『7度目の始まり』
『前書き』
「文章書く」なんて高校の作文以来初めてかも知れない。
特に小説の書き方とかも勉強した事無いし、
書き始めたは良いけど、今後どんな展開になるのか正直自分でも分からない。
通勤時間とか、寝る前に時間が少し有るから何かしようと思って、初めは携帯ゲームとかしてたけど、あまりハマらず。
そんな日々が続いて、とある休日に何の気なしに見ていたケーブルテレビのファンタジー系アニメの最終回。
ラスボスが「必ず復活してやる」系のお決まりの捨て台詞で消滅していく。
そう言えば、幼少期に見てたアニメのボスにも何人か同じ様な事を言っていたのを思い出す。
…………未だに彼らが復活したのを見た事は無い。
(まだ、地底とか別の星で準備期間中なだけかも知れないケド。)
彼らがまた同じ星に復活したら………………………
そんな事を仕事中に仕事せず妄想して、書いてみようと思った。
通勤時間中と就寝前の活動という条件に、作文能力の低さが相まってなかなか進まないかもしれませんが、
気長に書き足していこうと思います。
遥か昔………………………
この星の誰も知らない場所で、
星ごと震える程の大きな揺れが起こった……………
人々はソレを「星のクシャミ」と呼んだ。
その頃からだろうか、
この星に「地震」「噴火」「雷」「洪水」等の天災に次ぐ新たなる天災「来魔」が起こる様になったのは………………
この星は、数十年に一度「来魔」と呼ばれる天災に見舞われる。
それはいつも決まって、夜空を大量の星が流れた後にやって来る。
その多くは大地から、
時には海から、川から、
空からやって来る物もある。
人々は、歴史の中で天災を防ぐ、やり過ごす、軽減する等の方法で、抗い生き延びて来た。
しかし、来魔に関しては「闘う」という手段を選んだ。
来魔の個体には意志や思考能力が有り、人間や動植物を糧とし、行動する。
その姿形、能力は様々だか、「発生」した場所や環境の影響が伺える部分が多い。
そう、
人々がこれらの現象を「天災」とするのには理由が有る。
産み出されるでも無く、創られるでも無く、
「発生」するのだ。
大地から、水から、大気から。
自然から。
人々はソレを「モンスター」と呼んだ。
…………………………………時に、
英雄歴327年。
(英雄歴:初代冒険者が来魔の原因とされる物を打ち倒してから数える)
青年は自宅の屋根の上で、胡座をかきながら食べかけのソーダ味のアイスを手にし、大量の星が流れる夜空を見上げていた。
顔を天に向けたまま視線だけで辺りを見回すと、村の住人達も玄関や窓、ベランダから顔を出し、皆星降る夜空を静かに見つめている。
どれ位の間流星群を見ていただろうか、
青年は家の玄関先に村人達が集まり、父親を囲んで何やら話をしているのに気が付いた。
「またあの、」 「来たのか」 「頼めるか」………………
そんな言葉がちらほら聞こえて来る。
青年の手にした棒からは手の甲を伝い、アイスがポトリと落ちた。
青年は甲に出来たソーダ味の筋を舐め上げ、
薄く、ニヤリとした。
その日は止まない流星を眺めながらそのまま屋根の上で眠った。
翌朝早く、青年は庭で鍛練する父親の息遣いに気付いて目を覚ました。
屋根から庭に続く梯子を下り、青年は父に駆け寄った。
「親父、また行くんだろ?帰ってきたらまた冒険の話聞かせてくれよ。」
青年は父親の語る冒険譚を聞くのが好きだった。
様々な仲間との出逢い、洞窟や密林の探検、巨大モンスターとの激しいバトル、見た事も無い文明や道具………………………………………
ワクワクする話ばかりだった。
「そうだな。また聞かせてやっても良いが………、」
「何だよ。」
「一緒に行くってのはどうだ?アッシュ。」
青年の名は、アッシュ・ヴァミリヲ。
母から貰った銀色の髪と父から受け継いだ蒼色の瞳が印象的で、端正な顔立ちと親しみ易い人柄から村の誰からも慕われる人物だ。
「俺もこんな歳だからな。この日を想定して毎日鍛えているとは言え、昔の様にはいかんのさ。」
そう語るのはアッシュの父親であり、
勇者一族ヴァミリヲ家の6代目勇者、
ザウス・ヴァミリヲである。
アッシュと同じ蒼色の瞳、そして見た目に分かる屈強な体つき。
その体には幾つかの古傷が見て取れる。
「前回の来魔の時にはまだお前も産まれていなかったし、俺にも若さという最強装備が有ったからな。」
言いながらザウスは「ガハハ」と笑う。
「周りからは勇者一族なんて言われてるが、単にウチの何代か前の御先祖さんが初めて来魔を鎮めたってだけで、俺にもお前にも何ら特別な力は無ぇっ!人は老いるっ!!」
言いながらザウスは「グハハ」と笑う。
「だかな、やっぱり、何でもそうだが、誰もやった事の無い事を初めて成し遂げる。そう言う意味では御先祖さんってのは勇者だったのかもな。」
言いながらザウスは少し誇らしげに「フヘヘ」と笑う。
「そうやって代々集めた知識や、道具がこのヴァミリヲ家には継承されて来たから、皆俺達を頼りにしてくれるんだろうよ。」
「今回は俺も一緒に行くよ。」
「そうか、頼もしいな。…………でもな、本当はこんな事終わって欲しいし、来魔なんて起きなければ良いと思ってる。」
天を仰いだ父の顔が、一瞬曇った様に見えた。
実際、ザウスの父親は来魔封じの旅に出たまま帰って来る事は無かった。
「だけど!何処かで来魔に苦しむ人達が居て、それを鎮められる知恵と経験が我が家には有って…………って思うとまた来魔封じの旅に出てしまう訳だなッ。」
言いながらザウスは「ワハハ」と大笑いした。
「そうと決まればアッシュよ、明日からは今までよりもハードな特訓だぞ!」
アッシュの脳裏には「今まで」の数々の苦行の名場面が父親の提供でお送り致されていた。
翌朝アッシュは父親に連れられ、村長の家を訪ねた。
村長の家は壁一面が本棚で、あとは暖炉とベッド、炊事場と8人掛けの木テーブルが有るぐらいだ。
村の人達は知りたい事、読みたい本が有れば皆村長の家にやって来る。
部屋の中央の木テーブルに座る様に薦められ、二人は並んで腰を掛けた。
「早くからすまんな、村長。早速なんだが、アレを息子に見せてやってくれ。」
「今回はアッシュも行くのか。すまない事よなザウス、ワシらはお前さん達に頼るしかなくてな。」
「構わんさ。」
ザウスの返答を聞くと、村長は永らく使われていないであろう暖炉へと腰を屈めて入って行った。
アッシュは少し不思議そうな表情で父親の顔を見た。
目が合うと、ザウスは黙って頷いた。
瞬間、
ドンッ!!と
低く、重く、短い音が家中に響いたかと思うと
ガリガリ、ズリズリと音を立てながら暖炉の奥の煉瓦造りの壁が回り出した。
ただ、アッシュが驚いたのはそれでは無かった。
ハッキリは見えなかったが、暖炉の隙間から垣間見える壁を回している村長の右腕が父親のそれと変わらぬ程太く見えた………………ような気がした。
村長はそのまま暖炉の壁奥へと消えて行った。
アッシュも幼少から村の読み聞かせ会や武道書、冒険小説等を読みに幾度となくここへは来た事があるが、暖炉の奥にあんな仕掛けが有るとは思わなかった。
20分程経っただろうか、
暖炉の奥から一冊の分厚い本を抱えて村長が戻って来た。
(往復20分て、あの奥は一体どこに繋がってんだ?)
アッシュは内心そんな事を考えていた。
村長は
「ホレ、これじゃろ?」
そう言って、重そうな本を片手で音も立てずにアッシュの目の前にスッと置いた。
その腕は何処にでも居る老人の細腕だった。
(…………、見間違え……か?)
「おぉ、コレコレ。懐かしいなぁ。俺も随分コイツに世話になったもんよ。」
ザウスはしみじみそう言うと、本の表紙をフッと一息する。
少し埃が舞ったが、定期的に手入れされている感じだった。
表紙を見ると、手書きで
「怪物 記録 魔物 図解 モンスター図鑑」
と書かれており、
怪物 記録 魔物 図解の部分には伐印がしてあった。
多分、「モンスター図鑑」という事なのだろう。
(開いてみ。)
ザウスは顎で本を指し、目でそう合図した。
指示されるまま、アッシュは適当なページを開いた。
『ドゥブツ』
筆で書かれた様な字でそう書いてあった。
次に目に入ったのはイラストだ。
牛の体、顔には象の鼻、頭には湾曲した大きな角を生やし、体には所々苔や小さな花が生えている。
そんな絵だった。
(あぁ、コレの名前か。)
アッシュは文字の意味を名前だと理解した。
更に、余白に細々と文字が書いてあるのに気が付いた。
生息地:ドゥブツの森
強さ:不明
「ドゥブツ」とは原住民の言葉で「森の守護者」の意。
性格は温厚だが、森を傷付ける者に対しては猛威を振るう。
ドゥブツのフンの中に稀に含まれる琥珀色の玉は、煎じて飲むと万病に効くとされる。
「親父。」
ザウスの顔を見る。
「そう、これがヴァミリヲ家に受け継がれる道具の1つ、モンスター図鑑だ!」
「モンスター図鑑………………」
アッシュも口に出して言ってみる。
「これは先代の冒険者達が出会ったモンスターの生態や特徴を書き溜めた本だ。今日からお前にはここに記されているモンスター共をミッチリ覚えてもらう。」
アッシュはもう一度「分厚い」モンスター図鑑を見てから、ゆっくり父親の顔を見てこう言った。
「………………、え?」
そう漏らしたアッシュの顔は、アホみたいな顔だった。