜂はその水滴に当たりバタバタと落ちていった。

 自然の雨であればそれを察知して巣や木の中に逃げるのだろうが、魔法じゃそんな備えはできない。


 そんな自分のチョイスのすばらしさを心の中で語っているうちに弾けた水滴がすべて地に降り注いだ。見渡してみれば瀕死状態や絶命した蜂がそこらに転がっていた。


「……きもちわる」

『練習を口実にスク水着てる男の子よりはマシですよ』

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