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7番目の勇者  作者: モダろいしヒト
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『一難去って…………、』

岩石モンスターを退けたアッシュ達一行はキリ山の山頂で昼食を取ることにした。


アッシュはとりあえず持って来た握り飯2個と、ドウズに分けて貰った干し肉を食し、リリアには小瓶に入れた蜜を与えた。



あらかた食事が終わると、ドウズがアッシュにメバンニ村の方角を指して教えた。


確かに、小さな湖のほとりに村らしきものが見えた。


「夜だったら明かりでもっとハッキリ分かるんだがな。因みにアッチがお前の村だ。」


ドウズが指差す方向を見た。

石の壁に囲まれた村が野原に延びる一本道の彼方に小さく見えた。


「俺、こうやって自分の村見るの初めてだわ。」


「そっか。………………アッシュ、世界にはなもっと沢山の村や街が有って、色んな人が居て、広くてデカイんだぜ。」


「ドウズさんは全部見たの?」


「いや、俺が商売で見てきた世界なんざ多分ほんの一部だけさ。どこまでが全部かも分からねぇし、それに終わりなんざ無ぇと思ってる。」


「お、語るねぇ。」


「ウルセェ、冒険初心者が。有るかどうかも分からねぇ答えが知りてぇなら己の目で確かめて来やがれ。」


「あぁ、そうさせて貰うぜ。」


「んじゃ、とりあえず出発するか。アッシュ、お前に残された時間は長くても残りたかだか80年ぐらいなモンだ。世界を見て回るには少なすぎる。」


「…………そ、そりゃそうなんだろうケド、話が壮大過ぎて付いて行けんわ。とりあえずは目先のメバンニ村まで頼むわ。」


「だな。」



一行はメバンニ村を目指し、キリ山道を下山する。



パカポコ、パカポコ馬車はまたのんびりと山中の森の中を行く。



また暫くは馬車に揺られるだけの時間になりそうなので、アッシュは手持ちブタさんの続きを揉み始める。



パカポコ、パカポコ。


揉み揉み、ぷにゃぷにゃ。


バキバキ、バキバキ。


パカパカ、ポコポコ。


ぽにょぷにゃ、ぽにょぷにゃ。


ベキバキ、ボキベキ。


ポコポコ、パカパカ。


ぽよんぽよん、ぷにゃんぷにゃん。


バキベキボキバキ!メリメリメリッ!!ドーンッ!!


パカラパカラ、ポコラポコラ。


もにゅもにゅ、ぽわぽ………………………………?!!


「って!オーーーイッ!!また何か迫って来とるでぇッ!!」

アッシュは外の異変に気付き、飛び起きて前回同様荷台の屋根伝いにドウズへ報告しに行く。


森の中を腕の生えた巨大な塊が猿が木々の間を飛び渡る如く周囲の木を薙ぎ倒しながら迫り来る。



「ドウズさん!ドウズさん!!」


「あんだぁ?今度は!?」


「あの、言いづらいんですが、またです。」


「またぁ?何がだ??…………ッ!!オイ、またかよ。今度はどんな奴なんだ?」


「何か、腕の生えた丸い塊みたいな。」


「もう丸い塊は勘弁だぜ。何だ、今日は。丸い塊の祭でもやってんのかぁ??もう策は無ぇぜ。」


「俺が何とかやってみます。」


「頼めるか?」



アッシュは『今度は俺が。』と言わんばかりに走る荷台の上に立ち、剣を構える。


マントがバタバタと風に煽られる。

アッシュは気にせず、剣を構えたまま目でモンスターの動きを追う。


左の木から右の木へ。

右から左へ。

木々の間を飛び渡りながら徐々に距離を詰めて来る。


「リリア。」

視界から敵を逃さないままリリアを呼ぶ。


「あいな。」

リリアは既にアッシュの傍でスタンバイしていた。


「カマイタチだ。」

「いつでも、どぅぞぅ。」



「必殺!」

アッシュが剣を突き上げる。

そこにリリアの風の力が宿る。



右、左、右、左、左、右………………


アッシュは相手の動きを目で追い、速度とパターンを割り出す。



(右から大きく反動を付け、左へ飛び移るモーション。)

(敵の飛び移る地点を予測。)

(ここだ!)


「カマイタァチィッ!!」

降り下ろされた剣から真空の刃が放たれる。


(捕らえた、ドンピシャ!)


刹那、モンスターの本体から腕が延び、カマイタチの進行方向とは反対側の枝を掴み方向転換する。



斬! ドォォォーーーン!!

カマイタチの直撃を受けた大木が真っ二つに割れ、倒れた。



第一撃目、ハズレ。


「チィッ!外したか。」

(それにしても、あのタイミングで反応して方向転換とは。図体の割りに素早い。)


「リリア、もう一度だ。」

「分かったわ。」


(次はタイミングをずらす。枝を掴む瞬間を狙う。)


フワッ

(左)


フワッ

(左)


ブワッ!

(右に飛び移る!)


モンスターの巨体が木々の間で放物線を描く。

それを目で追うアッシュ。



モンスターの腕が飛び移り先の枝に延びる。


「喰らえ、カマイタチ!!」

(今度は避け切れねぇ。方向転換も間に合わねぇ。)

アッシュはニヤリとした。



すると、今度はモンスターの空いている片腕が上方の枝に延び、掴んで、グイと本体を引き上げる。


カマイタチの斬撃がモンスターの下スレスレを通過して行く。


「なっ…………!!」



第二撃目、ハズレ。



「クッソ、ダメか。」

(こうなりゃ。)



「カマイタチッ!!」

(喰らえ左右同時攻撃、横凪ぎだ。)


だが今度は、モンスターはその下をくぐり抜ける。

放射線状に木々が斬り倒されていくのが見えた。



第三撃目、ハズレ。


「だよな。」

放ったアッシュ自身も半分そうなる事は予想していた。



だが、一つ気が付いた事がある。

アッシュがカマイタチを繰り出し始めてから、モンスターが一定距離を保ったまま近づいて来なくなったのだ。



そんな時、ドウズの声が聞こえてきた。

「どうだ、アッシュ。何とかなりそうか?」


「ダメだ。近付いて来はしないが、まだ追って来てる。振り切れない。平行線だ。このままじゃ、ジリ貧だぜ。」


「アッシュ、もうすぐキリ山を抜ける。抜ければ平地だ、何とかなるか?」


(平地?木が無いのか。木が無ければヤツの機動力も落ちるかも知れない。)

「分からない!分からないが、今よりは何とかなるかも知れない!!」


「ヨッシャ、もう暫く持ちこたえろよ。少しスピードアップすっから、落ちるなよ!」


「大丈夫だ。オチ無ぇよ!」

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