第4話 魔法使いとリッチー ⑦
私はフィオナさん結構好きですね。皆さんはどのキャラがお好きでしょう?
「さて、第二ラウンドと行こうかしら?」
そう言ったフィオナはゆっくり、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「クソ、俺が前に出る。サポートは頼む!」
「分かった……!」
さっきと同じようにエルヴァが飛び出した。
魔法使いが後ろで、前衛職を目指す無職が前。確かにこれが今作れる最善の布陣だろうけど、相手の間合いに入れない限り、遠距離で色々できるフィオナに分がある。
いや待てよ。遠距離攻撃……?
「エルヴァ! 滑って!」
俺はそう叫びながら、エルヴァとフィオナの間の地面を凍らせる。
そこに滑り込んだエルヴァを確認すれば、《アイスニードル》の発動。
それもいつもの氷のつぶてではなく、氷の剣を作り出す《アイスブレード》で弾を作る。
大きくなる分一つしか弾としては作れないが、これでいい。
それをフィオナめがけて全速力で発射!
その氷の剣は狙いたがわずフィオナの顔へ、滑るエルヴァを追い抜き向かっていく。
顔付近だ。普通は体勢を低くする。
だが、フィオナはあえて驚異的なジャンプ力でその剣をかわしてみせた。
「いいわぁ、しゃがんでたらそこのお兄さんに斬られてた感じかしら?」
クソ、見破られてたか。
……だが、こっちもそんな浅い策は立てちゃいない。
そこに誰が居ると思ってる。百発百中が売り文句の……。
「エルヴァァァ!」
「分かってる!」
滑るエルヴァは手に持っていた直剣を思いっきりフィオナめがけて放つ。
さすがエルヴァ、飛ばしたのをわざわざ剣にした甲斐があった。意図を読み取ってくれたか。
「くっ……!」
飛行機じゃあるまいし、空中で軌道変更などできないだろう。
予想通りフィオナは避けれずに剣を食らった。……その身を庇った腕に。
剣が突き刺さった腕からは赤黒い血が流れ出ているが、そんなの気にも留めない動きで着地すると、その剣を引き抜きながらエルヴァへ向けて突っ込んでいく。
そこらの騎士よりも早いスピードでエルヴァへ向かい右手からの斬撃。
しかしこれはエルヴァの盾によって防がれるはずだ。
相手も剣を持っての接近戦になってしまったが、一応最悪の事態としては考えていた。
だが、ここからはエルヴァに頼りしかない。とにかく剣の補充のため、再び氷の剣を生成する
しかしここで予期せぬ事態が起こった。
「がはっ……!?」
「エルヴァッ!?」
剣の一撃が想定以上に重かったらしく、盾で受け止めバランスを崩したところに左の拳を入れられてしまった。
そしてさらに事態は悪化の一途をたどる。
拳を受けたエルヴァはよろめき、さっき俺が広げた氷の地面に足が乗る。
摩擦力を失ってふんばりがきかなくなったエルヴァは盛大にしりもちをついてしまった。
まずい、このままじゃ……!
エルヴァを助けるべく魔法の詠唱を再開するが、もうすでに手遅れだった。
氷の上を華麗に滑っていったフィオナは、エルヴァへ向けて薙ぎ払うように剣を振るう。
とっさに盾で身を庇うも、勢いのままにそれを飛ばされたエルヴァは、とうとう一切の攻撃・防御手段を失い、成すすべなく首をつかまれ、そのまま地に伏せられた。
「いいコンビネーションじゃない。アレ、即席の作戦でしょぉ? お姉さん感動してついうっかり魔法使っちゃいそうだったわぁ」
……?
エルヴァを地に叩きつけたままニコニコとして言ったフィオナの言葉に思考が一瞬止まる。
そんなフリーズした脳の働きを無理に再開させては本能的にこの戦いを振り返っていく。
ま、まさか……そんなバカな……。
「あら? もしかして気づいてなかったの? リッチーのお姉さんが、一切魔法を使っていなかったこと。……あ、でも舞台設定はノーカウントよ」
思い返せば確かにこのリッチーは戦いにおいて一切魔法を放っていない。
リッチーと言えばアンデッド化した魔法使いと言っていい。そのリッチーが魔法を使わないなんて、ハンデどころの話じゃない。
「まあそれでもぉ。お姉さんに血を流させたのは誇っていいわよ?」
フィオナはそう言って、左腕から流れる血を見せつけるように舐めとった。
そして腕から逃れんとばかりにもがくエルヴァへ顔を向けては、ニコリと笑って。
「ま、どのみちお兄さんはゲームオーバー。退場だけど、ね」
「くそっ……!」
「エルヴァッ!」
「大丈夫よぉ。殺しはしないわ、ただこれから楽しいガールズトークの時間だから、ね?」
フィオナがそう言い終わると、突然エルヴァの姿が消えてなくなった。
何が起こった? 殺された……のか?
「もう、殺しはしないって言ったでしょぉ? 《テレポート》でアナタの街の広場に飛ばしてあげただけ」
「な、何が目的で……!」
「もう、人の話聞いてるのお? ガールズトークよ、ガールズトーク」
何がガールズトークだ、ふざけたことを言う。それに俺男だし。
こんなやつとまともに取り合ってはいけない。俺の本能はそう告げている。
険しい顔でフィオナをじっと、何も答えずに見つめていると、わざとらしくフィオナは肩を落とした。
「……そう、いいわ。じゃあ第3ラウンドと行きましょうか」
すみません。今回もお休みさせていただきます。




