表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生って性別も変わるんですか?  作者: 幻影の夜桜
俺の実力がこんなにすごいわけがない
42/44

第6話 豬突豨勇 ⑤

さらに一週間延ばしてしまい申し訳ありません。

そしてブックマークを外さずお待ちいただいた皆様本当にありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。

「……居た。向こうに居る。……っと、向こうも気付いたみたいだ、来るぞ」


 俺は結界魔法で索敵しながら歩いていたのだが、その結界で感知するより先にエルヴァがターゲットを肉眼で見つけた。

 前からちょくちょく目立っているが、いったいコイツはどんな視力をしているのだろう。


 ……と、今はそんなこと考えてる場合じゃないな。

 俺は近くの茂みの中にその身を隠す。そして俺から少し離れたところで、エルヴァもまた茂みに身を隠した。


 作戦はこうだ。

 まず、さすがに突進してくる相手に馬鹿正直に正面から対峙することは諦める。

 遠距離攻撃で仕留めるか、動きをなんとか止めて斬撃などで倒すという方向性だ。

 そうなると遠距離攻撃ができるのは、俺の魔法かエルヴァの投げナイフに絞られてくる。

 というわけで、ミストとシルヴィアを囮に、俺とエルヴァが横からどうにかするということになった。


 俺たちがすっかり準備を終えた頃合で、平地へ残る三人へ茂みの中から猛然と突進してくる獣が現れる。


 なるほど、ほとんど猪だ。


 突進の威力自体はすごそうだが、話に聞いたとおり、直線だ。集中してさえいれば避けられない攻撃じゃない。

 やはり三人はあっさりとその攻撃をかわし、猪はそのまま駆けていった。

 情報によるとどこかしらで急ブレーキからUターンの後、もう一度、と言うより何度でも突っ込んでくるらしい。

 実際その情報に違わずその猪はまたやってきた。さっきは様子見も兼ねて見送ったが、今度は迎撃する。

 皆さんおなじみの【アイスニードル】だ、と言いたいところだが、そんなモノが効くくらいならあんなに難易度が高くならないだろうから試しすらしない。

 そもそも俺にはアイツを攻撃する気がない。倒せる訳がないからな。

 という訳で……。


「《アイスウォール》──ッ!!」


 俺はそこそこの出力で氷の壁を生成した。強度も厚さもそれなりのものを用意したつもりだ。


 ……が、チョトツキユウはそれをあっさりと砕きながら進んでいった。

 これはちょっと壁で止めるのは無理そうだな……。


「ねえ! 【アイスストーム】で気温を下げたら寒くなって動きが鈍るとかないかな!?」

「あんなに走ってたらむしろ暑そうだよ!」

「それ以前にお前そんな広範囲の気温を大幅に下げれんのか!?」

「ごめん無理だった!」


 俺がエルヴァの立場なら後で締め上げているな。

 まあとにかくまずはコイツだ。……少しベクトルを変えてみるか。


「《アクアボール》、《フリーズ》──ッ!!」


 ブラッドウルフに試した、地面氷漬け作戦。

 あのチート狼には効かなかったが、コイツなら十分見込みはあるのではないだろうか。

 一応念の為ミスト達の行動範囲にはやっていないが、それでもあの三人を狙うには氷の地面を通るしかない。


「う、うわあああ!? 普通に滑ってきた!?」


 案の定氷の地面に足を踏み入れた猪はなんとそのまま転倒することもなく、スケートでもやっているかのように平然と滑ってきた。

 そしてシルヴィアには避けられたものの、下が乾いた地面になると、勢いそのままにまた走り出したのだ。


「い、意外と器用だな……」


 脳筋でも高難易度ってところか。簡単に倒されてはくれないようだ。

 あと一つ、策はあるにはあるが、ちょっと自信が無くなってきた。

 しかし俺とてもうこれしか思いついていない。あの猪は体力も凄まじいようなので長期戦もやりたくない。これに賭けるしかないな。


 俺は猪の去った方向と三人の位置から突進コースを予測し、そのサイドに壁を作るように水耐性の【ディスペルフォース】を張る。これで水路の完成だ、あとは……。


「《タイダルウェーブ》──ッ!!」


 俺の魔力によって作られた波は、見えない魔法の壁によって幅を制限されながら突進してくる猪へ向かって一直線に襲いかかる。

 幅を制限して高さを稼いだ、かなりの水圧になってその突進を阻むはずだ。


 ……が、猪はそこに何も無いかのように、まっすぐまっすぐと突き進んできた。


 いや、よく見れば少しスピードが落ちている気もするが……大勢(たいせい)に影響なし。とてもミストらが斬りに行ける様子じゃない。


 万策尽きたか。


 ……それにしても何かおかしい。身体が明らかに軽い。

 薄々違和感を感じてはいたのだが、今のタイダルウェーブでハッキリした。

 昨日のそれとは発動速度も、威力も、体感の消費魔力もまるで違う。

 あたかも強化魔法か何かをかけられているようだ。調子や慣れの次元じゃない。かなり魔力を詰めたはずなのに、まだ余力がある。

 なんだ、何かあったのか? 昨日から朝にかけて何か……。


『ミラちゃん! 何ぼーっとしてるんですか! ブラッドウルフと同じで下から殴ればいいんですよ! お腹を!』


 相変わらず空気の読めない声が俺の回想を吹き飛ばした。

 邪魔するならせめて有益な言葉で邪魔してほしい。あんな素早い奴の腹を下から殴るなんて……。


 ──待てよ。下から殴る……突き上げればいいんだよな。

 俺の使える魔法に、一つだけその類の魔法がある。

 どうせ今日は調子がいい。まだ魔力も余っている。どうせ他に策はないんだ。やってやれ。


「ミラ! もう策はないのか!?」

「ある! 一つだけ! 今からやる!」


 今また突進を避けたエルヴァにそう答えた俺は、下準備として地面に冷やした水を染み込ませる。

 別に普段はこんなことしちゃいないが、今日は高さ三メートルくらいの針山を作ってやろうと考えているからしているだけだ。


 そう、針山。下から突き上げるように針山を生成し、猪を串刺しにしてやる。

 何度も何度も壁や木にぶつかったことで硬くなっているその皮膚だが、滅多にぶつけないお腹だけは例外だ。


「《アイスグランド》──ッ!!」






「な、何これ……」


 俺たち四人は、高さ十メートルくらいの針山と、その頂上に刺さる猪を見上げていた。

 俺の想定した三倍くらいの大きさになったそれは、以前見た地獄を模した絵の中にある針山とよく似ていた。


「こ、ここまでやる必要はなかっただろ……」

「こ、ここまでやったつもりはなかったんだけど……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ