俺の年賀状
年賀状、書かないといけないな~ということで。
「年賀状」をテーマに、ふと思いついたのを文字にしてみました。
でもいつのまにか恋愛路線に……
またもやジャンルは恋愛ですが、どうぞよろしくお願いします。
「あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。」
年賀状といえば絶対に書いてあるような言葉。
それだけを真っ白な年賀状に筆で書いたもの。
それが俺ー角田遼ーの年賀状である。
特徴といえば、実際に筆で書いてあることぐらいだろうか。
一応書道三段は持っているので、普通の人よりは上手であろう。
しかしそれ以外は何の変哲もない。
何の特徴もなさすぎて反対に目立つかもしれないが…。
そんな俺が面白みのないこれを毎年送るヤツがいる。
流鏑馬千早。
かなり古典的な名前であるが、本人は軽音部所属のかなり現代的な女子である。
こいつは俺のいわゆる、幼なじみで。
幼稚園の頃から一緒にいて、良いところも悪いところもいっぱい見てきた。
これだけ一緒にいたら、恋愛とかそういうものにはならないだろうと思ったが、物心がつき、恋愛というものを意識したころには既に好きだった。
確かに顔はかわいい、これは認めよう。
アクティブながらも、カルタがとても上手かったり、上品な面があることも認めよう。
しかしだ!
俺に対してはものすごく暴君で、ことあるごとに用事をいいつけてくる。
しかも言いつけるときにはそっぽを向きながら命令してくるため、こいつがどんな顔をしているのかはわからない。
わからないながらもきっとえらそうなんだろうと思いながら毎日命令を遂行していた。
ところがある日、どうしても外せない用事が出来て、初めてこいつの用事を断った。
俺としては、二言三言文句を言われるくらいかと思っていたのだが。
予想に反してこいつはパッと顔を上げて。
「えっ…」
一言発したかと思うと涙がぽろりぽろり。
こぼれだした。
「おいっ!」
これにはびっくり。
断っただけでまさか泣かれるとは思ってもいなかった。
しかも頬が少し赤くなって、目はウルウルしている。
こいつ、いつもこんな顔してたのか!
それに気づいたときには既に体が動いていた。
俺より小さい彼女を包み込むように抱きしめる。
「泣くなよ…。」
こいつの泣き顔を初めて見て、情けない声が出た。
しかも優しくすればするほどこいつは泣く。
どうしていいのかわからなくなり、しばらく抱きしめて頭を撫でていると、胸元から小さな声がした。
「遼、怒ってない…?」
「『怒る』? どこがそんな風に思ったんだ?」
俺の頭の中にはハテナマークがいっぱい。
俺は、ちょっとこいつの命令を断っただけ、うん、合ってるぞ?
「だって、急に、断られて、いつもつい命令口調になっちゃってるからかなぁとか思っちゃって…」
こいつ、もしかしていつもの口調は照れ隠しなのか?
「今日はな、急な用事が入ったんだよ。
お前のことが嫌で断ったとかじゃねぇから。」
また頭をぽんぽん。
「ほんと?」
そっと俺の顔を伺ってきたこいつは涙目で、上目遣いで。
うっ。
可愛すぎて返事に詰まる。
その一瞬、間があいてしまって、またこいつの目に涙が溢れ出す。
「ほんとだから!」
焦って抱きしめたら、こいつの腕がそっと背中にまわってきた。
「遼ぅ…」
あぁ。
こんなに安心して俺にくっついてるお前に、もう言ってしまってもいいだろうか。
俺だから、断られたらそんなに不安になって、泣くんだとしたら。
もう泣かないように、俺の気持ちを伝えようか。
「千早」
「ん?」
すこし顔を上げた千早の目を真っ直ぐみて、大切に大切にしてきた気持ちを伝えよう。
「好きだよ」
読んでくださり、ありがとうございました。